第39話 下り道

 俺が大和桜の大敗を知ったのは、

財前との電話の六時間後だった。

日が暮れて夕飯の支度に取りかかっていた

俺たちにおじさんから電話が入った。


「残念なお知らせだ。

大和桜が壊滅した。」

「魔王に負けたんですか?」

「詳しくは不明だけど、

生き残ってるメンバーの話だと魔王は討伐したそうだ。

魔王は、ね。」


 その一言で大体察してしまう。


「ダンジョンの奥から、

見たことがないモンスターが飛び出してきた?」

「そうらしい。

とにかく来てくれって叫んでる。

黒川さんが、瀕死の重体でね。

行ってあげなきゃ死んでしまうかも、って

言われたら断れきれなくてね。」


 まぁ、仕方ないだろう。

俺は同意して、

とりあえずヘリで埼玉の病院に向かうことになった。

ヘリは自衛隊が派遣し、最短最速で運ばれた。


「かなり重体です。

急いでください。」


 病院に着くやいなや、俺は病室へ連行された。

ベッドに縛り付けられていたのは、

変わり果てた黒川だった。

右半身がほとんどない。

腕は肩ぐらいから先、脚はどちらも腰辺りからない。

顔も擦り傷や青アザでボコボコになっていて、

鼻と耳が欠けていた。

辛うじて黒川だと分かるくらい重傷だ。


「さく! 櫻葉! さん!」


 鬼のような形相でベッドから俺を見た黒川。

肺も多分片方ない。

それでも凄い声量だ。

彼女は周囲の医者や看護師に押さえつけられ、

処置をされていた。

 黒川は暴れながらも何かを必死に

俺に伝えようとしている。


「人払いします。

全員寝ろ。」


 そう指示したとたん、

部屋にいた俺と黒川以外全員床に崩れ落ちた。

ガーネットが眠りの魔法をかけたからだ。


「ガーネット、回復を頼む。

ネルは周囲の警戒を頼んだ。」


 瞬時に黒川の傷が癒える。

ガーネットの魔法の腕がまた上がっているように思える。


「ありがとう!

急がなきゃ!

吾郎が! 皆が!」

「落ち着かないと、私が今殴りますよ?」

「あ、はい。」


 この人の瞬時に落ち着けるのはなんなんだろう。

慌てる演技だったのか?

とにかく、俺は話を聞くことにした。


「手短に。

魔王はどうなりました?」

「倒したんだけど、作戦通りには行かなくてね。

時間が掛かって、

倒したときには九分も経ってた。

 気づいたら、一階全体に“霧”が立ち込めてね。

地下二階に降りる階段近くから悲鳴が聞こえたんだ。

急いでそっちに向かったら、

そこにいた人たちが捏ね損ねたクッキー生地みたいに

ボロボロって崩れて行ったんだ。」


 霧、か。

霧に触れると何かしら攻撃がくるらしい。


「財前が逃げろって叫んだから、

私もスキルで近くにいた仲間を

引っ張って逃げようとしたんだけど、

仲間をつかんだ私の右手が崩れて……。

 でも! 必死につかんで!

掴んだはずの皆の身体も、崩れて行って……!

でも、助け……たくて……。

 吾郎もいたんだ!

扉まで逃げたとき、吾郎もいたんだよ!

でも、時間を稼ぐって言って……!

