5話 出会い

そして夜。

 俺は夕方に目が覚めて、高くて美味い菓子を買いに行き、帰ってきて、今、地獄のような食事を終え風呂に入って来て部屋に戻って居る。

 なぜ地獄かと言うと、父は、あの女の自慢をし、あの女はあの女で俺に媚びへつらって来て、弟妹達は食事のマナーが汚いなどで散々だった。あいつら食べている途中口の中に物が入っているのにしゃべってくるのだ。もう嫌だ。この家の教育はどうなってんだ…。いや、あの女の性格からして教育とか無理だな…と思いなおすことにした。

これが後十四日も続くのか…。もう会社に帰りたい…。ははは、普通なら休暇をもらって喜ぶところだが、俺は忙しくてこの家ことを忘れていることが一番いいと、そう思うのだった。


◇ ◇ ◇


 それから二日は騒がしい日々だった。もううんざりするくらい。

 いや、だって、部屋に居れば弟妹達が突撃してきて、リビングに居ればあの女がやってきて俺の腕にしなだれかかってくる。父はそんな女を甘やかしている。

 父は結構いいところの社長をしているのでそれなりに金を持っている。だが、あの女はその金を湯水のように使う。だが、金はまだある。おかしいとは思うが他の会社の一般社員の俺が首を突っ込んでいい話ではない。なんか黒い噂はあるんだが尻尾が掴めないのだ。

 

まぁ、それは結構長い付き合いの警察官が調べてくれているので大丈夫だとは思うが……。何とも言えんな……。


◇ ◇ ◇


実家に帰ってきて三日目の夜。今日は満月だ。

 俺は便所に起きて部屋に帰ろうとしていた。だがそこで、カナが上の階へ上がっていくのが見えた。

 ……こんな時間に何してんだ?しかもあっちはカナの部屋の方向とは違っていたはず…。?何か持っているのか…?

 俺は気になってカナの後を付けた。

 そしてカナは屋根裏部屋の前まで来た。そこで横を向いたカナが持っていたのは……食事だった。カナは食事を床に置いて鍵を開けようとする。

 俺は嫌な予感がしたので、すぐにカナの近くに駆け寄り問い詰める。

「おい‼なんでこんなところに食事を運んでんだよ⁉ここに誰かいるのか⁉」

 俺は叫んだ。するとカナは慌てて、

「い、いないわよ!カン兄この中に入らないで‼」

 と言った。俺は何かあると思いもっと強く言った。

「いや、何か居るね‼なんで鍵がかかってんだよ⁉おい!カナ‼ここを開けろ!今すぐだ‼」

「いやよ!そんなことしたら出てきちゃうかもしれないでしょう⁉」

 カナは慌てているのか何かあると言っているようなことを言っている。

「出てきちゃうって…。やっぱり何か居るんだな ⁈早く開けろ!今すぐだ‼」

 俺はカナの胸ぐらを掴みそう言った。

「わ、わかったから胸ぐら摑まないで!あ、開ければいいんでしょ⁈勝手にすれば⁉」

 そう言って鍵を開けたカナは走り去って行った。

 俺は鍵が開いて扉が開いたので中に入り大きな声でこう言った。

「おい‼誰かいるのか⁉」

 中は真っ暗で本当に何か居るのだろうかと不安に思っていると、

「ヴゥーヴゥー」

何か生き物の鳴き声がした。

「お?犬か?そこの丸まっている毛布の中か?お~い、犬、大丈夫だぞ~。俺は怖いことはしないぞ~。だから出て来~い」

 俺は犬?を安心させるように声をかける。

「ヴゥーヴゥー」

 だが、犬?は唸るのをやめない。

「大丈夫だぞ~。ほら、出ておいで~」

 俺は声をかけて近づく。するとより一層唸り声が強くなる。が俺はそれにかまわず近づく。らちが明かないと思ったんので毛布を引っぺがしてみる。

「お!やっぱり犬…か?うん?服を着た犬?これ狼じゃないのか?ちっこいけど」

 そう思い近づくと、

「来るな!あっちへ行け‼」

 と、どこからか声が聞こえた。

「お?今、誰がしゃべった…?この犬?か?おい、お前がしゃべったのか?」

「ちがう」

 否定の声が聞こえてきた。

「お‼やっぱりお前…か⁇え⁉犬ってしゃべるっけ?まぁ、いいや。お前一人なのか?お父さんとお母さんはどうした?」

「……」

 俺がそう聞くと犬?狼?が黙ってしまった。

 俺は犬?もう面倒だから犬でいいな、に近づいて近くに腰を下ろした。

「お前がしゃべるまでここに居るから安心しろ。な?」

俺が安心させるようになるべく優しく言うと犬はその大きな青い瞳から大きな真珠のような涙が零れ落ちた。

「おい、なんで泣いてるんだ⁈どっか痛いのか?」

 俺は本気で心配になりそう聞くと犬は人間のように自分の前足を目元に持っていき自分が泣いていることを確認していた。犬はそれをきっかけに静かに泣きつかれるまで涙を流していた。

 俺はそんな犬の背中を撫でる事しかできなかった。


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