7話 ぬくもり
目が覚めると知らない天井が真っ先に目に入った。僕がいつも見ていたシミがあってお化けみたいな顔のある天井ではなくきれいでシミがない天井だ。
……ここどこだ?何でここにいるんだっけ?
僕が不安になっていると、目の前にある扉が開いてカンが入ってきた。
「お!目が覚めたか!よかったよかった!よく眠れたか?」
カンは嬉しそうに優しくそう言ってくる。
「うん。ぐっすりだったよ。ここはどこ?」
僕は素直に聞いてみることにした。
「ああ、そうか。途中から寝かけてたもんな。不安になるわな。悪かったな。いきなり連れてきて。ここは俺の家だ。あ、カナタが居たところじゃないぞ!俺が住んでいるアパートだ」
僕の顔が不安げになっているのに気づいて言葉を選びながら話してくれるカンはとっても優しいと思う。
「僕はどれくらい寝てたの?」
結構寝てたんじゃないだろうか?と思い聞いてみた。
「ああ、一時間半くらいかな?結構短かったな。まだ眠いか?」
「大丈夫、結構寝たよ」
僕は安心させるようにそう言った。
「そうか?まぁ、また寝ればいいしいいか」
きゅるるぅぅーくるるるる~
カンはびっくりしたような顔をしてこう言った
「すごい腹の虫だな」
僕は恥ずかしくなって布団をかぶって頭を隠した。
「ははは、お腹すいてるって言ってたもんな。じゃあご飯にするか!」
カンはそう言うと僕がかぶっていた布団を引っぺがして僕を優しく抱きかかえ扉を出て食卓?らしき所に連れて行った。そして椅子にクッションを敷いてくれてそこに座らせてくれた。
「ちょっと待ってろな」
そう言うとキッチンらしきところに入って行って何かが入った器を持ってきた。
「ちょっと熱いかもしれないから気をつけて食べろよ」
そう言って僕の前に器を置いてスプーンの持たせてくれる。器の中身はおかゆだった。僕は「いただきます」と言いゆっくり食べ始めた。勢いよく食べると胃がびっくりして戻してしまうことはお父さんに聞いたことがあるからゆっくりと食べるように気を付けた。
結構な時間をかけて食べ終える。その間カンはずっと不安そうに見守っていた。どうしたんだろう?
「…美味かったか?」
ああ、美味しかったかどうかが気になったのね。僕は正直に
「とっても美味しかったよ!ごちそうさまでした!」
といった。
カンは安心したような顔をして頭を撫でてくれた。
…気持ちいい。やっぱりカンは優しいね。
僕はさっき寝たはずなのにまた眠くなってしまい眠気と格闘しなければ!と思っていると、カンが
「寝ていいぞ。お前に必要なのは栄養と睡眠だ。しっかり食べてしっかり寝ろ」
と言い僕を抱きかかえて歩くとベットに寝かしてくれた…と思う。もう眠気に勝てなくて意識があったか怪しいくらいだったからわからないが、たぶんベットだと思う。僕はこんなに安心できることはここの所ずっとなかったからすぐに眠りに落ちた。
安心して眠れっるのがこんなに幸せだなんてことを僕は今まで忘れてしまっていたようだ。起きたら全部夢だったら、僕はお父さんがなくなった時と同じくらい落胆するだろう。
夢じゃありませんように……
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