戻っていったの!」


 話しながら、黒川の瞳から涙が溢れていく。

生き残ってるのは黒川を含めて18名。

全員瀕死の重体らしい。

 黒川のスキルは発動中に攻撃を受けづらいものだ。

加速した自分と減速した周囲の中、

現象の起こりすら置いてけぼりにして彼女は駆け抜ける。

それでも攻撃を受けたなら、

それは設置型、常時発動型の攻撃だろう。

 実験していたことを思い出す。

熱したフライパンを黒川がスキル発動中に誤って触ってしまって、

結構な火傷をしていた。

電気なら黒川の身体の方が高圧電流が帯電してるので

効かないが、

既に設置された熱や毒には弱かった。

むしろ、加速している分毒の回りが早く、

弱点とも言える。


「櫻葉さん、助けて……!」


 黒川は泣きながら、懇願した。

でもその瞳は諦めていない。


「とりあえず、他の17人を回復して、

全員でダンジョンへ行きましょう。

全員から分かるだけ情報をもらって、探索します。

最悪でも、遺品が消えないように、

移動しながら聞きますね。

 ただ、ダンジョンへ入るのは我々だけです。

いいですか?」

「……ありがとう!」

「ある、アルジ様。

人が来ます。」


 ネルがそう言うのに対し、

ガーネットはすかさず眠りの魔法を用意し出す。


「あ、そうそう。

これは大和桜から私に対しての探索依頼とさせてもらいます。

国には口を挟ませません。

回復の借り、ここで返してくださいね。」

「……やっぱり怖いよー。

国と戦えって言われたよー。」


 黒川がそう言って笑う。

ガーネットが部屋に入ってきた人を眠らせた。

医療関係は適当に起きるようにしてるとこのと。

他の病室も回って、17人全員を回復した。

 そこへ、タカミさんから電話が入った。


「はい。」

「すまん!

聞いてくれ!」


 タカミさんが声を張ることなんて滅多にない。

俺は神経を耳へ集中する。


「分かりました。」

「ありがとう!

大和桜が魔王を誘い込んだダンジョンから、

黒い何かが飛び出してきた!

既に日本に上陸した!

場所は福島のいわき市だ!

 テレビがあるなら、

どの局でもいいから付けてくれ!」


 病院の個室のテレビを拝借した。

電源を付けると、

そこには黒い風と逃げ惑う人が写し出されている。


「“逃げてください!

すこしでも遠くへ!

隠れてもダメです!

