8話 頼み事

俺、カンは今、知り合いの警察官ゴウに連絡をしていた。

『それで、どうしたんだカン。お前がこんな真昼間から電話してくるなんて』

 ゴウは驚いたようにそう言った。

「久しぶりだな、ゴウ。ちょっと相談があってな。実は実家に帰ってるときに虐待されてる子供を保護したんだ。それについてお前に話しておきたくてな」

『ちょっと待て!なんでお前の実家で虐待されてる子供を保護することになるんだ?それはなんだ?お前の実家の周りでか?それともお前の実家の家族か誰かがやってたってことか?』

 ゴウは混乱したようにそう言ってきた。そりゃ混乱するわな。俺でも混乱する自信がある。

「おーちょっと待て順を追って説明するから。まずは俺が実家に帰った時のことから話すか…」

 俺は実家に帰って俺の弟妹達の母親であるリサが帰ってきていたこと、クリスマスの二日後に妹が屋根裏部屋に食事を運んでいるのを発見し、中に入って確認したところ、まだ五歳にもいっていないであろう子供を見つけ、保護したこと。そして、その子供は屋根裏部屋には二か月ほど閉じ込められていたことや、実は弟妹の母親のリサがほかの男と作った子供であるということなど、あったことをなるべく話した。ここでゴウに話していないことはその子供…カナタが犬?狼?の姿をしていて翌朝には人間の子供の姿だったことくらいだろうか?まあ、ここは話しても信じてもらえないことなので話していない。それに、カナタは秘密にしていいるだろうからだ。いわれても何言ってんだこいつと言われるに違いない。なのであえて話さなかった。

 そんなことを思いながら説明を終えると、ゴウは唸りながらこう言った。

『う~む…これはお前に頼まれていた調査を一気に片付ける良いきっかけになるかもしれんな…。よしっわかった。この件は俺がしっかり調べてみよう。もしかしたらお前の家族には何かしらの罰があるかもしれんが…』

「ああ、それはいい。俺はあんな奴が今まで野放しになっているほうが心配だったからな。罰があったって当然だな。きっちりしっかりやってくれ!」

 俺が清々しいように言うとゴウは笑っていた。

『お前、よっぽどあの家族が嫌いなんだな。まぁ、知ってはいるがな。わかった、任せとけ!じゃぁ、その子供には被害が及ばないようにお前の家で保護しといてくれ。警察が保護したほうがいいんだろうが何分お前の父親は結構な会社のお偉いさんだからな…。それに多分その子供は人間不信直前だ。何ならお前の祖父母に保護をお願いしたほうがいいような気がするな』

「ああ、そうだな祖父母に頼ったほうがいいか…。じゃあ、あいつが起きたら説明してそっちに移るわ。あ、そうだ、調査は一日くらい待ってくれ。あいつをしっかり安全なところに避難させたいからな」

『おう!任せとけ!きっちりしっかり調査するからな!じゃあな!』

 そう言ってゴウとの電話を切った。

 電話をしている間におかゆは炊き上がっていた。

「さて、カナタが起きてるか見てみるか…」

 そう呟いて寝室に向かった。


 カナタは起きていてお腹を空かせていた。可愛い腹の虫を鳴らしていたので抱き上げて食卓へ連れて行った。

 用意しておいたおかゆをよそって出してやるとゆっくり食べ始めた。もっとがっつくと思ったがそんなことはなかった。まあ、がっつきすぎて体調が悪くなるよりはいいな。だが、美味しくなくてゆっくりということもあり得る。心配になって見ていると、食べ終わって「とっても美味しかった」と言ってもらえて安心した。それに「ごちそうさまでした」といって笑顔になっているのに癒された。

 なんだあの笑顔!可愛すぎるだろ!天使か?

 そう思っているとカナタが船をこぎ始めた。頑張って寝ないようにしているので「寝ていいぞ」と声をかけて抱き上げる。するとすぐに腕の中から寝息が聞こえてくる。

 あぁ…可愛いな……。あ、起きたら風呂に入れないとな。あとは服か…。今は替えがないから来ている服を洗濯するか…。結構汚れてるけど…まぁ何回か洗えば落ちるだろう。今度色々買ってやろう。髪も切らないとぼさぼさだな…。やることは沢山ありそうだ。そうだ、爪とかは寝ている間に切ってやろう。

 そう思いながら寝室んに行って寝かせようとしたがカナタが服をつかんでいて離れなかった。仕方ないので、自分も同じベットに寝っ転がる。一緒に寝てしまおう。いつ起きるかわからないが起きたら起こしてくれるだろう。

 ……その間にこの寝顔を堪能しようかね…。

 おやすみカナタ。よい夢を…

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