10話 その頃他の家族は


「カン兄は勘違いしているんだわ!」

 カナは小声でそう叫んだ。

 今、ダンとリサ以外のカンの家族は、ダンの書斎の前でダンとリサの会話を盗み聞きしていた。

「そうじゃ。ワシ等は間違ったことはしていない!カンがあの子供を庇った意味がわからん!なぜあ奴はあんなにあの子供に肩入れする?虐待と言っておったがたかが二か月放置していただけじゃろう?食事も与えていたし何も問題なかろう!そうだろう?」

『そうだ、そうだ!』

 カン以外の意見は皆同じららしい。

「あの子がカン兄に付け込んだのよ!カン兄は優しいから騙されたんだわ!助けてあげないと!」

「そうじゃな。カナの言う通りじゃ。ワシ等があの子供からカンを救ってやらねばな!」

 皆が頷いて決意を固めた。

 ここにはカンを理解する人がいないのだ。皆自分たちの都合がいいように解釈し、カナタを悪者として扱うのが当然で、すべてカナタが悪いことになってしまっていた。

「お父様の言っていた通り、カン兄もすぐに戻ってくるわ」

カン兄なら、絶対に戻ってくる。そう信じて疑わなかった。


しかし、その考えはすぐに間違っていたと思い知らされるもであった。

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狼少年 夜月月華 @yeyueyuehua

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