第5話 あの日の記憶


あの女の子。

坂本美里は俺を見てから「好き」と言った。

俺はその言葉に何も応えられなかった。

彼女が俺を好いているのは...大体分かる。


だけど記憶にない。

まあ理由の全てがそこじゃないんだが。

でもまそれもあってこそ応えられないと思った。

俺は根性が無いな。


そう思いながら俺はテレビを点ける。

するとそこでは...かつての列車事故の話があっていた。

懐かしい記憶だ。


この街の駅で起こった事故だ。

運転手が出発の時間に合わせる為にスピードを速め過ぎた結果。

脱線して死人が出た。


その女子の名前が...確か坂本美優(さかもとみゆ)...ん?

坂本...どっかで聞いたな。

考えながら当時のニュースを記録したドキュメンタリーを見る。

俺は考えた。

そしてハッとする。


「...そんな馬鹿な事って有るか?まさかな」


俺は肩を竦めながら犠牲者の事を放送するテレビを観る。

そして俺は途中になってテレビを消した。

宿題してアニメ観るか。


その事を思ったから、だ。

そうしてから宿題をしようと思った時。

電話が掛かってきた。

その相手は...っていうかまたコイツか。


「何だお前は。ブロックすれば良かったわ」

『坂本美里と付き合うのは止めてくれる?隆一』

「付き合ってないが...というか何故それを知っている」

『彼女は法の裁きを受けるべき存在だから』

「法の裁きだ?...何のこっちゃ。お前だろそれを受けるのは」


「私もだけど彼女は殺人を犯した」と言う遠島。

俺は「...それはどういう意味だ」と言う。

すると遠島は数秒、間を置いてから「坂本美里は姉の坂本美優を見捨てて殺した」と言ってくる...は?

驚きながら俺は遠島に「何だそれは」と聞く。


「それって列車事故の話か」

『彼女はあくまで殺人を犯した。だから危ない』

「それを今頃話すお前も危ない」

『隆一。私は本気で貴方を心配している』

「何で?お前は俺を見捨てたな?」


『私は確かに貴方に黙って浮気した。...だけどそれとこれとは別でしょ』と話した。

アホかコイツは?

俺は盛大に溜息を吐く。

それから「すまないがお前も十分悪人だ。だから俺はお前とはもう話さない」と言ってから電話を切った。


「...しかし...美里が...?」


そう考えながらその電話番号をブロックしてから今度は美里に電話した。

すると『あの女から聞いちゃったんでしょ?』と声がした。

俺は「...全て聞いた。...お前は殺人を犯したという事を」と話す。

美里は数秒間考える様な感じで言葉を発しない。


『...さーくん。私は確かに貴方とは知り合いでは無いです』

「...待て。どういう事だそれは!?」

『ですが私は貴方とは知り合いじゃなくても姉は知っています。貴方を。...それで姉は貴方を好いていました』

「...!?」

『それは白髪のその子です。貴方の記憶にある』

「...」


俺は考え込む。

そして「事故に遭ったのか。...それで姉をどうしたんだ」と聞く。

すると美里は『確かに...私は姉を見捨てました。だけど姉は言いました。それだけは勘違いしないで下さい。その時姉は生きていました。「貴方は生きてほしい」と。足を挟まれていて傍まで火の手が回って来ていたんです』という感じでだ。

俺は「!」となりながら話を聞く。


『私は愚かですかね?』

「それは誰だって仕方が無いだろ。殺人じゃない」

『でもですね。家にはマスコミとかがいっぱい来て当時は大変でした』

「...だろうな」

『「生存者であり。あくまで姉殺しのマイナスの存在」と当時は罵られました』

「...」


『その中で姉は最後の希望として貴方の事を最後に言っていました』と美里は話す。

それから『「貴方に憧れていたと。そして...貴方を好きになってほしい」と最後に姉から言われました』という感じで話す。

俺はその言葉に「そんな裏事情が有ったんだな」と言葉を発する。


『でも勘違いしないで下さいね。私はそれがあるから貴方が好きじゃない。...貴方が本心から好きです。これは嘘じゃないです』

「お前は本気で俺を好いている様だから嘘は吐いてないって思っている。だから大丈夫だが...大変だったんだな。お前も」

『...私は大変じゃないですけどだけど生きるのが大変だったのは事実ですね』

「...」

『さーくん。...私は貴方に出会えて幸せです』


言いながら『貴方が例え振り向かなくても』と言ってくる。

俺はそんな言葉に「...」となりながら考え込む。

すると美里は『でも』と言う。

俺は「?」を浮かべた。


『これから...もし良かったら私を好きになってほしいです』

「...お前...」

『その為に私はある程度は頑張ります』

「...」


そして『じゃあまた』と言って電話は切れた。

そんな裏があったとは思わなかった。

俺は...彼女の事を何も知らなかったんだが。

だけど...そうか。そうなのか...と思ってしまった。

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