第10話 大人達の生活
始業式。
講堂に集められた全校生徒に
校長が挨拶をしている。
際壇上で話し出したのは、
想定通り行方不明になったハンターたちの話だ。
そもそも、この校長を含めて教員全員が
ハンターに良い印象を持っていない。
その癖、行方不明者や死者が出たときだけ、
この様に大きく取り上げる。
そうすることでハンターになる生徒を抑止しているのだろうが、
演説の端々に嫌悪感が出ているので台無しだ。
校長は確か50代後半だった。
他の教員も年配が多い。
だから、ハンターに嫌悪感を
持っているのかもしれない。
ダンジョンが突然出現して、
対策もなにもない黎明期と呼ばれる頃の話。
モンスターへの対応すらできず、
各国はダンジョンを封鎖することが精一杯だった。
そんな中、突破口を開いたのは英雄でも軍人でも、
ましてや研究者でもなかった。
日本の迷惑系動画配信者。
彼らは三人で封鎖されていたダンジョンへ侵入し、
インターネットで生放送を始めた。
彼らの内、一人がおもむろに落ちている石を拾って
スライムへ投げつけたのが全ての始まりだった。
国の重要施設や重要文化財へ石を投げ続けていた
彼の肩はなかなかに強力で、
スライムは石に当たると弾けて死んだ。
そう、軍隊が総攻撃しても倒せなかったモンスターを、
この男は倒してしまったのだ。
各国は整然として、
一斉に日本へ彼らの拘束を待つよう圧力をかけた。
そのお陰で、
自衛隊はダンジョンの前で立ち往生してしまう。
これが地獄の始まりだった。
三人は愚かだが、頭が良かった。
モンスターを討伐して、
ステータスが現れることを気づいた彼らは
全員でスライムを狩り出した。
スライムの死体が消えた後の謎の宝石も、
しっかり拾う。
今では当たり前になっているほとんどは、
この時のダンジョン生放送から判明した事実だった。
ダンジョンから出た三人は、
他国からの圧力もあり、丁寧に保護された。
だが、三人はダンジョンの中のことを
詳しく語らなかった。
その後すぐに、
彼らの拾った宝石は未知のエネルギー物質だと判明した。
日本政府は彼らにモンスターの討伐方法を聞き出そうとしたが、
彼らは拒否した。
その代わりに、自分達がダンジョンへ潜って調査する、
と提案した。
政府は甘かった。
自衛隊を彼らに同伴させれば、
自衛隊も討伐方法に気づくと考え、
その提案を飲んだ。
だが、同伴者は皆モンスターに殺害された。
生還するのは彼らだけだった。
いつの間にか、
彼らは自分達を“勇者”と呼ぶようになった。
“勇者”達は自分達の活躍を勝手に公開した。
モンスターと対峙できるのは自分達だけだと
全世界へ発信した。
当時、ダンジョンと言う未知の現象に恐怖していた
日本国民は、その情報に食いついた。
同伴した自衛隊員が誰も生還していない事実もあり、
日本国民は“勇者”達を祭り上げた。
“勇者”達はそこから、好き放題やり始める。
彼らは殺人、窃盗、強姦も含めた、
ありとあらゆる罪を犯した。
しかし、日本政府は
他国から魔石を輸出するようかけられた圧力に負け、
魔石を採れる彼らの罪を問えなかった。
時の日本政府は焦った。
ダンジョンの情報を、
何としても彼等から聞き取らなければならない。
しかし、彼らはどんどん強くなっていく。
とうとう“スキル”と言う超常の力を得た彼らを、
暴力では押さえられなくなった。
しかも、彼らは仲間を厳選して増やした。
男女問わず、“勇者”に賛同、同調した13人にだけ、
ダンジョンの情報が明かされた。
世界初の“クラン”の誕生だった。
彼等、16人は大暴れする。
モンスターを駆除し、次世代の超エネルギー物質を採取できるのは世界でこの16人だけだった。
政府も誰も彼らに逆らうことができず、
されるがままに犯され、壊され、奪われる。
他国は当初こそ他人事だったが、
