第2話 1割

「さーくんはお風呂入って来る?」

「...あ、ああ。まあ...先にお風呂に入って来る」

「うん。じゃあご飯を準備しているね」


俺は自ら幼馴染と言っている坂本美里という少女を見る。

でも考えるがやはり幼馴染は居ない。

何故なら俺は...昔から親父と母親が忙しく転勤していたから。

だから幼馴染というのはやはり有り得ない。


「坂本」

「うーん...」

「何だ」

「坂本っていうのは気に食わない。...昔みたいに呼んでよ」

「みーちゃんってか!?」

「そうだよ。だって将来も約束したじゃない」


将来...ん?どんな約束だ?

俺は考えながら「...どんな約束だ?」と少しだけ恐ろしさを感じながら聞く。

すると坂本は「うん?結婚するって約束だよ?」と答える。

顎が落ちた。


「おまえ!?そんな訳あるか!俺は...」

「でも私、ちゃんと約束したよ?」

「...証拠は無いのか。当時の...写真とか」

「うん。あるよ」

「あるのかよ!!!!!」


俺は絶句する。

すると坂本は自らの胸元のボタンを外し始めた。

は!?と思いながら赤くなって目を逸らした。

そして坂本はじゃらっといわせて何かを取り出す。

ロケットペンダントだ。


「これが証拠だよ」

「...これは...写真か?」

「そうだね。当時のデジカメ?で撮った」

「...」


そこには確かに幼稚園の制服姿の俺が写っている。

そして横には坂本らしき幼い少女が制服を着て写っている。

だが...何かおかしい。

風景が違う。


「...なあ。写真がの背景が若干違う気がするんだが」

「そうかな?」

「...うーん」

「...」


坂本は悩む俺を見てくる。

それから「...でもさーくんの言う通り風景が違うのは撮影した場所が違うからだよ。それは包み隠さずに言うけど」と告白してくる。

その言葉に「撮影日は同じか」と聞いてみる。

すると坂本は「...うん」と返事を曖昧にした。


「...美里」

「う、うん。...どうしたの?さーくん。急に美里って」

「...みーちゃんは恥ずかしい。だから美里と呼ぶ。それで良いか」

「う、うん」


そして「えへへ。美里かぁ」と喜ぶ美里を見る。

俺はそんな姿を見ながら顎に手を添える。

それから美里に向く。

「お前は全てにおいて嘘を吐いてないか?」と言う感じで聞く。


「...え?いや。嘘は吐いてないよ」

「...じゃあ聞いても良いか」

「...うん」

「...俺は確かに親の転勤で放浪してあちこちを放浪していた。その中で俺は...体調不良の白髪の可愛らしい同級生に出会った事がある。だけどここは地方だ。そして俺が出会ったのは遠くの北海道。...それにお前とイメージがかけ離れている」

「うん」

「...俺はその少女の名が分からない。その時の少女か」


そう聞くと美里は「...だとしたらどうするの?」と言ってくる。

俺は「!!!?!」となりながら美里を見る。

だけど髪質も髪形も違う。

そして髪色も。

全てが違い過ぎる。


「まあそれは嘘だけどね」

「...じゃあお前はその時の少女じゃないのか」

「ないよ。...そっか。色々な人に出会っているんだね」

「そうだな。...俺は多分、200人ぐらいの保育園児とクラスメイトになって別れた。だけどその中でも彼女は...何だか妖精の様な少女だった」

「何だか嫉妬しちゃうな。それ」

「...お前がその時の少女なら納得がい...いやまあいかないけど」


俺はそう言いながら美里を見る。

すると美里は俺をいきなり抱き締めて来た。

それから胸に俺の顔を押し当てる。

オイ!?


「私はその時の少女じゃ無い。...だけど先輩。...私はまあその。1割はその子に関係があると言えるかも」

「そうか...は、え?は?それはどういう意味だ」

「内緒でーす」

「...は!?」


意味が分からん!!!!!

俺は目をパチクリしながら美里を見る。

だが美里ははぐらかすばかりで答えなかった。

それから「入って来て。お風呂に」と笑顔になる。


「...待て。美里。話は終わってない」

「私の中では終わった。これ以上は話しませーん」

「美里!どういう事だ!」

「内緒だって。幾ら聞いても話しません」


どうなっている。

何故美里がその少女を知っている。

記憶も無いししかもその少女とは友達でもない。


その幼稚園には2日しか居れなかったしな。

でも印象に残っている少女だったから...と思ったのだが。

これ...予想外の展開なんだが。

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