第4話新人のアキヤマ君②

 こんばんは、夏目漱一郎です。この『エッセイみたいなものを始めました』ですが、応援の♡を頂けた数を読者数とすると第一話が19、第二話が10…そして前回の第三話が3・・・・・・着実に衰退の一途を辿っています。最初は「あっ、なかなか良いんじゃないのこれ?」なんて喜んでいたんですが、世の中そんなに甘くはないですね。…まあ、このエッセイに関してはPVとか全然拘ってはいないので好きな事だけを書いて読みたい方だけに読んでいただければ良いかな…なんて思います。


 それでもその原因を探るべく他の作家様のエッセイなんかと読み比べてみると(結構気にしてるんじゃね~か)他の作家様は、もっと行間も空いていて文字数も少なく読みやすい印象がありました。それに比べて僕の文章は説明文が多くて、ちょっと読みづらいですね。 これは取り扱っているエッセイの内容にもよると思うんです。前回のように内容が自動車整備の内容だったりすると、このエピソードのオチはこうだからその為には読者の予備知識はこのくらい欲しくて…なんて色々考えてしまうとどうしても説明文が長くなってしまうのですよ。


 そんなの話題にしなければい~じゃね~かっ!って話ですが、それこそが夏目漱一郎の個性とも言えるのでそこはちょっと拘りたいのです。それでもなるべく読みやすく解りやすい文章が書ける様に努力しますので、皆さんどうかもう少し長い目でお付き合い願いたいと思います。


 ところで皆さん、最近マニュアルミッションの車を運転した事はありますか?今は『オートマ限定免許』なんてのもありますから、そもそも生まれてから一度もマニュアルミッションの車は運転した事が無いという方もいるかもしれませんね。


 現在日本の道路を走っている自動車の8~9割はオートマなので、一般の人ならば『オートマ限定』免許で全然構わないんですが、これが整備士となるとオートマ限定なんてありえないのです。もし、お客様車が故障してそれを引き取りに行った時にその車がマニュアル車だった時、『いやあ~僕、オートマ限定免許なもんで(笑)』なんて言える筈がありません。お客様の車がマニュアルだろうがトラックだろうが運転できなければならないのです。


 もっとも僕が免許を取った時も、アキヤマ君が免許を取った時も『オートマ限定免許』の設定はまだ無かったと思います。だから『免許を持っていれば普通にはず』というのが世間の常識だったのです。


 ここでマニュアルミッションの車を運転した事が無いという人のために、ちょっと説明しておきたい事があります。それはシフトギヤの位置です。ここでは一般的な

5速マニュアルの例で説明させてもらいます。

1  3   5

|― |― | |

2   4   R

 ちょっと解りにくいかもですが、これが一般的なシフトギヤの位置です。運転席が右だとすると一番左の前が一速、その後ろが二速、真ん中の前が三速、その後ろが四速、右前が五速、そこからちょっと戻してからの一番右の後ろがリバース(バック)です。

 こういうものはもう体が覚えているので、いちいち見なくても操作出来るのが普通ですが自動車の検査基準では、マニュアルミッションの車はこの表をシフトレバーの付近に明示する事が法律で義務付けられているので大概シフトノブの見やすい所に、この表が描いてあります。


 お客様から預かってきた車の整備が大方終わると、納車の時間になります。まだ自動車の整備が出来ない新人が五人もいるウチの店舗では、納車の時ほどこの新人達を有効に使いたいという目論見はあったのですが運転がまだ慣れていない新人にお客様の車を運転させる事に関しては、まだ抵抗があったのです。なので納車の時は新人には会社の車を運転させ、新人と先輩の二人一組のバディを組むという枠組みが作られました。


 「どうしてなんですか」

「だって、夏目が一番だろ」

別に懐かれているとは思いませんが、僕はあまり怒ったりしないので『やらかしてしまう』事の多いアキヤマ君はどうしても僕の所に来るようになるのです。そんな訳で僕とアキヤマ君は二人でお客様の車を納車する事になったのです。


 二人でお客様の車を納車する時、一人がお客様の車を運転してもう一人が会社の車で追走しお客様に車を渡してから二人で会社の車に乗って帰る。これが納車の大体の流れですが、一つ問題がありました。会社の車はマニュアルミッションなのです。


 「アキヤマ、お前よな?」

「た、多分出来ると思います」

その返事にちょっと違和感は感じたんですが、その頃は『免許を持っていればマニュアルは普通に運転できる』というのが世間の常識でしたからアキヤマ君だって普通にマニュアル運転出来ると思っていました。


 僕はお客様の車に乗って、店舗の敷地から先に広い沿線道路へと出ました。後ろも気にしながら、でも直線道路だからはぐれる事もないだろうと走っていました。念の為、少し走ってから車を左に寄せハザードランプを点けてルームミラーを見ながらアキヤマ君が来るのを待っていたのです。そして、アキヤマ君が乗った会社の車が数十メートル後ろの赤信号で止まるのを見つけたのです。


 (よしよし、ちゃんと着いてきてるな…)と安心したのもつかの間、会社の車に乗ったアキヤマ君はそれから全く動かなくなってしまったのです。信号はとっくに青に変わり後ろの車からは盛大にクラクションが鳴らされています。


 (アイツ何やってんだ!後ろ大渋滞じゃね~かっ!)

お客様の車をこの場所に置いておくのはいささか不本意でしたが、緊急事態です。僕はお客様の車を飛び出してアキヤマ君のもとへと走り、アキヤマ君に運転席のガラスを開けさせました。

「アキヤマ、何やってんだ!早く車を動かせ!」

「ハ、ハイ!」

アキヤマ君はすぐさまクラッチを踏んで左手でシフトレバーを動かしました。

後ろの車のクラクションがさらに大きくなって鳴り響きます。

「馬鹿っ!なんでんだよっ!追突するだろ!」

僕は慌ててシフトレバーをニュートラルに戻しました。

「こっちはバックだろ。判る?」

「・・・・・・・・・・・・」

どうやらよく判っていないみたいです。よくここまで無事にたどり着けたな。しかし安心して下さい。こんな時の為にシフトギヤの表があるのです。覚えていますか?僕が最初に説明した、法律で明示が義務付けられているあの表ですよ。この会社の車の場合、シフトノブに直接描いてある筈です。











いました。アキヤマ君これを見ていたんですね。


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