第14話 世の理
「もー、やってらんないっス!
せーっかくお兄さんのお陰で外回りから
研究所に戻ったのに、毎日問い合わせが殺到っス!
研究が進まないこと、カタツムリの如くっス!
外回りより、下手するとキツいっス!」
小田さんの第一声がこれだった。
よっぽど溜まってるのか、声量がすごい大きい。
「毎日、毎日、毎日っ、毎日ーっ!
資料を出せって言うから出したのに、
足りないってなんっスか?!
個人情報と報告書は別資料っス!
自分で探せって話っス!
こちとら、貴様らの小間使いじゃねーっス!」
ヒートアップしていく小田さんの話を、
俺はただ聞くに徹する。
「個人情報を誰も整理管理してなくて、
契約解除した過去のテスターが混ざってて見つからない?
知らんってぇーのーっス!
管理部門へ問い合わせろっス!」
電話を取るまでは、
俺のせいで迷惑をかけているのだと思ってたが、
どうやら違うらしい。
「こう言うのは女性に頼むものだよー、だぁ?!
ざっけんっなってぇーのーっスー!
お茶にTS薬入れて飲ませんぞ、ゴラァ!
女性社員が少ないのは、こー言うとこが原因だぞ、
人事部ぅ!」
こう言う話を聞いてしまうと、
ハンターしててよかったと思ってしまう。
働くことより人間関係が、俺には無理だ。
「極めつけは、
お兄さんにちゃんと連絡したか確認のために
通話内容を社内放送で流すね、だぁ?!
バカも! 休み休み! 言えってぇーのーっスー!」
「小田さん、ちょっと待った。
今の話、全部社内に流れてるのでは?」
俺はさすがに口を挟んだ。
「あーはっはっはっ!
そーっス! 絶賛生放送中っス!
もぉ、知らねーっス!
役員も、外からの客も、皆聞いてるかーい?!
へーい! コール! アンド! レスポーンっス!」
「……お疲れ様です。」
「後で藤堂弁護士にもチクるっスよー!
どーなっても、もー知らねーっス!
あーはっはっはっ!
真横に居る所長が真っ青な顔してるっス!
いー気味っス!」
「……小田さん、
クビになったら私もテスター辞めるんで、
うちで個人研究しませんか?
施設とか用意するのに時間はかかりますが、
小田さんの要望を聞いて用意しますよ。」
「おおっとぉ?!
予想外にあたしがお兄さんにスカウトされてるっスか?
いーっスねー! 逆スポンサー!」
「結構マジな話です。
スポンサーに契約変更するくらいなら
辞めるつもりでしたし。
辞めたら小田さんの“破れない装備”については、
個人で出資して研究して貰うつもりでした。」
これは以前からおじさんとも相談していた。
俺にとっては身体に合わせて伸縮するスーツは貴重だ。
他社のカタログを見ても、鎧か防護服しかない。
東野技研のスーツはかなり異端だ。
でも、需要は確実に一定数ある。
だから、小田さんみたいな研究ができていたと思う。
「流出動画見たっスけど、
ありゃそーなりますよねー。
そうだ! 聞いて欲しいっス!
あの、チーフの野郎、お兄さんをスポンサーにして、
自分が作った鎧着せようとしてんっス!
それが、もー、バカみたいなんっス!
流出動画をチラッとみただけなのか、
研究者として観察眼が足りないのか。
それより何より、ちゃんと調べずいたのか。
腰から腕が二本生えたフルプレートメイル作って、
これで完璧、っとか。
バカみたいなドヤフェイスかましてんっスよ?!
もー、お腹抱えて笑ったっス!
お兄さん、腕とか足とか状況に応じて
いろんな所から生やしたり、伸ばしてるのに、
腰にだけ、しかも腕だけっスよ?
バカじゃないっスか?!」
「私のスキルについて、間違えてないんですが、
何でどこからも生えるのを知ってるんです?
私、自分のスキルについては
報告書にも書いてませんよ?」
動画が流出して以降、
俺のスキルについては明言はせず
他人に考察されるまま受け入れている。
皆、本来のスキルから遠い考察をしているが、
小田さんはかなり核心に近い。
「そりゃ、古い方のスーツを調べて、
伸縮した形跡を見ればわかるっスよ。
備え付けのガントレットとブーツに
内部からの膨張による変形がないんで、
スキルは身体強化じゃなくて、変体とか変身っスよね?