“スキル”を確認してから態度が急変する。
“勇者”の一人が、
無差別に大量殺戮できるスキルを取得してしまったのだ。
その名も“エナジードレイン”。
生き物に限らず、周囲のエネルギーを全て吸収して、
自由に放出するこの力は核より恐ろしいものだった。
近くの生き物は瞬く間にミイラのように干からび、
手をかざした先から光線を放つ姿はもう人間とは呼べなかった。
だが、既に得てしまったスキルを奪う術がなく。
ダンジョンに関する情報も得られず。
日本を含めた全世界は
彼らを傍観することしかできなかった。
“勇者”達は25年間、この世の春を謳歌した。
当時の日本は地獄そのものだったと言われている。
校長達は恐らく、その時代を生きていた。
もしかすると、親族や親しい人間が
“勇者”の毒牙にかかっているのかも知れない。
そう考えれば、この嫌悪はまだおとなしい方なのか。
思考している内に、校長の話が終わった。
教室に戻ると、
いくつかの机に花瓶が供えられていた。
それを余所目に、俺は自分の席へ向かう。
席にはいつものキャリーバッグが置いてあった。
あの日二度目の回復魔法を受けてから、
今日までずっとスライム討伐で調整を行っていた。
後、ガーネットのバフを付与して貰った状態での
訓練も入念に行った。
ガーネットは使える魔法を色々試して、
とうとう幻覚を見せて自分の姿を消す方法を編み出した。
移動も空中浮遊でできるようになり、
今では触手のハーネスなしで俺に随伴できるまでになっている。
おまけで、小田さんに分厚いレポートを出したら、
とんでもなく感謝された。
今日は封鎖されていたダンジョンが再開する。
放課後、
あのダンジョンの下階層へチャレンジする予定だ。
放課後に一旦家に帰ると時間がもったいないので、
装備や道具を積めたキャリーバッグを持って
学校へ来ている。
終わったらダンジョンへ直行だ。
「集会、ひどかったな。」
「校長も教頭もまだましだと思うがな。」
藤堂が俺に話しかけてきた。
「実際ダンジョンの近くにも行ったけど、
そんなひどいように見えなかったけどな。」
「見るだけじゃぁな。
実情はもっとひどいぞ。
多額債務者がヤバい所で金を借りる。
そこでも返せないと金貸しから
ハンターになるよう斡旋される。
更に、金貸しからクランを紹介される。
そのクランは病院と繋がっていて、
債務者は何も知らず治験の仕事をさせれられる。
債務者は国によって合法的に“現金化”される。」
「……マジで?」
俺は追い討ちをかけるように続ける。
「新人ばかり入れるクランは、
敢えて“勇者症候群”になるよう新人を扇動する。
選ばれし者である君たちならできる、とか言って
未到達エリアへ引き連れて行く。
現地でモンスターに襲われたら、
先導の先輩ハンターがいつの間にかいなくなって、
新人同士でなんとかくぐり抜けようとして全滅。
先導ハンターは少し離れたところで隠れていて、
魔石やドロップアイテムだけじゃなく、
新人の装備も死体から剥ぎ取って逃げる。
貸し更衣室とか、
ロッカーに入れていた私物も回収して、
まとめて売り払う。」
「……マジでか。それ。」
「扇動してても危険な階層だとちゃんと説明して、
きっちり誓約書も書いてダンジョンに行くから、
合法的に強盗できてしまう。」
「……もし、新人が生き残ったら?」
「さすが、選ばれし者達だ、とか言ってごまかして、
未踏破地域の情報を他のハンターへ売って儲ける。
新人は自信がついて、“勇者症候群”が悪化し、
次の未踏破地域に行く。
まぁ、すぐ死ぬな、そんなヤツ。」
藤堂は青い顔で言葉を失う。
「控えめに言って、校長の話は序の口も良いところだ。
社会の掃き溜めじゃ、言葉が足りない。
全て合法的な分、尚更救いがない。」
「ハンターやってるお前が言うのかよ。」
「やってるから知ってる。
だから、俺はずっとソロで活動してんだよ。」
