第9話 新たな世界


全てが漆黒に染まっている。

というかどす黒い。

夜の様な感じじゃなく...死を連想する様な黒だ。

だからマジに不安定だ。


「さーくん。どうだった」

「...さあな。まあでも変わらずの感じだったよ。だけど1つ言うなら行って良かったと思う」

「そっか。...さーくんがそう言うなら良かったけど私はもう行かなくても良いと思えるよ。...だって貴方にされた事を忘れた訳じゃないから」

「俺だって許す気は無いよ。...まあ過去を切り捨てるつもりでアドバイスしただけだ。浮気は浮気だ」

「...そうだね」


俺を見てくる美里を見ていると「ねえねえ」と春香がやって来た。

「美里ちゃんから聞いたけど浮気相手の住んでいる場所に行ったんだな」と言いながら雄一がやって来る。

俺はその言葉に「ああ」と返事をした。


「...どうだった」

「あんまりよく無かったな」

「そうか...。聞いたけどその浮気相手って確か」

「そうだな。...無茶苦茶な親を持っている」

「そうか...まあだからと言って今に至っている事に関連させたら駄目だな」

「アイツは買い物依存症の親とギャンブル依存症の親を持っているから大変っちゃ大変なんだけどな」

「お前は優しい部分があるから。甘やかすなよ」


すると春香が「普通の家だったんだよね?」と聞いてくる。

俺は「あくまで2年前まで普通の家だった。確かに」と答えながら春香を見る。

その言葉に「人間って愚かになるとマジに愚かだからね」と肩を竦めた。


「...だからと言っても雄一と同じ意見。情けをかける必要は無いよ」

「そうだな。有難うな。春香」

「ギャンブルとか良く分からんがそんなに嵌るもんなのか」

「一回の賭け金。BETを上げていって破滅するんだよ。例えば一回に1万円だったのが10万になり100万になる」

「そりゃ怖いな。正常な人間で良かったよ。俺は」

「人間に正常は無いんだろうな。きっと。まともなおじさんだったけど転落はあっという間だった」

「...怖いね」


そんな会話をしていると美里が「さーくん」と声を掛けてくる。

俺は「ああ。どうした」と聞くと。

美里は考え込む。

それから向いてくる。


「2年前まで普通って言ったよね?きっかけとかあったの?」

「...会社の解雇だよ。削減の為の。それでド嵌りって感じだな」

「...最悪に最悪が重なったんだね」

「まあそういうこったな」


そう答えながら俺は美里を見る。

美里は「...可哀想っちゃ可哀想だけど」と言う。

「だけどそれで情けをかけれないな」と真剣な顔で答えた。


「...そうだな。...無茶苦茶な事ばっかりされたしな」

「私の事も馬鹿にされたし」

「...そうだな」


話しながら居るとキーンコーンカーンコーンと聞こえた。

チャイムが鳴った。

俺達はそのままその場で挨拶して別れる。

そして俺は最後に美里に挨拶してからそのまま席に腰掛けた。

因みに次の時間は古典だった。



体育だ。

それから俺達は着替えてから外で活動していた。

男子はサッカー。

女子はバレーだった。


「...お前も大概大変だな」

「俺は大変じゃないな。...大変なのは美里だな」

「でも浮気相手に付き纏われているだろ。お前も大変だ」

「...まあな」


ゴール近くでそう話す俺達。

そして目の前の成り行きを見守っていた。

ボールをパス回しでやっていてこっちには来ない。

まあこれはこれで良いのだが。

暇になるし。


「にしても暇だな。ボール奪うか?」

「嫌だな。俺はそんな活躍はしたく無い」

「全くお前は。活躍嫌いだよな」

「いやまあお前もだけどな」


そんな会話をしながら俺達はクスクスと笑う。

それからボールの行方を見守っているとこっちにやって来た。

そのボールの行方に俺は盛大に溜息を吐きながら妨害をかけた。

しかしそのままゴールを決められた。



「まあしかし」

「?...いきなりどうした」


顔を水で洗っていると雄一がそう切り出した。

それからタオルで顔を拭きながら顔を上げてから「その女は自殺とか考えて無いんだろ?だったら放って良いと思うんだよな」と言い出す。

ああ...遠島の話か。


「遠島は自殺するタイプじゃねーからな」

「そうだな。...だからもうイチャイチャして居れば良いんじゃねーか。美里ちゃんと」

「何度も言うがそういう関係はない」

「まあそうか。...でもそれは置いておいても不思議だよな。お前らの関係って」

「マンションに忍び込んでいたしな。初めは」

「ハハハwwwそりゃスゲェな」


「ストーカーみたいな事をするね」と雄一は言う。

俺は「だな」と今日何度目かの肩を竦めた。

それから居ると体育館から女子達が出て来ていた。

その中で春香と美里が居た。


「おー」

「おう」


そして俺達は他愛無い話をしながら売店に行く。

それから飲み物を買ってから教室に戻る。

んで放課後になったのだが...。

俺と美里は帰り道でまた会ってしまう。

それは...遠島に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る