第2話新しい会社の施策とアキヤマ君

 皆さんこんにちは、夏目漱一郎です。

この『夏目漱一郎』というペンネーム、これを読んでいる皆さんも大方予想がついている通りあの明治の文豪『夏目漱石』のお名前を基に考えたペンネームです。だからといって僕は夏目漱石の子孫でも何でもありませんし、夏目漱石の熱狂的なマニアという訳でもありません。僕の本名には夏目の”な”の字も出て来ないのです。しかし、夏目漱石という人は、千円札になった事もあるし教科書にも載っている。小説を書いた事が無い人でも日本人で夏目漱石を知らない人はいないのではないか?という位のネームバリューです。これを使わない手はない!と考えた僕は、自分のペンネームを『夏目漱一郎』とした訳なんですが、この『漱』という文字がキーボードの変換でなかなか出て来ないのですよ。考えてみたらこの文字、夏目漱石以外で見た事がありません。皆さんはどうですか?これって訓読みとかあるんですかね?もし知っている方がいたら、コメントなどで教えていただけたら有難いです。


 一般的に『そういちろう』を漢字変換すると『宗一郎』『総一郎』『聡一郎』『壮一郎』『奏一郎』・・・いくらでも出てきます。それに『郎』を『朗』にしたパターンがあるので、ざっくり20通り以上は出て来ますがその中に『漱一郎』は出て来ないのです。パソコンの文字変換のシステムをIMEといって、こういう特殊なパターンは登録が出来るらしいのですが最近のPCはAIなんかが入っているので僕がこのペンネームをずっと使っていれば、そのうち学習してくれるんじゃないかな…なんて期待しています。ただ、僕が使っているIMEは何故か時々へそを曲げる事があるんです。機械に意思があるなんて、あまりに荒唐無稽だと思うんですが…『夏目僧衣遅漏』とか…こういうのって、悪意があるとしか思えないのですよ。


 さて、昨日の続きを書きましょう。僕が在籍していた会社では、新入社員は四月のうちに本社で研修をして五月のゴールデンウィーク明けから店舗に配属されるという流れで新入社員の教育をおこなっていたのです。ですから店舗の方では実際に新人が入ってくるまで、どんな新人が何人入ってくるのか判らないのです。そして、メーカーから来た新しい常務の発案で会社では四月から今までとちょっと違った新しい施策が始まっていました。その概要を簡単に説明するとこうです。

その1・目標の売上金額は店舗の従業員数に比例(つまり人数の多い店舗はノルマが高く逆に人数の少ない店舗はノルマが低い)

その2・一週間ごとにノルマを達成した店舗には褒賞金を支給。

その3・ノルマ達成を連続するたびにボーナスポイントを加算。

 この条件は、もはや僕達が所属していた店舗の為に作られた施策ではないか?と思いたくなる位、僕達の店舗にとって有利な施策でした。前年度、人事異動により人が減って『少数精鋭』で仕事をしていた僕達店舗のノルマは低く、達成するのは余裕だったのです。しかも、毎週毎週連続で達成するのでボーナスポイントがどんどん加算され、僕達が給料の他に貰える褒賞金は今までに無い位にそれこそ夢のように膨らんでいったのです。

「今度の常務って、なかなかヤバくね?」

「あんなに気前のいい常務って初めてだよな」

褒賞金で僕達の懐も潤い、僕達は最高の四月を終えてゴールデンウィークを迎えたのです。


 ゴールデンウィークが明け、研修を終えた新入社員がそれぞれの店舗に配属されてきました。


「なんでウチの店舗だけんだよっ!」

今迄ウチの会社では、高校卒の採用はしていませんでした。営業は大学卒、整備士は専門学校か短大卒、事務員で商業高校卒の簿記資格をもっていたら採用していたかもしれません。その中でもとりわけサービス部門(僕達の事です)は、二年とか三年は実務経験がないと安心して仕事を任せる事が出来ないのです。何しろお客様の命を預かる車の整備です。もし何か事故でもあったら、その責任はとても入ったばかりの新入社員に取れるようなものではないのです。

「とりあえず今日はそこで俺達の仕事を見てろ」

「は~い」

四月に比べて人数は1.5倍。しかし効率は変わらず。むしろ悪い。ノルマばかりが1.5倍に膨れ上がり、夢のようだった四月の施策は五月になって僕達に大きな負担となってのしかかってきたのです。そのせいで、施策のノルマは全く達成出来なくなり、先輩達は機嫌が悪くなって新人の五人は怖がって先輩のところに就きません。


「アキヤマ、どうして俺の所ばかり就いてくるんだよ?」

「いや、夏目さんはあんまり怒らないから…」

アキヤマ君は何か勘違いをしています。僕は怒らないのではなくてのでした。それでは次回、そのアキヤマ君の呆れてしまう程の失敗談について書いていきましょう。

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