第15話 社会の理
冬の足音が聞こえる11月某日。
俺はおじさんとタカミさんの運転する車に乗っていた。
タカミさんは俺の後見人をしてくれている人で、
フルネームは鷹見正士(たかみ まさし)。
お歳は65歳で、元公安と聞いているが。
「お二人とも、もっと控えめに活動できんのですか?
古巣から連絡が鳴り止まないんですよ。」
はげ上がった頭を撫でながらぼやくタカミさん。
「涼治君は仕方ないとして、
先生は派手にキメすぎでしょ。」
「仕掛けてきたのは向こうですから。
やり返すなら、派手に、ですよ。」
「おたくはいいでしょうが、
こっちは痛くない腹探られるんですよ。
カミさんにも、手酷く問い詰められました。」
この二人の会話は、悪意はないと思うが、
聞いているとゾワゾワする。
しかも、仲が良いので遠慮なく突っ込んだ話を
平気でする。
横で聞いている俺は、
他人に鼻の穴をさわられたような感じがする。
「委員会は、しばらく派手に動けんです。
ただ、恨まれていると見て間違いないでしょう。
先生も涼治君もね。」
「災害から必死に、
しかも、他の生徒も助けて逃げた被害者の身柄を拘束しよう、
なんて組織に肩入れする道理がありませんよ。
恨むなら、自分達だと思いますがね。」
「一面的に見れば、仰ることもわかるんですがね。
向こうとしても、
貴重な情報源にどっかにいかれる訳にいかんのです。
そこは汲んであげてくださいよ。」
委員会は防衛省所属の組織だが、
公安も噛んでいるとタカミさんは言っていた。
多くの魔石を採取できるハンターは、
国の資源として公安も注視しているらしい。
「涼治君、君が何度も千個近い魔石売ってるのを、
公安も見てるんだよ。
それで、例の災害だ。
今まで問題行動がなくても、
君の素性は洗い出されてるはずだ。
言っちゃ何だが、君の過去は、その、
他人から見ると問題がある。
君は何も悪くないが、ね。」
「自覚しています。
私自身まともな人間性は、
もう持っていないと思いますし。」
「いやぁ、それはないな。
わたしゃ、色んな人間を生で見てきたけども。
君は、寧ろ疑問に思うくらい善良だ。」
「逆ですよ、タカミさん。
彼は色んなことがあって、
しがらみや他者の目、世間体から完全に解放された、
言わば究極のアウトサイド。
空気を読まないから、思った通り行動する。
善悪の判断も法より自分の持つものを元にしている。
誰もがそうありたいと、思い描く人間なんです。
ただ、そのせいで世間と摩擦が起きる。
今回みたいなね。」
噛み煙草を口へ放り込んで、タカミさんが頭をかく。
「言い返したくはないが、先生。
そう言う社会性の欠除は、人格を蝕んで行くものです。
わがままが通りすぎれば、
うちの親戚のどら息子のように暴君になる。
存在ごと切り捨てられれば、
路上を徘徊する獣になる。
ただ、彼はそうなってない。
どっちにもなってないんだ。
こりゃあ、先生のお陰かな?」
「お褒めいただきましたが、
私ではなく健治の手柄でしょうね。」
「あぁ。坊っちゃん、元気ですか?
災害の時は、痺れたねぇ。
戦う涼治君と、声を枯らして応援する坊っちゃん。
映画のワンシーンのようだった。」
あの時を思い返せば、
戦闘で少しハイになっていたこともあり、
なんだか恥ずかしい。
だが、嬉しかったと今でも思い出す。
「そろそろ到着かな。
予定時間より少し早いですが、お邪魔しましょう。」
研究所は小田さんの言う通り、
山の中腹にあり周囲に他の建物は一切なかった。
近くのコンビニまで車で20分くらいかかる。
人気はなく、
少し薄気味悪く見える建物で窓が一つもない。
鉄筋コンクリート造、二階建て。
入口のインターホンが古いのか、
ダクトテープで所々張り直されている。
しかも、マイクはあるようだがカメラがない古いタイプの家庭用インターホンだ。
「ここで、いいんだよな……?