あたしの書いた報告書には書いてるんっスけど、
どーやらチーフは見てないみたいっス。」
この人の能力は凄い。
ただ、今話してほしくはなかった。
せめて、社内に流れてない普通の通話で話してほしかった。
こう言うところは問題ありだが、
俺は小田さんは凄いことを再確認した。
「あたしの目標を考えても、
お兄さんのスキルはとても魅力的っス!
どんな姿でも対応できるスーツの動作確認に、
ぜーったい協力して貰いたいっス。
でも、会社的にはチーフの政策で進めたいみたいなんで、
独立して逆スポンサーの方が夢があるっス!」
「では、独立しますか?」
「もちろんっス!
あれ? 所長、いつの間にチーフ呼んだっスか?
んん? 人事部の人っスね?
なんか、いつの間にか偉い人いっぱい来てるっス。」
「小田さんがさっきコール・アンド・レスポンスとか、
言ってたからでは?」
「言ってたッスねー。
もー、どーでもいーっス!
ここ、辞めますっス!
お世話になったっス!
ただし、チーフ。てめぇはダメだ。
外回りさせられてた間に、
あたしの研究資料を勝手に片っ端から廃棄しやがって。
ふざけんなっス!
ぁあ?! ちょっと! 電話を切らないで!
受話器返すっス!
あぁ?! あー!」
ガチャッ!
……ツー、ツー、ツー、ツー……。
俺は呆れながらスマホのメッセージで
顛末をおじさんへ報告した。
すると、すぐにおじさんから電話がかかってきた。
「もしもし、櫻葉です。
どうかしましたか?」
「あ、藤堂弁護士事務所です。
あのね、なんかもう一回小田さんから
電話がかかってきたんだよ。
今度はおじさんも一緒に通話するから、
ちょっとだけいいかな?」
「えぇ。通話相手が小田さんなら構いませんよ。」
おじさんはおっけー、と言って電話をつなげ直した。
「はい、櫻葉です。
小田さん、何かありましたか?」
「えーっとぉ……。
あー、この度はぁ、ますます? つねづね?
……ここ、なんて読むんっスか?」
出だしからとても不安になる。
台本が用意されているのだろうか、
小田さんは棒読みな話し方になっている。
「……小田さん?」
「あぁ。ちょい待つっス。
えっとぉ、つきましては、
スポンサー契約への変更について、
今一度ご再考いただきたく存じます。
つきましてはぁ、
本社研究所の試験室へ来ていただき、
わが社の提供可能な装備を直に確認して貰えないかと、
か……? ぐ?
ぁぁ、ぐこう? するものです。
え? ぐこう、じゃないんっスか?
もー、知らねーっスよぉ……。」
「せめて、フリガナか何か用意しましょうよ。」
「いや、これカンペっスよ。
スケブに殴り書きされてるんっス。
もっとちゃんと台本をようい……。え?
もー!
なんで五人で別々のカンペ出しくるんっスか?!
そんなん、聖徳太子でも読めねーっスよ!」
大分ぐだぐだだ。
俺は小さくため息をついた。
「小田さん、退職はできましたか?」
「そーっスよ。聞いて欲しいっス。
さっき人事の偉い人も来たから、
退職届出そうとしたら、
ソイツ自分で自分の顔ぶん殴って失神しやがったんっスよ!
他の人事の人も皆、
あたしの退職届見たら自分で自分の顔ぶん殴って眠っていくっス!
もう、ホラーっスよ!」
そんな退職の引き留め方があるのか。
俺は少し戦慄してしまった。
社会人、恐るべし。
「弁護士と言う職業柄、
今までいろんなケースの退職届受け取り拒否を聞いてるけど、そんなケース始めて聞いた。」
「あ! 藤堂弁護士!
