第9話 言葉を伝えるという事

 皆さんこんばんは、夏目漱一郎です。

今日は【Hit Parade~奇跡のライブステージ~】

https://kakuyomu.jp/works/16817330669181021663

という作品を非公開から公開に移したので、この作品の紹介をさせていただきます。

この作品はカクヨムコン9の長編エンターテインメント部門に応募していた作品です。

 いつもはコメディ作品ばかり書いている夏目漱一郎が、この作品に関してはかなり本気で書かせてもらいました。(他の作品は手を抜いてるのか。笑)しかし、僕自体あまり知名度が無かったのでこの作品もあまり読まれる事がなく、カクヨムコン9では、中間選考を通る事が出来なかったんですが、とは言え自分で言うのも何ですがこの作品は相当満足出来るレベルの作品に仕上がりました。もしも自分が書店でこの小説を途中まで読むような事があったら間違いなくお金を出してでも買って帰ります。その位面白い作品になりました。 とある中堅テレビ局スタッフと伝説のスーパーロックバンドが織り成す絶望からハッピーエンドまでのまるでジェットコースターのような起伏の激しいドラマチックな展開のストーリーです。もし気になるようでしたら皆さんも読んでみてください。


 さて、今日の話題は『言葉を伝えるという事』です。僕達はこうやって小説を書いたり読んだりという事もそうですが普段いろんな人と口頭で言葉を交わしていますよね。 その際、自分の言葉が正確に相手に伝わっているか気になる事はありませんか?例えばそれが何かの契約書の文言だったりしたら、僅かな違いが契約の根幹に関わる事だってあるのです。


 「えええ~~っ!保険が下りないってどういう事だよ!」

『いやあ~残念ですが、お客様の場合鹿という契約内容になっておりますので…』


 電話をしているのは僕の会社の先輩のUさん、そして電話の相手はUさんの親戚が契約した自動車保険会社の担当者です。実は、Uさんの親戚が家の近所の山道を車で走行している時に鹿と衝突し、車が大破してしまったのです。車と鹿が衝突した時って、犬や猫をいてしまった時と違って車はありえない程大きなダメージを負うのです。車によっては本当にクシャクシャになって、全損になる物も少なくありません。

 

 Uさんの親戚の車もそうで、最初は修理して欲しいと依頼されたのですがあまりに損傷が酷かったので、Uさんは親戚に『これを修理するなら、全損にして保険金をもらいそれを元にして新しい車を買った方がいい』と話をしていたのです。ところが、保険会社に電話をしたところ、さっきのようなやり取りになってしまったという訳です。 Uさんの親戚は、一応『車両保険』には入っていたのです。しかし、その車両保険はエコノミー+Aとかいうタイプのもので、掛け金は安いのですがその代わりにという種類の保険だったのです。だから担当者は『鹿が相手だと保険が下りない』と言ったのですが、Uさんにはその意味が今ひとつ正確に伝わってはいなかったようです。

 「なあ夏目、なんで『鹿』だと保険が下りないんだ?」

Uさんの問い掛けに、その頃保険にそれほど詳しくもない僕はなんの根拠もない適当な答えを返したのです。

「きっと鹿とかんじゃないですかね。」

鹿が保護動物だなんて聞いた事もありませんでしたが、Uさんは僕の答えに対して妙に納得したように頷いていたのです。

「そうか…じゃあ、鹿なんだな…」

しかし、ぶつかったのが犬や猫だったら車はあそこまで酷くクシャクシャにはなりません。もしUさんが保険会社の担当者にぶつかったのが鹿以外の動物だと申告するにしても、それなりに大きな体の動物の名前を言わなければなりません。すぐに思いつくのは熊あたりでしょうか?Uさんは、顎に手をあて眉をしかめながらずっと鹿の代わりになる動物を頭の中で探しているようでした。そうして暫く経過したのち、何かを思い付いたように「そうだ!」と短く叫んだのです。そして、嬉しそうな顔で保険会社に電話をかけると、担当者に向かって得意そうに言ったのでした。

「あの、例の事故なんだけどさ、親戚と話したら車にぶつかったの、あれ鹿じゃなかったみたいなんだよね。よく聞いたらぶつかったのは鹿よ!」


いや、それじゃ余計に保険下りないから・・・

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