第7話 魔族

彼女に手招きされて入った部屋は、あまり大きくはない。しかし、家庭的な雰囲気を纏っている。

 部屋の中央には机が置いてあり、それに椅子が3人用ある。しかし、今は彼女しかおらず、少々物寂しい感じがする。

 彼女は光の魔石を少しだけ砕き、透明な硝子の入れ物に入れる。すると、魔石が発光し始め、充分な光源となった。



「座ってください。持って来ますので」


「ありがとうございます」



 料理を持って来てくれるようだ。見ず知らずの人に対して優しすぎないかこの人。と思っているうちに、料理が運ばれてきた。



「あまり多くはありませんが、どうぞ」


「いや、充分です。ありがとうございます」



 彼女が謙遜してきたので、それは断っておく。元々食事ができるだけありがたいのだ。

 そして、他人と他人が食事をとり合うという、奇妙な光景が広がることになった。



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 食事が終わり、彼女が片付けを始めたので、手伝うことにした。「いいんですよ?」「ありがとうございます」などと言ってきたが、感謝したいのはこっちのほうだ。そもそもさっき助けてもらったのだから、貸し借りではまだこちらが1回多く助けられている。


 しかし、そんな彼女にもライン本人の正体を明かせないのが辛い。それはそうだ。何せ相手は人間で、こちらは魔族なのだから。

 自身が魔族だと知られたら、きっと彼女は逃げ出すだろう。いや、そもそも「魔族に飯を奢る」という行為を人間側が見逃すだろうか。いや、しないだろう。下手したら彼女も巻き添えで処刑だ。



 ーーー恩人を巻き込みたくない。その気持ちが増幅するにつれて、真実を隠すことへの罪悪感が重くのしかかる。



 片付けが終わり、仮眠をとることを推奨されるも、まだ大丈夫だったので断った。

 そして、彼女と世間話を始める。他愛もない時間だ。

 こんな時間が一生続けばいいのに。そんな叶わない願望を抱きつつ、彼女と会話をしていた。



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「ーーーそういえば、あなたのその腰についている袋、何が入っているんですか?」



 そう言い、彼女はラインの腰についている袋を指差す。魔石が入っている袋だ。



「ああ、これは魔石が入ってる袋です。見ます?」


「はい。見せてください」



 そう言って魔石入りの袋を手渡すと、

ーーーーーーーー急に鼻息が荒くなってきた。それだけじゃない。可愛げのある優しい目をかっ開き、袋内の魔石のうち、ほとんど石が混じっていない輝かしい赤色の魔石を取り出す。そしてそれを幸せそうに眺めた後、こちらに顔を急接近させてきた。



「な、何ですか?」



 いくら種族が違うとは言え、異性に顔を近づけられるのは流石に照れる。彼女は口を開き、大人しい声ーーーーーーーーではなく、興奮した声で尋ねてきた。





「この魔石、何処で手に入れたんですか?!」


「え、いや、家から持ち出してきたんです」




 とだけ答えた。

 一応間違ってはいない。キーラに持たせてもらったことは内緒にして。するとーーーーーー




「この魔石、とんでもなく高純度ですよ!!いわゆる『最高純度』のものです!!いやぁ、私が生きてるまでに拝めると思ってなかったなあ。こんだけ純度高ければ、売っても相当な財源になるだろうなあ。いやほんとにこれだけ高純度な魔石は珍しいですからね?!それこそ人間界でなんて1000年かかって存在が確認されるかどうかのレベルなんですよ?!並大抵の人間には一生お目にかかれない代物ですよ全く!!ってうおぉ!!水の最高純度のものまで!!ってうわあ!!地、風、電、光まで?!……ああヤバいかもです……興奮しすぎて頭痛くなってきました……いやでも解説しないのは流石に神への冒涜では?いや解説します!!何度でも解説してあげます!!聞き逃してもいいですよ?!更に情報をプラスして話すので!!」


