第6話 虚無僧を新車に乗せた時の話
皆さんこんばんは、夏目漱一郎です。
昨日、一昨日はエッセイの更新をお休みしていました。実は今、チャリパイEpisode1(シリーズ第1作目)の大幅改修をやっているのです。この作品、デビューはカクヨムではなく以前在籍していたサイトで書いたものなのですが、その頃僕は今のように一話一話を連載していくタイプの書き方をしていなかったのです。どちらかというと、もう少しまとめて書いて間隔は空くけれども更新する時は1万~2万文字位を一気に公開する。そんな更新の仕方をしていたのでした。
ですのでチャリパイ第1作に関しては、一話当たりの文字数が1万~2万文字もあり、さすがにこれは読みにくいなぁ~なんて思っていたのですよ。でも、(でも、これ直すのってちょっと面倒じゃね?)という気持ちもあって暫く放置していたのです。しかし、こうも思ったのです。もし一話を読み終わるのに予想以上に時間がかかってしまった場合、作品のストーリーの面白さとは別に読者から(一話読むのにこんなに時間がかかるのだから、これそんなに面白くないんじゃね?)という印象を受けてしまう恐れがあるかもしれない…と思ったのです。実際に一話は読まれているのに二話からは読まれていない。という事はよくあります。
一話が読者が期待する程面白くなかったというのなら仕方がないと思うのですが、一話が長いせいで続きを読んでもらえないとしたら勿体無さすぎる。という事で、今懸命に改修を進めています。今回、ストーリーには手を加えてありませんが一話ずつを細かく分割しましたのでずいぶんと読みやすくなっています。もうすぐ完成しますので、まだチャリパイ読んだ事が無いという方はこの機会に是非読んでみてください。
僕がまだ二十代の頃です。当時僕はニッサンのS13という割と人気のあったスポーツタイプの車を新車で買ったのです。まだ二十代ですから、一括なんかで買える訳はなく当時最長の五年ローンで買いました。二十代の僕にしては一世一代の買い物でしたが、僕にとってはそれほどまでにしても欲しい憧れの車だったのです。当時、S13は黒やガンメタリックが人気の色だったのですが、僕はスーパーレッドのS13を買ったのです。
真っ赤な色のS13というのはその頃まだ誰も乗っている人がいなくて僕が住んでいる界隈ではとても良く目立ちました。車の車格はだいぶ違いますが、僕はまるでフェラーリでも運転しているように自慢げに上機嫌でその真っ赤なS13の新車を乗り回していたのです。もちろんその車で通勤もしていたのですが、ある朝、僕が自慢の
S13で会社へと向かっている途中、信号待ちをしている僕の前に、ある【ヒッチハイカー】が現れたのです。これがきれいな女性だったりしたら、まさにこの車にピッタリの展開になると思うのですが残念ながらそうではありませんでした。買ったばかりの僕の真っ赤な新車のS13の助手席に最初に座る事になったのは、素性の良く分からない旅の虚無僧だったのです。
【
勿論乗せたくはなかったですよ。でも、信号待ちで止まっている僕の車の助手席のドアを開けて半ば強引に乗り込んできた顔の見えない相手に『勝手に乗ってんじゃね~よっ!降りやがれこの野郎っ!』とか言えない訳ですよ。歓迎なんてとても出来ませんでしたが僕も自動車関係の仕事をしているので、乗せてくださいという人を無下に断る訳にはいきません。ただその虚無僧、助手席に座って開口一番、なんて言ったかわかりますか?
「あぁ、狭いなこの車は・・・」
そりゃあ狭いですよ。アンタみたいなのを乗せるようには出来ていないものでね!そんなに広い車が良かったらトラックでもヒッチハイクすれば良かったのに。
しかし僕は通勤の途中なんです。もうすぐ会社に着くのをこの人分かっているんだろうか?僕はさり気なく訊いてみました。
「ところで、どこまで行くんですか?」
「熱海まで行ってもらえたら助かるんですが…」
いや、熱海なんて絶対無理だから!会社この近くだし。
「熱海まではちょっと無理ですねぇ、僕の会社この近くなんですよ」
「え~っ、そうなんですか?困ったなぁ…一度降りると次、なかなか乗せて貰えないんだよなぁ…」
でしょうねそのナリじゃぁ。
「良かったら、近くの駅まで送りましょうか?電車でいったらどうです?」
「いや、それじゃあ修行にならないから」
散々ヒッチハイクしておいて今更修行とか言ってんじゃね~よっ!
そんな訳で、僕は会社の前で虚無僧の人を降ろしたのです。
「すいませんね、近くまでしか乗せてあげられなくて」
「いやとても助かりました、ありがとうございました。あなたに御利益がありますように」
そんな事を言ってその虚無僧は、僕の目の前で拳を見せ念を注入するような仕草をして見せたのです。
その祈祷に意味があったのかどうかは知りませんが…
その年、僕のS13は二回程事故に遭いました。
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