黒い風はどんな小さな隙間からも襲ってきます!”」


 レポーターが叫ぶ。

どうやらヘリも逃げているらしい。

揺れるカメラが逃げ惑う人と、

それを追う黒い風を撮している。

 黒い風に捕まった人間は、

瞬く間に崩れ落ち人間の形すら残らない。

冗談のように人が次々死んでいく。


「“……ねぇ、あれ!”」


 レポーターが指を指した先にカメラが向けられた。

ピントがあわず、ズームされていく。

人影が黒い風の真ん中に見える。

次第にピントがあっていく。


「嘘……!」


 黒川がそう言った。

ピントがあったそこには、財前がいた。

だが、財前じゃなかった。

いつもの上品なアルカイックスマイルじゃない。

下品に笑う男がいた。

 その男の顔から頭は右半分がなくなっていて、

頭蓋骨が露になっている。

頭蓋骨は黒曜石を割ったような黒く鋭利なもので、

両手も肩口から骨しかない。

装備はボロボロで下着と腰のポーチだけ残っている。

いつものあの槍も持ってない。

頭蓋骨の右目は底のない穴のように闇が満ちていた。

その目は邪悪なものだった。

 大口を開けて、両腕を広げ、

全身で喜び笑う男。

どう見ても、あれが元凶だ。


「……死体をゾンビにされた?」


 俺がそう呟くと、

大和桜のメンバーたちは怒りを露に叫びだした。


「酷い!」

「ふざけんな!」

「返して! 返してよ!」


 とりあえず、急いだ方がいいようだ。

映像には男を囲むように骨が集まっていく。

ファンタジーにでてくるスケルトン、と言った様子だ。

恐らく、黒い風に当てられた人のなれの果てだろう。

 骨たちはばらばらに分かれ、また固まり、

巨大な人骨を構築していく。

男の背後に巨大な骨が立ち上がっていく。

大きすぎるのか、それは四つん這いで動き出した。

こう言う絵を教科書で見たことがある。


「ゾンビはゾンビでも、

ウイルスとか科学的なものじゃない。

魔法的なものだから、

“死体”であればどんな形でもコントロールできるのか。

肉がなくても魔法で繋げて、操ってるのかも。

頭なんてあってもなくてもどっちでも良さそうだな。」

「すみません、アルジ様。

私たちのいた世界にはネクロマンサーはいませんでした。

死んだらそれまで。

 ゴーストとか、そう言うモンスターはいましたが、

ガスで身体を構築していたり、

小さな虫の集合体だったりです。」

「ある、アルジ様、鑑定はテレビ越しではできません。

ごめんなさい。」

「謝らなくていい。

いつもありがとう、ネル。

ガーネットも、いつも助かってる。」


 俺は二人の頭を撫でた。

二人が見えないが、声は聞こえた大和桜のメンバーは

キョロキョロと人を探している。

 これは小田さんたちと話していたことだが、

ダンジョンはここではない他の世界と繋がっている可能性が高い。

しかも、他の世界はたくさんあり、

ダンジョンごとに違う世界と繋がっている。

下手すると同じダンジョンでも、

階層ごとに違う世界と繋がっている可能性すらある。

なので、テレビに映し出されたあれらは、

ガーネットたちの世界とも違う世界の存在感だろう。


「急いで情報収集だ。

タカミさん、ヘリをまたお願いします。

一旦切りますよ。」

「ガッテン承知だ!

任せろってもんだ!」


 そう言って高見さんは電話を切った。

俺はすかさず小田さんたちへ電話する。


「もっしー!

お兄さん、待ってたっスよ!

黒川氏のきれいな装備と

他の17人の簡易装備をドローンで送ったっス!」

「ありがとうございます。

では、今分かってる情報を展開して、

随時聞き取ります。」


 俺は黒川から聞いた話をかいつまんで小田さんへ伝えた。

そして、他の17人にもダンジョンで

見聞きしたことを聞いていく。

要点をまとめると、

“濃霧”、“突然身体が崩れ落ちる”、

“痛みはない”、“防御不可”の四点だ。


「みなさん、“匂い”はどうだったっスか?」

「え?

そんな、覚えて……。

でも、何もしなかった気がする。」


 黒川が唸りながら頭をかきむしって必死に思い出そうとする。

すると、メンバーの一人がポツリと言った。


「そう言えば、作戦の直前に香水をきつく付けたのに、

その時その匂いもしなかったかも。」


 全員がその人を見た。

その人は慌てて付け足す。


「あ! あのね、決して!

決して体臭がキツいとかじゃなくてね!

 その、火薬の臭いが得意じゃないから、

好きな香水をいっぱい付けてたんだけど。

今は少し香ってるぽい。

でも、あの時は確か何も感じなかった、かも。」

「香水は体温で揮発して匂いを出すっス。

匂い物質は基本的にそう言うものが多いっス。

あとは風とかで巻き上げられて、とかっスけど。

“血”の匂いも、その分だとしてないっスよね?」


 小田さんの一言で大和桜のメンバーが唸った。


「……確かに。」

「うわ、あんな惨状だったのに。

そう言われてみれば。」

「血の匂いはなかったかも。」


 小田さん、さすがだ。


「おけー!

なんとなく分かったっス!

 あの“霧”、多分、生き物の体温を奪ってるっス。

急激な低体温で皮膚と肉が壊死して身体が崩れてるっス。

だから、痛みもあんまりなくて血の匂いも控えめっス。

下手すると体液は氷ってるかもっス。

それだと死体の臭いがしなかったはずっス。

 しかも、骨だけ残る、

黒川氏のスキルで避けられない、となると、

ほぼ温度変化による攻撃で確定っス。

 後、皆が身体の末端から崩れてるっス。

これも体温を奪われて

面積の小さい手足から崩れているっスね。」


 短時間のディスカッションで

そこまで詰められるのはさすがの一言だ。


「いやー、人数いると結論まで早くていいっスねー。」

「他の皆いるんですか?」

「そっス!

お兄さん、

あたしらは面白そうなら飛び付く狂人っスよ!」


 なるほど、分からない。

でも、頼りになる人たちだ。

電話の向こうから

たくさんの狂人の笑い声が聞こえた。


「あぁ、そいえば、猿の魔王をどするっスか?

