第2話 警鐘
ーーーーーー四天王のみんなを思い出してしまっていた。昔を懐かしむ。あの時に戻りたいーーーーーー
「だが、あいつもそう遠くにはいけないだろう」
「そういえば、お前アイツの顔を見たのか?」
「彼」はぞっとした。それはそうだ。
ーーーーーー顔を見られていれば、見つかったときの死亡率が跳ね上がる。自分の生存率の話をしているに等しい。見られていたときはもう諦めよう。ラインはそう覚悟をーーーーーー決められなかった。
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こんな状況でも、まだ情けなく足掻いている。自分の情けなさに苛立ちさえも感じる。
「ーーーーーーいや、見てねえ。暗かったしな」
「そうか…俺もだ…仕方ねえ、あっち探すぞ」
「おう」
足音が草叢から離れる。足音が小さくなっていき、やがて雷鳴と雨音に掻き消され聞こえなくなった。
「彼」は安堵した。死亡率が減っただけでなく、死の脅威も去ったのだから。しかし体の震えが止まらない。恐怖の余韻だろうか。「彼」は不思議に思い、体に触れようとーーーーーーーーーした。その時ーーー
「い"っ"?!あ“ぁあっ!!!!」
伸ばそうとした腕に激痛が走る。そして寒さで気が付かなかったが、腕の感覚がほとんどない。寒さだ。
ーーーーーーーーーーーーこのままだと寒さで死ぬ。凍死するだろうーーーーーーーーーーー
「彼」は急いで立ちあがろうとした。しかし次の瞬間には、彼の目の前には闇の如く真っ黒な雲が視界の全てにあった。
ーー倒れたのだ。足は既に感覚は無かった。
「やばいかも」
やばいかも、なんてふざけたこと言いやがった自分を殴りたい。「彼」は倒れたまま雨を凌げる場所を探す。すると運のいいことに小さい洞窟を見つけた。どちらかというと追手から逃げているときに見つけたかった。
文句を言っている場合じゃない。何とかして地面を這うために腕の痛みを堪えて、腕を前に出す。
ーーーー腕がおぞましい紫色になっていた。
「ひ」
声が漏れた。腕が見たことのないドス黒い紫色をしていたからだ。キーラに聞いたことがある。多分凍傷だろう。
だがそれは後だ。凍傷なら後で処置できる。今は洞窟に避難するのが先だ。入らなければ、入らなければ、死ぬ。
「嫌だ、ヤダ、死にたくない」
這え、這え。腕が使い物にならなくとも構わない。
ーーーーーーじゃないと、四天王のみんなに申し訳が立たない。
必死で洞窟まで這い、中に入ろうとし、身を洞窟に入ーーーーーーろうとしたとき、少し段差があった。
「あ、やば」
もう遅い。頭に強い衝撃が来た。視界がチカチカする。彼は転がるように洞窟に入っていった。
痛かった。すごく痛かった。だが、とりあえず洞窟に入ることはできた。雨宿りできそうだ、と安堵した時、鼻先に生暖かい液体が垂れてきた。涙かと思ったが、目元は外の冷気で冷え切っている。何だろうか。
そして、地面に落ちた液体を見て、全てを理解した。
ーーーーーーこれは自分の血で、その血は頭から出て来ているとーーーーーー
「は、はは」
もう笑うしかない。元々死にかけの体に頭からの出血までプラスしてくれるとは。出血大サービスてはまさにこのことだ。実際に頭から出血している点とそれが自身に全て起きていることを除けば面白い。
訳の分からないことを言っている場合じゃない。僕はこのままだと死ぬ。とりあえず暖だ。暖を取らなければーーーー
もう感覚が無くなった腕を必死に動かし、腰の袋から赤色の魔石を取り出す。魔石には、様々な属性があり、赤は火属性だ。他にも、青は「水」、黄は「電」橙は「地」、緑は「風」、そして白は「光」だ。
魔石には、もう一つ使い方がある。それは、砕くとその属性のものが発生することだ。火の魔石を砕けば暖を取れる。しかし高純度だと火力が高すぎるので、今回は低純度のものを使う。
赤の魔石を砕き、地面に落とす。すると、小さな焚き火の如く燃え上がった。暖かい。
だが、もう1つ残っている。凍傷を治すために今すぐお湯を作らなければーーーーーーーー
この知識を教えてくれたキーラに感謝しながら、バッグから鍋を取り出そうとしーーーーー
自身の指の先などが真っ黒になっていた。
ーーーーーー壊死していた。遅かった。
「は、ははは、は」
また乾いた笑いがでてきた。余りにも酷くないか。希望を見せておいて、最後に全て奪うなど。
悪魔の所業だ。自分は魔族だが。
訳の分からないことを思い浮かべた。もう頭もダメになってきたらしい。
ーーーーーーーーーー詰みだーーーーーーーー
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