助けて欲しいっスー。」
「まぁまぁ、小田さん。後で聞きますよ。」
「そうだったっス。
なんか、
偉い人はお兄さんを本社につれてきて
欲しいみたいなんっスよ。
装備を見て欲しい、とか言ってるんっスけど。
お兄さんの腕力だと武器は握ったら木っ端微塵に砕けるし、
防具も今の以外だとスキルを使ったとたんお釈迦っスよ。」
小田さんの見立ては正しい。
俺はガーネットと怪我の後に買ったこん棒を、
バフを使って振るとどうなるか試してみた。
グリップを握った瞬間、
豆腐を握りつぶしたような感触がした。
見てみると、グリップが砕け散っていた。
仕方なく徒手空拳に切り替えているが、
素手の戦闘にこだわりはない。
壊れないなら武器も欲しい。
「小田さんの言う通りです。
私が振って破損しない武器なら、
喜んで購入しますが。
ドロップアイテムではない、
通常の武具では難しいと思いますよ。」
「東野技研で扱ってる素材は、主に合成樹脂っス。
金属並みの固さで細かい加工ができるようにするのが、
目標っス。
あたしの作ってるスーツは、
普通の繊維にダンジョン仕様の合成樹脂を染み込ませたり、
合成樹脂を糸状にして合成繊維にしたりしてるっス。
武器は門外漢っスけど、
なんとなくお兄さんならでっけぇ右腕ガントレット
ってイメージっスねー。」
「その場合、ロングコートがいるねぇ。
おじさん、良い仕立て屋さん知ってるよ。」
「私としては、
ロングコートなら帽子と蜘蛛マスクがいいですね。」
「会話が渋いっスね。
あ、脱線するな、ってカンペでてるっス。
とりあえず、どーするんっスか?」
俺としては異世界探索者管理委員からの身柄拘束とは少し違う毛色だと感じるが、
おじさんに聞くにしても少し時間が欲しい。
そう考えていると、
おじさんが話し出した。
「東野技研さんの社の意向で、
涼治君をそっちに呼びたい。
研究所だと、私の記憶ではN県にあるものかな?
理由は涼治君に、
テスターからスポンサーに契約を変更して欲しい。
その判断材料として、
涼治君に貴社の取り扱ってる商品を見て貰いたい。
まとめると、こんな感じかな?」
これはもうお任せしよう。
俺は傍聴に徹する。
「カンペにその通りって書かれたんで、
そうだと思うっス。
ちなみに、あたしの研究所は別のところなんで、
どーでもいーっス。
出張費もでないんで、
お兄さんが来てもあたしはいない……。
え? 来い?
今日研究所に来たのも自費っス!
もうお金ないっス!
ビジホにすら、泊まれないっス!
研究もチーフが資料全部廃棄しやがったから、
止まってるんっス!
頭の中のデータを早く書き出したいから、
この後は鈍行であたしの研究所に帰るっスよ!」
社会人は恐ろしい。
俺にはモンスターと切った張ったしている方がいい。
小田さんを見ていると、つくづくそう思う。
「まぁまぁ、その辺は後でにして。
とりあえず、
現在涼治君のあの時の怪我は命には別状ない状態です。
ただ、まだ長距離の外出は難しい。
小田さんの研究所って、こっちの近くですよね?」
「そっス。
山ん中っスけど、お兄さんのお宅と同じG県っスよ。」
「それでは、そっちに伺いますよ。
もちろん、私と彼の後見人も同行します。」
「おぉ、いいっスね!
それなら、スーツを持ってきて欲しいっス!
あのスゲーパンチの後、
どんな風になってるか見たいんっス!
あ! 住所送るっス!
え? ……ん? 困る?