これいると、お兄さんたち全力出せないっスよ?」

「面倒ですが、殺しましょう。

装備と一緒に送ってください。

検証もかねて、あの黒い風の中に投げ込んでみます。」

「酷すぎない?」


 おずおずと黒川が言った。


「“勇者”にかける情けなんて一つもないでしょ?」

「そうだけどさ、でも、その。

櫻葉さんのその、

敵に徹底的に非情になれるの、ちょっと羨ましい。」

「ネルみたいな事情でもあれば別ですけど。

好き放題して、自分と友人、知人に害をなすなら、

害虫と同じです。

人間でもなんでもない。

 黒川さんだって、ゴキブリや蚊に殺虫剤かけたり、

叩き潰す時に情けなんてかけないでしょ?

それに家族がいるなんて、気にしないでしょ?

あれと同じです。

 神を気取ろうが、英雄と崇められようが、

家族がいようが、人間の顔•形であろうが、

害虫は害虫。

潰せば死ぬだけ、害虫の方が良いとすら思いますね。」


 黒川が得心した顔になる。


「……あれだ、安土桃山の侍だ。

もしくは、ファンタジー世界の冒険者だ。」

「酷い言い方かもしれませんが、

財前さんの遺体を玩んでる“あれ”を許せますか?」

「……ムリだ。

ムリだよ。絶対殺したい。」

「でしょ? 同じです。

特別でもなんでもありません。」


 黒川が何故か項垂れた。

そこに、電話から小田さんたちの声がする。


「新しいマント、装備を作ったっス!

お兄さん、

前にスキル使ってたらマントがスキルの外に飛び出したっしょ?!

あれ、計算通りなんっスよ!

グローブとマントが“神装”使用時も

外に飛び出して使えるようになったっス!」

「オラぁ!

泉屋だ!

アンタの足にピッタリのブロンズブーツができたぜ!

これも、スキルで隠れない!」

「ひゃーはっはっは!

我輩だ! 小暮だ!

とうとう! とうとう我々は魔を、捉えた!

“魔力計”として、

数値化できるアイテムを作ったので送る!

数値が高いと周囲に魔力が満ちているので、

相手の攻撃範囲に入ったか確認できるはずだ!」

「山口です!

ぼくぁ、新しいのは間に合わなかった。

ごめんよ!

でも、火薬の追加を送るよ!」

「Yo!呉羽だ。

すまねぇ、魔力計、ドローンに積めなかった。

でもな、魔力で墜ちないよう、

ドローンの外装はダンジョン仕様さ。

ぶちかますぜ、タックル。

魔王にかますぜ、俺たちのナックル。」


 研究所総出でフォローしてもらえるらしい。

非常にありがたい。


「そいえば、あの前のマント、誰か持ってったっスか?

お兄さんの血塗れのやつっス。

どこにもないんっスよー。」

「知らねーよ!

ヲタ、おま、整理しろって!」

「それを言うなら、イズミールもっスよ!」

「我輩の前で整理整頓の話か?

相談に乗るぞ?

チリ一つも残さん。」

「オクレ、ちがっ!

やめろ!

それは使うかも知れねーやつ!」

「オク、落ち着くっス!

人ダンは皆の場所っス!」

「だったら、なおさら掃除をしろ!

笑ってるのなら、

他の奴らもまとめて大掃除してやろうかっ!」

「勘弁してほしいっス!」


 非常事態だが、ここだけは通常通りのようだ。

俺はため息をつきながら

リアクションに困っている大和桜のメンバーに向き直る。


「とりあえず、目処が立ちました。

あの黒い風は皆さんが見た“霧”とほぼ同じと見て良いでしょう。

問題は、魔王と謎のモンスターが混ざりあってることです。」


 そう、これだけはなんとか事前に解決したい。

黒川はおずおずと手を上げる。


「……吾郎が、さ。

出発の前に“ポーチに奥の手を用意してる”って言ってたの。

さっきのテレビでも、一瞬だけ写ってた腰のポーチ。

 もしかしたら、

謎のモンスターと奥の手で相討ちになって、

そのどさくさに紛れて隠れてた瀕死の魔王にやられた、とか?」


 それで言うなら、

財前の身体の装備で残っていたのは下着とポーチだけだった。

そのどちらもうちの研究所の商品だ。

もしかしたら、

財前はポーチをかばいながら近寄って行ったから、

下着姿で両腕が骨だけなのかもしれない。

 ただ、その説明は俺の腑に落ちなかった。


「財前さんのスキルで防がれるのでは?