藤堂が大きなため息をついた。
そこに、校内放送が飛び込んだ。
呼ばれているのは俺だった。
「授業始まるのに呼び出しか。
しかも、職員室じゃなくて校長室に。
何だろうな。」
「タイミングとしては、ろくなことじゃないだろ。」
「父さんに連絡する?」
「念のため、いつでも電話に出られるように
待機しておいて欲しい、と伝えてくれ。」
「オッケー。」
藤堂に礼を言って俺は席を立った。
教室は三階で校舎の端にある。
校長室は一階なので、面倒くさい距離だ。
校長室についた。
携帯のボイスレコーダーを起動して胸ポケットへ入れる。
ノックして入室すると、校長と教頭だけじゃなかった。
教育指導の体育教師と見知らぬ男女がソファーに座っていた。
男女のどちらも初老と言った風貌だ。
体育教師が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
体育教師はガタイは良いが、
そんなに大きな人じゃない。
俺の側に来るとかなりの体格差なので、
大人と子供に見える。
「よし! 奥まで入れ!」
この教師、体育担当と言うこともあり声がでかい。
しかも、どうやら俺を少し怖がっている節がある。
いつも俺に近寄る時に目が泳いでいる。
この大声もわざわざ近寄ってくるのも
怯えているのを隠すためだと思われる。
チワワが威嚇してる感じに思えて、
かなりかわいそうだ。
俺は部屋の奥へ入るが、
ソファーには座らず校長と教頭の前に立った。
俺が近寄ったからだろう、
先にソファーに座っていた二人が小さな悲鳴を上げた。
「櫻葉君、授業中呼び出してすまんな。
君に急ぎ話があってな。」
校長はそう言って自席に腰かけた。
「君は今現在、
ハンターとしてダンジョンに挑んでいる、
と聞いているが。
本当かな?」
「はい。」
俺は短く返した。
案の定、ろくなことじゃない雰囲気だ。
「今朝の集会の時に私が話した行方不明の生徒について、
君は同じクラスだったね?」
「教室に戻った際、
いくつかの席に花瓶が供えられていたので知りました。」
「……では、こちらのお二人について。
この方々は、行方不明の鬼塚君のご両親だ。」
俺が一別すると、二人は何故か睨み付けてきた。
「はじめまして。」
俺がそう挨拶してもこの二人は無視して睨み続ける。
「初対面だと思うのですが。」
「うるさい!
校長先生の話を聞け!」
体育教師が叫ぶ。
うるさい。真横で叫んでくれるな。
聞こえてる。
どうやら会話の主導権を俺に握られたくないらしい。
ますます胡散臭い。
「……君は行方不明の生徒がいることについて、
どう思う?」
何となく俺になにか言わせたい台詞があるようだと
察した。
べらぼうに面倒くさい。
「どう、とは具体的になんでしょうか?」
「口答えするな!
聞かれた通り、答えろ!」
体育教師よ、怒鳴るならもっとしゃんとして欲しい。
怯えながら叫ばれると、
何もしていないのに俺が何かしたように思えてくる。
過去虐待を受けていた手前、
人の大声には敏感な方だと思うが、
同じくらい人の怯えている気配にも敏感になっている。
そのせいだろう、怯えを必死に圧し殺して
大声でわめき続ける体育教師に哀れみしか感じない。
罵詈雑言叩きつけているのは体育教師なのに、
俺が虐めているような図だ。
彼の声はもう声が裏返っている。
厳めしい顔をしているのに、悲壮感がにじみ出ている。
思わずため息が漏れた。
「まぁまぁ、その辺で。」
「し、しかし、校長先生……。」
「櫻葉君、落ち着いて聞いて欲しい。
ハンターの君に説明するのは野暮かもしれないが、
今回行方不明の6名は
問題が起きたダンジョンで行方不明になっている。
そのため、ダンジョンが一時封鎖されて、
彼らの捜索をすぐにできなかった。
それで……。」
「なるほど、捜索依頼ですか。」
「バカやろう!