カンペは、もー知らねーっス。」
小田さんが高笑いしている。
おじさんが行けると言うなら、何か案があるのだろう。
殴ってなんとかなるなら俺でもできるが、
それ以外は全くわからない。
おじさんがその部分を対応してくれるのは、
べらぼうに助かっている。
諸々はおじさんに任せて、
後日小田さんの研究所にお邪魔することになった。
●
小田さんとの電話の翌日、
テレビのニュースがやっとダンジョン災害の特集を止め、
新しいニュースが流れた。
「これ、藤堂弁護士の仕業ですよね。」
「確証はないけど、
多分裏で手を引いてるのはおじさんだろう。」
俺はガーネットと朝食を食べながら
テレビを眺めている。
流れているのは治験の補助金問題についてだ。
人命を金に替える非情で外道な医師会、と
銘打たれた特集が放送されている。
制度発足当初からあえて見逃されていたが、
とうとう問題になった。
ただ、そのきっかけは俺だったのが少し引っ掛かる。
ダンジョン災害時に戦闘を行ったハンター(俺)が
救急車に乗車拒否した。
その理由が病院へ緊急搬送されたハンターの異様な死亡率だ、と
ニュースに取り上げられたのが発端らしい。
国連とWHOから
本来の治験の意味が失われている、と強く抗議され
日本政府は大わらわ。
異界探索者管理委員は委員長である国連の議長から
調査、是正を直接指示されたそうだ。
この前おじさんが、委員会は放っておいていい、と
言っていた理由はこれか。
更に日本医師会が身構える前に過去の治験による死亡、後遺症について、
遺族、家族が集団訴訟を起こした。
この弁護団の中におじさんの名前はないが、
確実に一枚噛んでいると見て間違いない。
この訴訟、医師会だけでなく対応した医師全員と国も会わせて相手取っている。
二十年近く前の対応医師も名簿にあるらしいのだが、
一体どこから仕入れたのか。
海外でも国と医師会の癒着、裏献金と囃し立てられ、
日本政府は蜂の巣をひっくり返してパンツに入れたようになっている。
「おじさんの笑い声が聞こえる気がする。」
「奇遇ですね。
ガーネットにはあの方の高笑いが聞こえます。」
「テレビや報道が一斉に国と医師会を
叩いているのも不自然だ。」
「この前のアルジ様を生放送した件を
あの方が利用したものと愚考します。」
映っていたのは一瞬で、
しかも放送はそれきりされていないが、
テレビには頭がスライムの俺がアップで写し出されていた。
例のスライムヘッドの噂も、
あれ以降噂の内容がガラリと変わったと聞く。
曰く、ダンジョンの異変を誰にも知られず鎮圧した。
曰く、ダンジョンの守護神。
いくらかの事実も巻き込まれていて、正直むず痒い。
「東野技研の株がべらぼうに高騰している。」
「技研の経営者たちは、
アルジ様にテスターからスポンサーに
契約変更して欲しいでしょうね。」
株のニュースは東野技研についてだった。
俺と言う豊作の青田を買った、先見の明があったなど、
持ち上げられている。
これは小田さんかそのチーフが
調子に乗るか追い詰められて、
自分に人体実験しそうだ。
実験が失敗して暴走すれば、
よくあるヴィランの出来上がりだ。
「小田さんに早く退職して貰おう。」
「アルジ様。
その場合、私の事は小田様へ包み隠さずお伝えください。
この前のムカデやらトンボやらの死体が
大量にボックスに入っているので、
処分の意味もかねて研究材料として提供したいです。」
「魔法についても頼めるなら研究対象にして貰おうか。
ガーネットの負担が少しでも軽減されるなら御の字だ。」
食後、
改めてガーネットに“鑑定魔法”を俺にかけてもらった。
レベルは変わらず、スキルも変化無し。
実はダンジョン災害の前に銀色のスライムを
改めて討伐している。
問題なく倒せたが、レベルが上がらなかった。
ガーネットと実験と考察した。
銀色のスライムを倒すと、
“レベルが一つ上がる”のではなく
“レベルが上がるほど何かを得ている”と仮定する。
ゲームで言う経験値のようなもの。
数値化できず目にも見えないが、
モンスターの討伐でのみ得られるとする。
その値が一定値になるとレベルが上がる。
銀色のスライムはこの値がたくさん得られる。
だから、レベルがあがっていた。
だが、レベルが上がるほど
次のレベルアップで要求される経験値が多くなる。
レベル5以上は銀色のスライムの経験値量では足りない、
と言う具合だ。
なんの確証もない、経験則からくる考察だが、
納得がいく。
しかし、ガーネットに多種の検知、鑑定を行ってもらったが、
ついぞ“経験値”を観測することはできなかった。
ガーネットのスキルは変化があった。
その名は“賢者II”。
俺の触手と同じくスキルがレベルアップすると、
ローマ数字で表記されるみたいだ。
消費魔力が減り、魔法の発動がスムーズになったらしい。
レベル5になったときには変化がなかったが、
ダンジョン災害時に変化のきっかけがあったと見ている。
レベルアップ以外でのスキルの変化は非常に興味深い。
だが、ガーネットにもきっかけが分からなかったと言う。
戦闘でそれどころではなかった、とも、
戦闘自体がきっかけになった、とも考えられる。
どっちにせよ、
“考える専門の人”が必要になってきたと俺は感じている。
小田さんにその役目を頼みたいと考えているが、
どこまで信用して、どこまで巻き込むか悩むところだ。
「鑑定時に違和感があると思います。
これは、アルジ様が私と同レベルか、私より上のレベルなので感じる違和感です。
鑑定を発動した人と受けた人のレベルが同じかそれ以上だと、
受けた鑑定魔法を拒絶できるので、
もし、嫌なら拒絶してください。」
「このうなじを指でなぞられるみたいな感じか?
