第6話 修羅道

 そんなそれぞれの感懐性があったりするのだが、ここで、

「この村からの脱出方法」

 について、真田が考えているのがあるのだが、

 まず、

「村を出る時は、皆一斉に」

 というわけではなく、一人一人、しかも、出ていく場所を別にしてということを考えている。

 村の出口と、自分たちの数が一致している。それが大きな理由だった。

 最初は、

「修羅道」

 ここを通るのは、沖田を考えている。

 勧善懲悪というのが一番の理由だが、そもそも修羅道というのは、

「戦などが横行しているところ」

 という意味があるそうだ。

 さらに、修羅道では、彼がもっている、

「勧善懲悪の気持ち」

 というような力のある気持ちがなければ、持たないとも言われている。

 といっても、それを言っているのは、

「六道というものの中にあるそれぞれの道」

 であり、他には、

「畜生道」

「餓鬼道」

 というものがあるらしい。

 今回集められたメンバーを、真田がどのように集めたのかは分からないが、よく考えれば、

「どの道には、誰を配置する」

 という形の考え方が、存在しているようだ。

 それを、まず、

「沖田」

 で考えようというのだ。

 一種の試験的なもので、これが成功するかどうか?

 というよりも、想像通りかどうかということで、今後の行動が大いに左右されるということになるのだった。

 この村の四方に、峠があり、そこが、それぞれ、

「六道の道」

 のように言われているということは、皆分かっていることであろう。

 そして、一番重要な出入り口である、

「神仏櫓の道」

 というところは、最初こそ、

「入口専用」

 のように言われていたが、ここからであれば、出ていくことも可能だというのだ。

 それ以外の三方向に限っていえば、

「出ることはできるが、入ることはできない」

 ということであり、

「まるで、マンションのオートロックのようではないか?」

 というところであろう。

 だから、入ろうと思えば、

「神仏櫓」

 と呼ばれる、正門のようなところまでこないと入れないのだ。

 戦国時代に村を守るための方法として考えられたものだが、もう一つとしては、入り口を一つにすることで、攻められないようにするというのが、大きな問題だったのだ。

「そんなもの、攻撃さえすれば簡単ではないか?」

 と言われるが、何かで攻撃すると、見えない壁でもあるのか、まるでブーメランのように、

「また自分のところに戻ってくるというのが、この街における、大きな問題だったのだというのだった」

 まずは、問題となる、

「修羅道」

 であるが、何の変哲のない峠の道であった。

 ただ、このあたりは、たまに、まだ舗装もされていないところがあり、砂利道のようなところもあった。

「なぜ、舗装されていないのか?」

 というと不思議であったが、一説には、

「時代劇のシーンなどで、ここが使われることが多いから」

 という話があった。

 時代劇というと、実際に難しいことは分からないが、舗装していない道の途中に、お地蔵さんがあり、その上に標識があり、そこに、

「修羅道」

 という言葉が書かれていた。

 そして、その横に少し不気味な絵が描かれていたが、どこまでそのおどろおどろしさが見えているのか、人によって見え方が違うことで、感じ方も違うものだという風に感じるのだった。

「修羅道」

 というのを通り越すと、その向こうに、大きな道路が見えていて、それがどうやら、遠くの道に行っているのだということを感じるのだった。

 遠くの道が大きくて、遠くに見える。よく見ると、途中から、空気の色が変わっているような感じがして。それは、

「途中に結界があり、その結界を越えていく様子というものが感じられるかのような気がした」

 のだった。

 その色が、イメージとして紫色に見えたのだった。

「パープルといえばいいのか、バイオレットと言えばいいのか、自分でもよく分からない感じであった」

 それを見ていると、

「向こうの世界が、夜の世界だ」

 ということを感じると、今度は、こちら側が、夕方のように感じるのだった。

 夕方というと、感じることとして、

「夕凪の時間」

 だということである。

 その時間というのは、夕凪というだけではなく、

「逢魔が時」

 という時間も含まれることで、

「実に気持ち悪い時間」

 を感じるのだった。

 しかも、そこに湿気を感じると、身体が火照ってくるようで、背中に、じっとり汗を掻くのだった。

 描いた汗が、まとわりつくようで、次第に、さらに、熱っぽさを感じる。

「何か体調が悪いのかな?」

 と子供の頃に感じたのを、沖田は思い出していた。

 沖田が、前を向いて進んでいるその先に、さっきまで見えていた、紫色の幕がいつの間にか見えなくなっていて、ただ、紫色の痕跡のようなものが感じられるのは、

「夜のとばり」

 を思わせるからではないだろうか?

「夜の世界は、昼の世界の反動」

 というようなことを言う人がいたが、確かに、世の中は、必ず何かの対になっているという考え方ができるだろう。

 鏡に写った姿が、左右対称であるのに、上下が対称にならない」

 という発想も、

「世の中が対になっている」

 という発想を考えられるからなのかも知れない。

 そんなことを考えていると。

「世の中、面白いが、矛盾の積み重ねなのかも知れない」

 と感じるのだった。

 例えば、一つのことに集中しすぎて、それをいいことだと思っていると、実際には、

「おせっかい」

 ということになり、親切のつもりが、

「押しつけ」

 ということになってしまうということであろう。

 そんな夕凪で、逢魔が時の時間を不気味に歩いていると、結界を越えたつもりで、向こうに入ると、

「あれ?」

 と、沖田はビックリして、再度後ろを振り返る。

 すると、そこはやはり、自分が抜けてきた、

「紫色の世界」

 なのだが、その世界を、確かに今自分は抜けてきたのだった。

 しかし、

「何かが違う」

 のである。

 その理由が分かるまで、少々時間が掛かった。ただ、この時間が問題だったのだが、本人は、それを、

「数秒間」

 と思っていた。

 ただ、数秒間でもおかしいのだ。

 本来なら、数秒間などという微妙な時間であるわけもない。

 実際だったら、1秒くらいで気づいてしかるべきことだったので、

「こんな歪な世界に首を突っ込んでしまったということが、自分の過ちだったのではないだろうか?」

 と考えるのだった。

 実際に、自分が感じた数秒間、金縛りに遭っていたような気がする。だから、時間が長く感じられてしまったのか、あるいは、その不可思議な時間を、自分なりに解釈できていないということになるのか、実に厄介な感覚であった。

 というのが、

「抜けたはずだったのに、今一度、前の場所に戻っている」

 つまりは、

「超えることができない結界だ」

 ということになる。

 念のために再度抜けてみたが、結果は同じだった。

「この、修羅道からは抜けられないんだ」

 と思うと、

「それは犯罪を犯した俺だからか?」

 と思ったが、それなら、仲間内の誰が抜けても同じことだろう。

 と思い、そこで、じっとしていても、しょうがないので、元々のアジトに戻ることにした。

 そこで皆に、報告し、善後策を練る必要があると想ったのだ。実際に、この

「修羅道」

 というものを話す必要がある。

 ただ、言葉のような戦争などのカオスなところではなかった。とりあえず、戻ってみると、そこには、最初にあったアジトはなく、簡素化した昔の建物があっただけだった。そこには誰かがいて、中を見ると、まるで映画で見たような、いかにも、

「落ち武者」

 がいたのだ。

 血がついていて、かなりのリアルさがある。

「見つかったら、殺されるに違いない」

 と思った沖田は、とっさに、建物の下。つまり、縁の下に隠れたのだった。

「どういうことなんだ? 俺は夢を見ているのだろうか?」

 と感じたのだった。


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