「え、えっちょ」





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 この少女は、生粋の素材マニアだった。

また、連射銃話マシンガントーク中の彼女は、頭の2点が感情に合わせて光っている気がした。



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 「………………ってことなんですよ!!凄いですよね!!一国を変えれるんですよ!!分かりました?!」


「あーーーー。はい。スゴイということなら」


 うん。「スゴイ」ということなら分かった。

彼女のマシンガントークからようやく解放されそうだ。最初の方は普通に興味があったので質問などもしていたが、それは悪手だった。

 それにより彼女のマシンガントークが加速し、2時間近く聞かされた。しくじった。その美貌が台無しになるレベルで喋り続けていた。

 でも、彼女の嬉しそうに喋る姿を見て、こちらも何となく心が安らいできていた。



ーーーもし「魔族」であることを言えたなら、この後ろめたさを忘れられるのかも知れないーーーーーーー




「…あ、すみません。喋りすぎました…つい興奮して…」


「いや、いいんですよ。少し長かったけど、色んな知識を知れましたし。」



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 彼女のマシンガントークはかなり応えたが、結構知らない知識も入り、新しい学びにもなった。手に入れた知識はこれらだ。


・武器の階級グレード

 神話級ミティカル…伝説上にしか載っていないレベル。

 伝説級レジェンダリー…勇者などの限られた者しか持てない武具。

 希少級グレート…各国の王などが装備する武具。

 優秀級レア…各国の優秀な騎士などが持てる武具。

 優良級アンコモン…優秀な冒険者が持てる武具。

 一般級コモン…一般的な兵士や冒険者が装備している武具。



 あとはまあ魔石で大体察していたが、属性には火、水、電、地、風、光がある。もう一つ「光に屠られた」属性があるらしいが、今のところは使い方が分からないとのこと。



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「話しすぎたお礼に、良かったら泊まりませんか?」


「えっ」



 有難い申し出だった。しかし、こちらの正体ーーーーーーまだ名前すら言っていないのに、無償でしてもらえることが多すぎる。何ていい人なんだろう。



ーーーーーーーだからこそ、隠し事をしている自分に腹が立つ。もう我慢の限界に達しそうだーーーーーーーー



「遠慮はいりませんよ、私なりの感謝の伝え方ーーー




「あの」



 もう無理だ。罪悪感で潰れそうだ。こんないい人は自分には勿体無い。ラインはそう考えてしまう。



「貴女は、本当に優しいですね」



 彼女は優しい。だから魔族の自分に優しくする必要なんてない。僕は心が狭い。だからこんな嘘を貫き通せないのだろう。




「でも、もうやめといた方がいい。」



 そう言い、フードを外す。髪をどかし、自身の頭を見せる。そこからは短いツノが顔を覗かせていた。





「僕はーーーーーーーーーーーーーーーーーー



















 魔族だからーーーーーー」
















「知ってますよ?」











「え」











「だってーーーーーーーーーーーーーーーーー















私も半分魔族ですからーーーーーーーー」




 そう言い、彼女は少し詠唱する。

すると、彼女の身体が光に包まれ、弾ける。


 そこには、先程の彼女とは、少し違う人物が立っていた。

 人型の身体に顔までは一致しているが、それ以外は違う。


 肌色の肌は緑肌に。黒髪は明るい白髪に。

黒の瞳は紅に。身体は少しだけ筋肉質ながらも華奢な身体に。




「私は『ミクスタ・ラーザ』。子鬼の父と人間の母との間で生まれた、混血の魔族です」



 彼女はそう言い笑う。その顔ーーーその額には子鬼には無いハズのツノが2本生えていた。




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ミクスタ・ラーザ

 主能力…鍛治職人、銃使い

 種族…混血魔族ハーフ(人間×子鬼ゴブリン)




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コの命の生き先は ヌヌヌ木 @nununuki98

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