キモイ夢を見た

 キモい夢を見た。

 目が覚めたら、好きだった人がそこにいて、何故か分からないけれど同棲している。誰かはわからない。元彼かもしれないし、元カノかもしれない。ただ、懐かしさと好きという感情はしっかりとあって、寝起きの彼/彼女にスリついて、相手の肌の感触と、体温を確かめたりする。その時ぼんやりと、ああ、幸せだなぁ──というありふれた温かみを感じたりなんかしちゃったりして。


 こういう夢の時は決まって、ずっと寝転がっていたくなるような、すだれ越しの陽光が心地よい空間に僕と彼/彼女はいる。そして記憶の残骸から、僕は夢の中で、撫でられた時手のひらと、頬の柔らかさを思い出すのだ。


 けれど、僕は夢の中で、いつもいつも、これは夢だと明晰する。こんなに幸せなのに、夢なのだなとわかって、その瞬間に目が覚める。1人暮らしを初めて2年。薄汚れた天井と、洗濯物にまみれた部屋。シンクは2ヶ月は放置していて、異様な匂いを放っている。


 思えば、大学生になって人に甘えないように、1人で力を持つぞと意気込んでいた自分がいた。それは自分が情けないから、余計な気を使わせてしまった元カノに対するなにか、贖罪的なものなのだったけれど、やっぱり本日は変わらなくて、折れた心をバーチャル世界で誤魔化している。


 キモイ夢を見た日は、一日が重くて仕方がない。どれもこれも、自分がしっかりとしていれば、あったかもしれない幸福だからだ、それと同時に、そういう肉感的な温かさを欲している自分の頭の悪さに、心底辟易するからである。


 故郷から離れて。場所が変わっても僕は変わらない。そういうものだけれど、諦められるというのは、一体いつ頃くるのだろうか。


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陰鬱エッセイ 現無しくり @Sikuri_Ututuna

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