第12話 超絶大馬鹿野郎
☆
この世で一番大切なものは信頼だと思う。
俺、佐久間隆一はそんな事を考えながらスマホを観ていてから投げ捨てる。
自分自身が良く分からん。
そもそもあのアホ。
つまり遠島を許したいのかも分からん。
そう考えながら居るとスマホが鳴り響いた。
それは...そいつだった。
つまり遠島だった。
ブロックを一次的に解除していたのだが。
「もしもし」
『ブロック解除したの。貴方』
「...お前の近況を知る為にな。...今何処だ」
『親父を倒してから家を出た。そしてお姉ちゃんの家』
「倒したって殺したのかお前」
『違うけど。...親父から逃げる為に私は全てを捨てたって意味』
「...そうか」
そして遠島は『何で解除したの。これ』と聞いてくる。
俺は「だからお前の近況を知りたかっただけだ」と言葉を発する。
遠島は『そう』と返事をしてから『じゃあまあ近況はそういう事だから』と電話を切ろうとする。
その言葉に「待て」と声を掛けた。
「お前の姉の家ってのは何処にあるんだ」
『そこから3駅先。...住所は親父とかには知られてない』
「そうか」
『...隆一』
「何だ」
『有難う』
電話はそのまま切れた。
俺は画面を見ながら「...はー」と溜息を吐いてからそのままスマホをベッドに捨ててから天井を見上げる。
俺も大概に...頭おかしいよな。
だってそうだろ。
浮気した相手を...考えるとは。
「まあ心のどっかで死んでほしく無いって願っているんだろうな」
そんな事を呟きながら居るとまた電話が掛かってきた。
それは今度は美里だった。
「もしもし」と連絡すると美里は『さーくん』と声がする。
俺は「どうした」と聞くと。
『今度、お姉ちゃんのお墓参りをするんだけど来る?』
「つまりお前と一緒にお墓参りか」
『そうだね』
「...その子に会おう。なら」
『...うん』
俺はその返事に少しだけ息を吐くと『さーくん』と声がした。
その言葉に「何だ」と聞いてみる。
すると『お姉ちゃんの代わりになれるかな。私は』と聞いてくる。
無言で考える。
雨が降り出した。
『私は...貴方を好きだった人の代わりになれるかな』
「なれる。...俺がお前を好きになるかは別として。...彼女の想いを力強くお前は引き継いでいるんだから」
『私ね、最近...私が生きていて良かったのか?って感じるの』
「こればかりは分からないだろ。...お前がその時生きた。...どれだけの奇跡かだ。それは」
『さーくんは変わらずだね』
「優しいとでも言いたいのか」
『さーくんはとても優しいよ。...それも...私が惚れなおすぐらいには』
「...アイツの。...遠島の件を引き出して申し訳無いんだけど。アイツの件もある」
『...遠島はどうなったの』と聞いてくる美里。
俺はその言葉に数秒考え込んで「逃げた」と答えた。
雨が降りまくっている景色を見ながらだ。
『それは親元から?』
「アイツには姉が居る。だからそこに逃げた」
『...お姉ちゃんが居るの?』
「姉妹だ。アイツは。...お前と同じ様な」
『...そうなんだね』
「...すまないな。お前は姉を失っているのに」
『いや。今度もし遠島と話す機会があったら言って。...「貴方の姉は生きている。存分に甘えなさい」って』
俺は「!」となりながら窓に触れる。
美里は『生きていれば何とでもなるから』と答える。
俺は「...姉を失っているお前が言うと...痛恨の一撃だな」と言葉を発する。
その言葉に数秒間空く。
『私は甘える事が出来なかった。私は...姉を失った。...だから...その分、遠島に気持ちを重ねてしまう』
「...そうか」
『...私は後悔ばかりの人生だから」
「そんな事は無いだろ」
『あるんだよ。これが。...お姉ちゃんの代わりにはなれないんじゃないかって』
「...」
雲が広がっている。
俺はその灰色の景色を見ながら「お前はよくやっている」と答える。
それから「俺はお前を尊敬する」と答えた。
その言葉に『さーくん?』と美里が反応する。
だけど雨が止んだ。
「...あの子の代わりにはならない。だけどお前はあの子の事を...そして遠島を心配している。それだけでお前は十分活躍している」
『さーくん...』
「もう一度言うが俺はお前ではないから何も分からない。だけど俺から見たらお前は最高の女の子だよ」
『...』
嗚咽を漏らす声がする。
俺はその嗚咽が止まるのを待ちながら空を見上げる。
しかし曇り空だったのに一気に晴れ渡り始めたな。
どうしたこった。
『さーくん』
「何だ」
『私が貴方を好きになった理由。知りたくない?』
「お前が俺を好きになった理由?それってお前が姉の代わりに...」
『違うよ。...根本は嘘吐いた。ゴメン』
「...それはどういう意味だ」
『さーくん。貴方の額には傷が有るよね』と言う。
右の方に傷が有るな。
確かにそうだが...。
だけど何の傷か分からないんだが。
『さーくん。私は貴方が私を野犬から救ってくれた。ヒーローだった。...好きにそれから好きになったの』
「...そんな馬鹿な。全く記憶が無いんだが」
『それはそうでしょう。4歳の時に私は貴方に救われた』
「...じゃあ何か。お前は...全て嘘を吐いていたのか!?俺が記憶を失ったのを良い事に!!!!?」
『あくまで主役はお姉ちゃんだから。私はモブだよ』
「お前な!そんな大切な事を何で黙っていた!」
『私にはスポットライトが当たらなくて良いって思っていたから』
その言葉に俺は愕然としながら美里の答えを待つ。
すると美里は『主役、助演は...お姉ちゃんとさーくん。だから当たらなくて良かった。私にはスポットライトが。だけどお姉ちゃんが亡くなって我慢できなくなった』と言う。
『主役が居なくなったなら私が主役になれば良い。そう思ったの』
「...」
『ゴメン』
「...この超絶大馬鹿野郎が」
俺はそう言いながら窓から日が差し込む世界を見る。
そして俺は目を閉じた。
それからまた開いてから世界を見た。
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