先生、住所は間違えてないかい?」
「私に送られてきた住所はここです。
タカミさんが道を間違えてなければ。」
「一言余計だなぁ、先生は。」
「ともかく、押してみましょう。」
おじさんはタカミさんを見る。
タカミさんがえ?、と言う顔をする。
おじさんは大袈裟にお辞儀して、
タカミさんに譲るアクションをした。
タカミさんが返すように大袈裟に肩をすくめて、
ため息をついた。
結局、インターホンを押したのはタカミさんだった。
ビー。
今時なかなか聞かない呼び出し音が聞こえた。
思わず三人で顔を見合わす。
「はいーっス。今開けるっス。」
「いや、この場合、
インターホンから聞こえるんじゃないのかい?
普通に奥から声が聞こえてきたぜ?
うちの田舎の百歳になるオフクロだって、
ちゃんとインターホン使ってるって。」
「タカミさん家はすごいねぇ。
私の母さんは、ここと同じ方式だよ。」
「いや、先生は稼いでんだから、
インターホン買ってあげてくださいよ。」
タカミさんが呆れているときに、
扉が開いた。
「お二人の漫才はおもしろいんっスけど、
ビジュアルが不穏っス。」
小田さんがボロボロの格好で出てきた。
思わず俺が声を出した。
「小田さん、どうしました?」
「あぁ。この格好っスよね。
研究所のやつらが、
お兄さんに見せる装備を送ってきやがったっス。
ただでさえ狭いのに、
荷物を開いて並べておけ、って指示まで出たっス。
昨日の話っス。
そっから寝てねぇっス。
送ってきたやつらも来ねぇっス。」
「聞いてた以上にヒドイねぇ。
そりゃ、辞めようって思うわな。
従姉妹も脱サラして結構いい生活してるし、
私みたいに定年まで勤めあげなくても
全然いいと思いますよ。」
とりあえず、俺たちは小田さんの
研究所の中へいれてもらう。
昭和レトロ、といえば聞えがいいかもしれないが、
全体的に古くてぼろい。
「黒電話に、花柄の受話器カバー。
壁には常夜灯、天井からハエ取り紙。
昭和も初期、中期くらいかな。
タカミさん、懐かしいんじゃないか?」
「ぶっちゃけ、
私が子供のころ住んでいた家みたいだよ。
ビーズの暖簾とか、今日日売ってねぇなぁ。」
「台所見るっスか?
花柄の家電っスよ。
初めて見たとき、
博物館だと本気で思ったっス。」
俺は見たことがないものばかりで、
寧ろ新鮮に感じている。
眺める中には
俺の知識では用途の分からないものもある。
「レースのテーブルクロスの上に、
透明なビニルのカバーって、あったねぇ。
母さんはこれ、まだ使ってるな。」
「どっちも山ほど在庫が倉庫にあるっス。
何なら持って帰ってもらって、問題ないっス。」
「別にもよおした訳じゃないが、
トイレは汲み取り式か?
わたしゃぁ、アレが苦手でね。」
「それは速攻で水洗に改造したっス。
下水も市に問い合わせて、
実費で引いてもらったっス。
会社に請求したら、無視されたっス。」
げんなりした顔で小田さんが言う。
俺はおじさんのように法に詳しくないが、
それって違法か何かではなかろうか。
「退職時に私から御社へまとめて請求しましょう。
そう言うの、全部紙か何かで記録あります?」
「領収書と日誌があるっス。
藤堂弁護士に後でお渡しするっス。
研究機材もほぼ自費っス。」
「これ、ほとんど小田さんの
個人研究所じゃないですか。
言い方はアレかもしれませんど、
もらったスーツができたのは本当に奇跡では?」
「そもそもここは一時保管倉庫なんっス。
材料は届くんっスよ。
で、色々したかったら自費で機材を何とかするんっス。」
窓際どころか倉庫に詰め込まれても研究してる、と
見ると凄いのかもしれない。
俺としては、
ここまでされて何故会社を辞めなかったか、が
不思議で仕方がない。
「もう、ここ自体小田さんの研究所として、
買い取りますか?」
「涼治君、土地が多分“山”だから、
管理が面倒くさいよ。」
「親戚の叔母が山持ってたんだが、
雪崩れたり、がけ崩れしたら金かかる、って
言って手放したなぁ。」
「そうそう。
色々面倒なんだよ。
この手の手続きは、おじさんもなるだけ避けたいな。」
「いやぁ、そもそも金は返して欲しいっスけど、
ここに愛着なんて皆無っス。
スカウトしてもらえるなら、
新しい研究所でもっと広くて、
できれば地下の試験室が欲しいっス。」
小田さんはあっけらかんと言いはなった。
「今見てる土地の資料お渡ししましょう。
わたしゃ、コネがあるんで、
金さえ用立てればすぐ用意できますよ。」
「建物は私が手配しよう。
まぁ、時間はどうしてもかかるけど、
良いのができるよ。」
「融資額、増やしてもらいますか。
二億とか、そこらで足りますか?」
「今の涼治君に金貸せる銀行ってあるかな。
わたしゃ、そっちのコネはないんだが。」
「私がちょちょっ、とします。
まぁ、その気になれば一月数千万稼ぐハンター相手なんで、
銀行も査定は緩めてくれるでしょう。」
「後見人だから、名義は貸しますよ。
先生は金に関しては義理堅いし、信用できる。」
「なんっスか、これ。
頼りになりまくる感じが凄いっス。
チームっスか? リーグっスか?