そんな金のことばかりいうやつがあるか!」
金なんて一言も言ってねぇよ。
ツッこむ間もなく体育教師が叫び出す。
でも、そのお陰で目的が見えてきた。
こいつら、俺にタダで捜索させるつもりだな。
行方不明者の捜索を依頼することは結構ある。
個人、クラン問わずそういう依頼はかなり面倒だ。
生きていればいいが、ダンジョン内では奇跡に等しい。
死んでいた場合、遺物がなにか残っていればいい方。
死体が丸々残っていれば御の字だ。
大体は何もかもダンジョンに食われて消える。
そのため、命がけでダンジョンへ捜索しに行く割に、
成果が目に見えてでない。
成果がないと依頼失敗、となると
ハンターが捜索依頼を受けなくなる。
なので、捜索依頼の場合は成果と報酬について
事前に細かく決める必要がある。
更に言えば、この件はもうかなり時間が経っている。
生存の見込みも、何か残っている確率も極めて低い。
そんな捜索依頼を受けるハンターは誰もいない。
ソファーに座ったままの二人はニヤニヤしている。
怒鳴って圧をかければ、
学生なら従うと思っているのか。
それをするなら、俺は不適切だと思うぞ。
210センチの身長相手に物理的に下から怒鳴っても
圧はかからない。
更に言えば、いや、言いたくないが、
それなりに修羅場は経験している。
俺を相手に恫喝したいなら、
もっとでかいヤツが5人は必要だ。
でも、俺を狙う理由はもう一つあるのだろう。
家庭環境。
親無し、根無しなら、頼る大人がいない。
それも加味しているのだろう。
教育者が聞いて呆れる。
「これだからハンターは!
友人が行方不明なんだぞ!?
心が痛まないのか!?」
「友人ではないです。
知らない人なので、
圧倒的に自分の身がかわいいですね。」
「バカやろう!」
「バカ? 自分の命をかけるんですよ?
安請け合いする方がどうかしています。」
「お前には人の心がないのか!?
大体、お前は……。」
話続ける体育教師。
これは埒が明かない。
俺はため息をついて肩をすくめる。
こいつら、契約をせず請け負わせて俺を使い潰す気だ。
その結果俺が死んでも、
学校に在籍しているハンターが減るからよし。
死ななくても遺族に学校が行動したと主張できる。
前例もできるので、
次以降似た事例が起きたら大っぴらに生け贄を探せる。
遺族もタダで捜索させることができる。
なるほど、お前らに利点しかない。
俺は声を張って言う。
「ハンターとしての依頼であれば、
専属弁護士がいるので、そちらと交渉してください。」
「せ、専属弁護士?」
体育教師が怯んだ一瞬をみて、
俺は携帯を取り出しショートカット登録している
電話番号へ電話をかけた。
おじさんはワンコールで出てくれた。
すぐに音声をスピーカに切り替える。
「はい。こちら藤堂弁護士事務所。
お仕事の話だね、涼治君。」
「えぇ。よろしくお願いします。」
ソファーに座った男女がしきりに校長と教頭を見る。
体育教師も冷や汗を流して黙ってしまった。
校長と教頭がなにか目配せをする。
「校長先生、教頭先生、
息子の健治がいつもお世話になってます。
それはそうと、
ハンター櫻葉涼治君へのお仕事の話ですね。
どのようなご依頼でしょうか?」
「さっきまでボイスレコーダーで話を録音していたので、それを流しますよ。」
俺がそういうと校長と教頭の顔色が変わる。
体育教師が青い顔で震え始めた。
息子がここに通っているのだから、
藤堂弁護士の名前は知ってて当然だろう。
俺は携帯のアプリで先ほどまで録音していた
会話を再生した。
当たり前だが、体育教師の怒号も含めて再生される。
「依頼主とか以前に、
大人として子どもに訳もなく怒鳴り付けるのは
問題があると思いますよ?
