3話 久しぶりの人の優しさ

 下が騒がしい。クリスマスイブだからと皆騒いでいるのだろう。僕のところには誰も来ないだろ。というか、今までご飯は運んで来てもらっているけど、忘れられていないのは奇跡ではないだろうか?そんなことを思ってしまうのは僕に考えることがないからかもしれない。

 まぁ、満月まであと三日。それまでは気が抜けないな……。

 それにしても……寒いな…。もう十二月だもんね。これから僕はどうなるのだろうか…?それを考えてもしょうがないか…。

 サンタさん、僕のプレゼントはここから出してください。お願いします。


◇ ◇ ◇


 次の日。

 サンタさんは僕のところには来なかった。まぁしょうがないね。サンタさんもこんなところに僕が居るだなんて思わないもんね。しょうがない、しょうがない。

 ………でも、悲しいな…寂しいな……。


◇ ◇ ◇


クリスマスから二日後の十二月の満月の夜。

この日はいつもと違った。

いつものように毛布に包まっていたらご飯が運ばれてくる。そう思っていたのに…。

「おい‼なんでこんなところに食事を運んでんだよ⁉ここに誰かいるのか⁉」

「い、いないわよ!カン兄この中に入らないで‼」

「いや、何か居るね‼なんで鍵がかかってんだよ⁉おい!カナ‼ここを開けろ!今すぐだ‼」

「いやよ!そんなことしたら出てきちゃうかもしれないでしょう⁉」

「出てきちゃうって…。やっぱり何か居るんだな ⁈早く開けろ!今すぐだ‼」

「わ、わかったから胸ぐら摑まないで!あ、開ければいいんでしょ⁈勝手にすれば⁉」

 と言う声が声が聞こえてきたと思えば、

「おい‼誰かいるのか⁉」

 扉の鍵が開いて誰かが入ってきた。

 いやだ!来ないで‼僕の姿を見ないで‼

「ヴゥーヴゥー」

 僕は思わず唸ってしまった。

 どうしよう!バレる‼

「お?犬か?そこの丸まっている毛布の中か?お~い、犬、大丈夫だぞ~。俺は怖いことはしないぞ~。だから出て来~い」

 僕の近くに近づいてずっと声をかけ続けている。

「ヴゥーヴゥー」

 だが、僕は唸るのを止めることができない。でも、犬だと思ってくれているならそれでいい。早く出て行ってくれ‼

「大丈夫だぞ~。ほら、出ておいで~」

 いやだ!出たくない!こっちへ来るな‼

 その時、一気にあたりが明るくなった。それと同時に周りが寒くなった。一瞬のことだったのでわからなかったが、毛布を引っぺがされたらしい。

 どうしよう⁉バレる‼

「お!やっぱり犬…か?うん?服を着た犬?これ狼じゃないのか?ちっこいけど」

 来るな!来るな!くるな‼

「来るな!あっちへ行け‼」

 僕は思わず叫んでしまった。この姿を父以外に見られ何を言われるかわからなかった僕は限界を迎えていたのだろう。それかパニックになっていたか。だが、僕は叫んでしまった。しかも、父以外の知らない人の前で。

「お?今、誰がしゃべった…?この犬?か?おい、お前がしゃべったのか?」

「ちがう」

 僕はまだパニックになっているらしい。普通にしゃべってしまっている。

「お‼やっぱりお前…か⁇え⁉犬ってしゃべるっけ?まぁ、いいや。お前一人なのか?お父さんとお母さんはどうした?」

「……」

 僕が何も言わないでいると、その男は、何も言わず僕の近くに腰を下ろした。

 どうしたのだろうか?

「お前がしゃべるまでここに居るから安心しろ。な?」

 何を言っているのだろうか?この人間は。僕がそんなことでしゃべるわけ…

「おい、なんで泣いてるんだ⁈どっか痛いのか?」

 え?なに?僕が泣いてる?そんなわけ…

 そう思い、自分の目元に手というか前足を持っていく。そして僕は気づいた。泣いている…。何故?と思っても涙を止めることができない。

 そうか、僕は嬉しくて安心したんだ…。人の優しさに触れるのが久しぶり過ぎて…。


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