“起死回生”でしたよね。

自分が死に瀕した時に、発動。

全ステータスが数十倍になり、

どんな攻撃も必ず敵に、有効打にできる。

リスクに見合う強スキルです。」


 洞窟ダンジョンでの件で、

財前のステータスもガーネットが鑑定済みだ。

“起死回生”は即死以外発動を防ぐ方法がなく、

俺が手を出すのをためらったスキルだ。


「そうなんだけど、

あくまでも攻撃が優位になるだけだって聞いてる。

防御力とか回避とかは、

ステータス任せにすればかなり凄いんだけど。

攻撃と違って、

防御、回避が絶対成功するってことじゃないって。」


 なるほど、なら“相撃ち”はあり得るのか。

そこを隠れてた魔王に憑かれれば、

この状況になるのか?

俺の中ではまだ腑に落ちない部分があるが、

概ねその想定で行けそうだ。


「小田さん、俺がいるこの病院の場所分かります?」

「大丈夫っス!

ドローンは皆そこに向かってるっス。」

「Yay!

後三分で到着だ。

後、半分は後着だ。

全部で18機!

ライブで出演だ!」

「あ! 山口です!

あのさ!

今公安の人から電話で、

ヘリは後五分でそこに着くって!」

「分かりました。

皆さん、ありがとう。

この魔王で手に入った素材も、

回収できたらお渡ししますよ。」


 電話越しに歓声が爆発した。

そんなに嬉しいのか。

俺は苦笑いしながら、大和桜のメンバーに言う。


「ヘリポートへ急ぎましょう。

短期決戦です。」

「……櫻葉さん、あの、頼んだのは私だけど。

その、他のメンバーに色々見せすぎじゃない?」

「今から死地に向かうんです。

下手すると皆死ぬんで、出し惜しみ無しですよ。

邪魔ならまた後で潰します。」

「……信用はしてくれないんだね。」

「そりゃ、そうでしょ。

委員会の件もありましたし。」

「そっか。」


 黒川は何故か顔を伏せた。


「私らは櫻葉さんにとっては、

“虫”なんだね。

蝶々とか、てんとう虫。

 いても気にしない。

気がついてもそこまで意識しない。

どうでもいい。

“害虫”じゃないから、ほおっておいてる。

“害虫”だったら潰す。」


 俺を責めると言うより、

悲しげに黒川が言う。


「まぁ、厄介事を運んできてるので、

“害虫”寄りですね。」

「……それは、本当にごめん。」

「大和桜の依頼、ならいいんですよ。

国が、政府が絡むからダメなんですよ。」

「……国にはお金もらってるから。 

なんか、ごめん。」


 黒川は面目ないと呟いて、肩をおとした。

他のメンバーも何故か肩を落としている。


「ソロで自前の研究所持ってて、

数日で億稼ぐなんて、普通ムリだよ。」

「しかも、元金はモンスターの魔石ってさ。

ソロでボス倒せたから?」

「俺ら、櫻葉さんと比べるとハンター歴は先輩だけど、

収入は百分の一程度だからな。」

「なんか、なんかごめん、としか言えない。」

「あれだ、その、国がバックだって嬉しかったけど、

バックなしが実は一番凄いわ。」

「社長違い、って感じかな。

どこの社長とは言わないけど、

黒い方が実はって感じ。

スーパーな宇宙人と、タイマン張れるし。」


 大和桜のメンバーが口々にそう言う。

実はこの話は地雷だったか?

俺は思わずガーネットとネルと顔を見合わせた。


「とにかく、行きましょう。

グダグタ言ってたら置いていきますよ。」


 そう言いながら俺はため息をついて歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る