財団がバックにいるんっスか?」
「私はスーパーリッチではないので、あしからず。」
「右に同じ。」
「わたしゃ、年金生活なんで。」
「ぜってぇ嘘っス。」
小田さんと話し込んでいると、
玄関のブザーが鳴った。
小田さんはまた、大声で応えながら玄関へかけていく。
「うわーっ!
何するんっスか!
そんな人数入んないっスよ!?
研究室は奥、って……、ちょっと、話を聞くっス!」
小田さんの叫びが聞こえたので、
三人で顔を見合わせて立ち上がった。
声のする方へ向かうと、
作業着の男がずらずら研究所へ入っていった。
それを見送って玄関へ向かうと、
小田さんは男と言い合っている。
「ちゃんとならべたのか?!」
「やったっスよ!
指示書通り!
手伝い呼べるなら、昨日のうちに呼べっての!
チーフは確認が甘いんっス!」
「うるさい!
ここまで狭いとは思わなかったぞ!」
「チーフがあたしをここへ送ったんでしょーが!
知らなかったなら、調べてから来いっス!」
小田さんと言い合いをしているのが、
例のチーフらしい。
白衣を着た細面の男がそこにいた。
更にその横で二人をなだめようとしている三人の男がいる。
この三人だけスーツ姿だ。
三人がこちらを見つけたようで、
慌てて二人を止める。
「あ!
藤堂弁護士ぃ!
助けて欲しいっス!
コイツ、なんでもいいんで訴えたいっス!」
「とりあえず、パワハラかなぁ。」
「何を!
こちらは正当な辞令や指示通りにしている。」
「いや、前日に大荷物送って準備を一人徹夜でさせるのは、
労基にも違反してるしねぇ。」
「は?!
荷物は先週送った!」
「伝票見ろっス!
到着は、昨日っス!」
小田さんは懐から伝票を出してかざす。
メガネを懐から出して伝票をにらむ男。
「昨日?! バカな!」
「バカはそっちっス!
発送みたら、
金曜日の夜遅くにビルの収集所に出してるっス!
そんなタイミングで出したら、
当たり前にビルから運送会社に送るのを
翌週に回されるっス!
更に! この数を! 別々に! 梱包してる!
運送会社は、到着日指定してないから、
同じ場所に送るとき、まとめるんっス!
それで、あっという間に三日経ってるっス!
しかも、ここは山の中!
すぐにこの量を運べるわけないっス!
