閑話“窮地”

「君には期待しているんだ。

だが、社の財産である研究資料を勝手に廃棄したのは、

いただけない。」

「ですがっ!

手順はちゃんと社のものにそって、

キチンと廃棄いたしました。

漏洩はありません。

付け加えるなら、あんなもの資料と呼べません!」

「だから、と言っても廃棄したせいで例のスーツの情報が

小田さんの頭の中にしかないのは大問題だよ。」

「そ、それはっ……。」

「君にあのスーツと同じかそれ以上のものが作れるなら、

良いのだがね。」

「もっと良いものが、用意できます!」

「それが彼の要望と一致しなければ、

意味がないんだよ。」

「……っ。」

「この前見せてくれたフルプレートのアーマーは、

とても良いものだと思うよ。

だが、ユーザーが求めていない。

私は元々営業だったから言うが、

客が求めていないものを売るのは、

営業とは言わない。

押し売りや詐偽だ。」

「……。」

「君もチーフになるくらいなら、

言わなくてもわかるだろう?

君が作りたいものと、

社が受注したものが一致しないこともある。

研究費用を会社が出している限り、

受注にしたがってもらうからね。」

「……はい。」


……。


「俺は、認めない。

絶対にあんな、ママゴトは認めない……!」

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