閑話“生首”

 緒方はロボットアームを装着した小田の頭を抱えて、

建設現場を視察に向かう。

電車で行こう、と言うのは小田の発案だったが、

かなり不味かった。


「その、お荷物はお人形ですか?」


 二人は駅員に呼び止められた。


「失敬な。これでも生きた人間っス。」

「ひっ?!」

「色々あって、こんなナリっス。

ちゃんと、一人分の料金は払うっス。」


……結局、乗車を拒否される。

良いのか悪いのか、二人とも全く気にしない。

 じゃ、タクシーだ、と小田が言って

駅前のタクシー乗り場へ向かった。


「うわぁ!」

「ひいぃぃ!」


 阿鼻叫喚の地獄絵図ができた。

タクシー運転手達は二人が近づくと急発進して逃げていく。


「不作っスねー。」

「レンタカー、借りましょう。」

「あたし、免許持ってるっスけど、

この体じゃ運転できねぇっスよ?」

「私、免許あります。」


 レンタカーショップでも悲鳴が上がる。

パニック映画さながらである。

 何とか話すことができたので、

二人は借りた車体へ乗り込んだ。


「緒方っち!

バイク乗れるんっスね!

サイドカー乗るの夢だったっス!」


 緒方はサイドカーに転がる小田へ親指を立てて応えた。

 大型のバイクに生首を乗せた女性ライダーの都市伝説が生まれた日だった。

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