チーフは研究資料をちゃんと読まない人だと思ってたっスけど、
そもそもなんも読まない人なんっスね!」
「うるさい!」
「こんにゃろ! 泣かす!」
俺は猫のよう飛びかからんとした小田さんを
羽交い締めにして止める。
小柄な身体のどこにそんな力があるのか、
と思うほど暴れる小田さん。
おじさんは小田さんの前に回ってなだめる。
「まぁまぁまぁまぁ、小田さん落ち着いて。
でも、パワハラで労基にも違反してるから、
私の方からがっちり訴えられますよ。」
「あの、大変申し訳ありませんが、
勘弁いただけないでしょうか?」
スーツ姿の一人が口を挟んだ。
彼は名刺を差し出して名乗る。
「初めまして、
東野技研CEOの東野 伊織(ひがしの いおり)と
申します。
こちらは、役員の西寺と北見です。」
紹介されて他の二人も名刺を出した。
俺は今も暴れる小田さんを抑えているので、
おじさんに代わりに受け取ってもらう。
「これはこれは、
こんな状態を放置している経営陣が
雁首揃えていかがされましたか?」
「先生、
さすがにそれは一発目に持ってくるパンチじゃないって。
うちのカミさんでも、とりあえずは挨拶して、
それから“お話があります”ってな具合だぜ?」
この二人、満面の笑顔だ。
俺に向けられたものではないが、怖くて仕方がない。
ナイフを突きつけられたり、
銃口をこめかみに突きつけられるのとは異なる。
でも、明確な殺気。
俺はナイフとか銃口の方がいい、と思ってしまう。
二人とも俺の味方だが、
心のうちで南無、と唱えておく。
スーツの三人は、
アニメやマンガのように冷や汗を額から流した。
「あの、ええっとですね。
本日は、ハンター櫻葉 涼治さんの
契約変更をご提案させていただきたくて……。」
「私は御社の企業体質を見るに、
このまま契約継続するのはどうかと思いますが。」
おじさんは大袈裟に、
今も俺の腕で暴れる小田さんを見ながらそう言った。
「私は悪くない!
私は業務規定にしたがっているだけだ!」
チーフとやらも主張しているが、
冷や汗がダラダラと音がしそうなくらい流している。
「これが許される業務規定は、
完全に労基に違反していますがね。
御社の規則は法律より尊重しないといけない、と
言い張るおつもりでしょうか?」
「いえいえ。そんなことはありません!
この件も含めて、ちゃんと調査を……。」
「調査どころか、証拠隠滅しそうなんでお断りっス!」
「……と、仰ってますよ?」
小田さんの大声は山びこになるほどだった。
「小田さん、悪いことは言わねぇから、
こんなとこ辞めちまいな?
わたしゃ、ここまで酷いとは思ってなかったぜ。
公安(古巣)経由で、調べようか?」
「え!? こ、公安!?」
「あぁ。定年した、OBですがね。」
「タカミさん、Boyにはちょっと歳を食いすぎかと。」
「涼治君ならまだしも、
先生には言って欲しくねぇなぁ。」
スーツの三人にはもう何も聞こえていない。
良い歳の大人があわてふためく様は、
正直見てられない。
「ほらぁ!
やっぱり三人ともスゲーじゃねぇっスか!」
「なんでそう言うことは報告書に書かないんだ!?」
「あたしも今日知ったとこっス!
てめぇ、読まねぇ癖に報告書書け、とか言うなっス!」
「あの、セッティング、完了しました。」
作業着の男が割って入ってきた。
チーフとやらは作業着の男からサインを求められる。
チーフはバインダーを奪い取り、
乱暴に書きなぐってバインダーとペンを
地面に叩きつける。
コイツ、そもそも人間としてダメだ。
作業着の男はチーフをにらみながらバインダーを拾って、
土を払って他の作業員をつれて出ていった。
「とっ! とりあえず、入りましょう。」
役員のどっちかがそう言った。
俺には悲痛な叫びに聞こえた。
とりあえず、
さっきの部屋は狭いので更に奥の実験室へ
行く事になった。
俺もいつものキャリーバッグを持って行く。
チーフとその部下の白衣が五人、
最後尾についてくる。
チーフはずっとぶつぶつ何かを言っている。
青い顔で、ずっとだ。
不気味だが、
色々自業自得だとしか俺には感じなかった。
到着した部屋は半地下でかなりの広さがあった。
実験室と言うだけある、
と思ったがよく思い返すと倉庫だった。
よく見ると色々配置されている機材などは、
鉄の棚を流用して置かれていた。
奥には大きな水槽のようなものが見える。
水槽の中は黒っぽい液体が入っている。
その手前には金銀に光輝く装備が一式、
マネキンか何かに着せられて立っていた。
例のフルプレートアーマーはあれか。
どう見ても俺用のサイズだ。
デカイ。ゴツイ。
ただ、これはどうやって着るんだ?
一人では絶対着れない。
よく見ると横に装置のようなものがたくさん置いてある。
これを使って着るのか?
着るだけで?