校長先生。」
「彼は体育を受け持っているので、
声が大きいだけですよ。」
「その割に私にはとても静かですね。
まぁ、いいでしょう。
捜索依頼なら、
報酬は一週間で一人頭一千万円。
6名なので、六千万円でお受けしましょう。
もちろん、先払い、一括現金払いです。」
「ちょ! そんな大金払えません!」
ソファーに座っていた女性が声を上げた。
「何をおっしゃる。
櫻葉涼治君は企業と契約するほどのハンターです。
むしろ、良心価格ですよ。
ちなみに、“東野技研”様と契約していますので、
信じられないならご自身で問い合わせてください。
更に、この前ハンターに登録したばかりですが、
今日までに数千万円の儲けを出しています。
私は息子の友人だから、
彼についている訳ではありません。
ちゃんと彼の稼ぎで報酬をいただいているので、
専属弁護士としてついています。
以上を踏まえると、
櫻葉涼治君は実績も実力者も折り紙つきのハンター。
本来なら、
一人頭六千万円でもおかしくないですよ?」
おじさんの言葉は嘘ではない。
嘘ではないが、
こういう言い方をすると権威が大きくなるのか。
俺は参考になる、と思いながら成り行きを静観する。
校長も含めて教師陣は冷や汗を流し、
さっきまで座っていた二人は立ち上がって教頭に
話が違う、と詰め寄っている。
「細かい決め事もありますし、
今から私が学校へ伺いましょう。
なに、車で伺いますので、
15分もあればそちらへ着きますから、
少しお茶でも飲んでお待ちください。」
どうと言うことのないおじさんの一言で
場の空気が一変した。
ソファーの男女が帰ると叫び、
体育教師が床に崩れ落ちた。
教頭が校長に詰め寄り、
校長は男女を引き留めようとしている。
「まだ授業があるので、私は教室に戻りますね。」
「あぁ、わかったよ涼治君。」
俺は多分誰も聞いてないが、
電話を切って失礼しました、と
だけ言ってから校長室を出た。
すっかり話し込んだようで、
もうすぐ一限目が終わる。
既に疲れた。
これだから人間相手は嫌だ。
歩いて教室へ戻ったが、
到着したときに丁度チャイムが鳴った。
教室を出る古典教師に挨拶して、
事情を伝えると出席扱いでいいとのこと。
それはありがたい、と俺は頭を下げたが、
古典教師いわく、
今日は抜き打ちテストだったとのこと。
テストの結果をゼロ点で処理する代わりに出席だそうだ。
微妙な扱いに微妙な顔をしてしまった俺を見て、
教頭が苦笑した。
「休み明けで緩んでた気分を締めるためのテストだからな。
まぁ、出席があるだけいいだろ。」
まぁ、その通りか。
納得はしたが、礼を返して欲しい。
古典教師は笑いながら去っていった。
教室に入ると、雰囲気が悪い。
始業式直後のテストだ。
不意打ちにやられたのだろう。
俺は藤堂に近寄って行く。
藤堂は顔こそげんなりしているが、
目は俺を追っている。
「ようぅ……、櫻葉ぁ……どうだった?」
「まず礼を言う。ありがとう。
おじさんのお陰で助かったよ。」
「こっちはテストだった。
ノートはないよ。」
結果は顔を見て察せよ、と言う藤堂。
周囲も似た顔をしているので、ヤバいらしい。
俺は席に戻ってキャリーバッグを確認して、
藤堂へ言う。
「俺は出席でゼロ点扱いだと。」
「うわぁ、それも辛いなー。
ってか、キャリーバッグどうした?」
「おじさん、こっち来るって言ってたから、
いくらか金を渡しとかないとと。」
「お前、タンスの隙間とかに札束隠すのやめろよ?
家主の知らぬ間に札束隠す妖怪じゃん。
税務署が脱税だって言い出しかねねぇんだよ。」
「じゃぁ、受け取ってくれるよう
おじさんにお前から説得してくれよ。」
藤堂が笑った。
つられて俺も笑った。
突然、全てを打ち砕くように轟音と振動が襲いかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます