閑話“末路”
放った矢はまっすぐゴブリンを射抜いた。
二本の矢が突き立てられたゴブリンは血を吐いて倒れる。
「よしっ。やった!」
みんなでガッツポーズをした。
学校が終わったら友達集めてご飯行って、
カラオケ行こうと思っていたのに、
あのトンマのせいでダンジョンに来ることになった。
あの後調べると、
アイツが言うとおりかなりの額の納税が必要だった。
同じクラスの友達五人でパーティーを組んでて良かった。
すぐに集まってダンジョンに行けるのはタイパが最高だ。
足元には無数のゴブリンの死体が散乱している。
ゴブリンは背が低い緑色の肌のモンスターだ。
耳が尖ってて、大きく高い鼻だけど凄いブサイクだ。
ゴブリンは何故かボロボロてお揃いの腰ミノを着けて、
棍棒や錆びたナイフをもってる。
「早く魔石集めて帰ろう。」
ハンターになり、スキルがついたアタシは最高だ。
初めて数日で、
もうベテランと同じペースでゴブリンを狩ることができる。
スキルの話をしたら、有名なクランからも声をかけられた。
キテる。あたしの時代が。
アイツなんか、どっかでの垂れ死ねばいい。
魔石を拾っていると、視界の端で誰かが転んだ。
顔を上げてそちらを見ると、鮮血が吹き上がった。
「え……?」
倒れたゴブリンがナイフを掲げて奇声をあげる。
すると、倒れていた他のゴブリンも各々武器をふるい、
みんな倒れ混んだ。
あたしも不意にすねを殴られ倒れる。
息つく暇もなく囲まれ、ボコボコに殴られた。
痛い!痛い!痛い!
視界に友達の首を切り落とし、掲げて笑うゴブリンが見える。
嘘!嘘!嘘!
助けて!助けて!助けて!
声はでない。喘ぐような呻くような声が口からこぼれるだけ。
全身痛みで動くこともままならない。
息が苦しい。
やっと、わかかった。死ぬんだ。
頭が真っ白になる。
周囲の景色がスローモーションに見える。
視界にあたしを取り囲むゴブリンが見える。
見下して、嗤っていた。
気づきたくないことに気づく。
囲いこんだゴブリン達の汚ならしい腰ミノから
いきり立ったものが飛び出していた。
音が反響して聞こえる。
現実味がやっと自分に到達した。
あたし、なにしてんだろ。
なんで、ダンジョンにいるんだろ。
なんで、こんな怖いことしたんだろ。
服が破けても、反抗する力がでない。
頭からヌルりとしたものが流れているのを感じる。
偶然首が横を向いた。
そこにもう一人の友達がいた。
彼女も服を脱がされ、すでに裸だった。
その目に力はなく。
生きているのか、死んでいるのかわからない。
嫌!嫌!嫌!嫌!
助けて!誰か!助けて!
涙がでた。
助けて!ママ!ママ!ママ!
そして、あたしは主人公ではなく。
助けてくれるヒーローも、いなかった。
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