それは、いらないなぁ。
アメコミ好きの藤堂であれば喜ぶだろうが、
俺としては手間がかかりすぎているのでお断りだ。
思わずため息が出た。
「さっ。あれがわが社で用意できる最高の装備です。
是非お試しください。」
スーツの一人がそう言って雰囲気を誤魔化す。
誤魔化しきれていないが、本人達は本気だ。
「……とりあえず、小田さん。
頼んでいたファールカップをお願いできますか?」
「あぁ。お兄さん用の特大サイズっスね。
用意してるんで、ちょい待って欲しいっス。」
「不要です。こちらで用意したものがあります。」
チーフとやらが割って入る。
「下着についてもこちらで用意したものがあるので、
それを着用ください。」
「……チーフ、その鎧をお兄さんに着せるつもりっスか?」
「試してもらうんだ。当たり前だろう。」
「多分、入んないっスよ。
サイズ、ちゃんと報告書通り作ってないっスね、
これ。」
「何を言うか。
全てサイズは報告書にあったとおり、そのまま作……」
「入んないのは、お兄さんのチ○コっス。」
場が凍った。
チーフの後ろで用意していた白衣の人たちも動きが止まった。
これは、そう言うことなのか?
俺の股間のサイズを冗談だと思って、
無視して作ったのか?
ガーネットがこちらの様子を伺っていたようで、
アルジ様のはご立派です!、と念話を飛ばしてきた。
いや、うん。ありがとう、ガーネット。
「……報告書に正しいサイズを書かないおまえが悪い。」
「いやぁ、あれに関しては
正確でも、“ちゃんと”はできないんっスよ。
お兄さん、よかったら脱いでもらえるっスか?
ファールカップ試しましょっス。」
俺はタカミさんとおじさんを見た。
二人は苦笑いをしながら頷いた。
……脱ぐしかないようだ。
「……いつもの装備に着替えますよ。」
俺はキャリーバッグからいつもの装備を取り出して、
上の服を脱ぎ出した。
白衣の人たちは慌てて簡易更衣室を用意していると言ってくれたが、
その更衣室が小さいため俺には利用できない。
白衣の人たちは不機嫌を隠さないチーフを見て、
小声で俺に謝罪してきた。
いいって、本当に。
体格に関しては色々諦めてるから。
確かにべらぼうに萎えるが、どうにもならない。
とうとう全裸になる。
知ってる陣は、何故か胸を張って自慢げだ。
知らない陣は、口が開いている。
いや、三人は何故自慢げなんだ。
「小田さん、太さとか測ろうとしないでください。」
「お兄さん、やっぱデカイっスねぇ。
アジア人枠でギネス狙えると思うっス。」
「身体が大きいと、ここも、ってことなのかな。
タカミさん、どう思う?」
「先生ぇ、わたししゃ、いろんな人を見てきた、
と言ったがね、ここは見ないからね。
でも、親戚の外科医が見たことあるサイズを聞いてみたが、
ここまではないって言ったぜ。」
「他人事だと思って、言いたい放題ですね。」
「お兄さん、身体も大きいから全裸で立つと、
エロマンガの竿役っスね。
あ。精液カップこれなんで、採ってきてください。」
「おいおい、それはいらないだろう?」
タカミさんが思わずツッコんだ。
俺は受け取った小ぶりのカップを見て言う。
「小田さん、このサイズだと全部入りませんよ。」
「嘘ぉ!
お兄さん、精液過剰症っスか?
ホントにエロマンガの竿役じゃないっスか!
もし、射精時に痛みとか不快感がある場合は、
お医者に行ってくださいっス!」
「すこし疲れるだけです。
お医者にも問題ないって言われました。」
「……報告書通り過ぎだった。」
チーフが肩を落として呟いた。
「あ。チーフ!
これでもあの鎧、お兄さんで入るんっスか?」
「……誠に申し訳ありませんが、装着は難しいかと。」
チーフの言葉にスーツの三人がまたあわてふためく。
「あの! これは、あくまでお試しですから!」
「いや、提出したサイズ通り作ってもらえないなんて、
服屋以下じゃないですか。
私の知ってる腕の良いテーラーの方が、
涼治君にビジネススーツのスポンサーに欲しいって言ってたんで、
そっちに乗り変えましょう。」
おじさんの一言で三人はチーフを睨む。
チーフはそばにいた白衣の一人に怒鳴り散らしていた。
あれは完全にパワハラだな。
自分の失敗を部下に擦り付けて怒鳴り散らすとか、
最低だ。
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