拒絶しないよ。
気になるのは、スキルも同じことができるかどうかかな。」
「そうですね。
辻斬り的に鑑定されても、拒絶できるといいですよね。
それも踏まえて、拒絶する練習をしてみましょうか。
今から無動作で鑑定魔法を発動するので、
拒絶してみてください。」
俺はふと、ガーネットを見やると、
こちらを見つめる大きな赤い瞳に吸い込まれそうになる。
彼女も知識が増えてきて、
人間生活は問題なくできているが、
どうにも感性は人間のものと異なるようだ。
三大欲求に対して、かなりオープンで素直である。
最近、夕飯のメニューをリクエストするように、
ベッドへ誘われる。
一応発情期等があるのか聞くと、
特にないとのこと。
理由を聞くと、
外出できない俺を気遣ってくれてのものらしい。
ありがたいと思う反面、
物理的に無理だと思うので丁寧にお断りした。
ガーネットの股間部から首の付け根までが約30センチ。
俺のこれも約30センチ。
何度考えても、無理だ。
彼女をこうしてみていると、とても愛らしい顔だ。
緑の肌は艶やかで張りが見てとれる。
大きく尖った耳は、
ピコピコ動いてこちらを注意深く探っている。
身体のサイズこそ小さいが、
各パーツはしっかり成人の女性のもの。
大きな胸、くびれた腰回り。
臀部も丸くスモモのよう。
足は長さは短いが、
バランスがよく脚線美と言っても過言じゃない。
手は小さく、華奢だが綺麗だ。
初めて彼女が家に来たときは、
肌も手指も荒れ果ててボロボロだった。
回復魔法で全部回復したと言っていた。
「あのっ……。
アルジ様……、
そんなに見つめられると恥ずかしいです……。」
「……どうしろと?」
ガーネットは顔を耳の先まで赤くして言う。
本当にどうしろというのか。
とりあえず、何度かテストしてみた。
拒絶した場合、鑑定を受けた側は違和感が消える。
鑑定した方は拒絶されたと分かるそうだ。
拒絶のタイミングは、
鑑定している間ならいつでもできるが、
遅いと途中まで読まれることが分かった。
「よし。
これで外出したときに鑑定されても拒絶できそうだ。」
「鑑定をした相手がアルジ様より高レベルだと拒絶できないので、ご注意ください。」
「レベル5以上は国内のハンターの約3%しかいない。
鑑定スキル持ちは約1%だ。
俺より高いレベルの鑑定スキル持ちはそういない。」
「ハンターが相手なら確かにそうですが、
私のようにモンスターで鑑定する場合も想定した方がいいかもしれません。
自分で言うのも何ですが、
イレギュラーなモンスターはどこにいてもおかしくないと感じます。」
確かに、ガーネットの言う通りかもしれない。
ただ、そうそうイレギュラーに出会うことはないと
思いたい。
そう思いたいが、
ここのところ色んなイレギュラーに
巻き込まれている自覚がある。
「その時は運がなかった、と思うよ。」
「いいえ。
この、ガーネットが微力ながらお助けします。
魔法防御のバリアとか効果があると思うので。」
胸を張って答える彼女を見て、
家族とはこう言うものなのか、と考えてしまった。
まぁ、悪くない感じだ。
俺はガーネットの頭を優しく撫でた。
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