第5話 ︎︎広域殲滅装甲
「それでは準備はいいですか?」
ダンジョン協会の屋上。
ヘリポートにて、俺は理央、協会長待ち合わせ、準備が整ったところだ。
「協会長、何時でも出発できます」
ヘリを運転してくれる職員が、運転席から顔を出し、そう報告した。
「分かった。それでは向かうとしよう」
協会長の合図とともに俺たちはヘリへ乗り込む。
ヘリは空高く上昇し、街並みが次第に小さくなっていく。窓から外を眺めると、ビル群や車の流れがまるで玩具のように見えた。
「ちょっと詰めてくれよ」
「これ以上はこっちが狭くなるって」
「私も窓から外見たい」
「そっちにもあるだろ」
「もうすぐ到着だ。ふざけるのもここまでにしておけ」
協会長が真剣な口調で言う。
「「はい」」
もうすぐか……。
窓から地上へ視線を移す。そこには荒廃し、壊滅した都市が広がっていた。
ところどころに魔物が蔓延っているのが確認できる。
この辺りで良さそうだな。
「ここで大丈夫です。扉を開けても?」
「ここだと!? 空中だぞ?」
「高度も十分あるので大丈夫です」
「あ、ああ。分かった」
許可が出たため、ヘリが空中でホバリングするのを待ち、扉を開ける。
風が中に吹き荒れる。
「頑張ってなー」
「おう」
ヘリから飛び降りる。そしてアイテムボックスから蒼冥鉄騎を取り出す。
「マークッ!」
《かしこまりました》
それをマークが操作し、両手両足に着けたリング状のガイドに合わせて、俺に装着していく。
「広域殲滅モードへ移行」
各関節と胸部の隙間が青色に輝き、魔力の粒子が漏れ出る。胸部は炎のように魔力が噴き出る。
《移行完了》
マークの機械的な声が頭部アーマー内に響く。
センサーに魔力反応を検知。
地上の魔物たちは俺の接近に気付いたようで、一斉にこちらを見上げた。その姿は巨大な狼、鳥のような怪物、そして未知の形状のものまで様々だ。
俺は脚部装甲を展開し、胸部のダンジョンコアから魔力を供給し解放する。
脚部を中心として円錐状に魔力が広がる。
そして着地。
衝撃により周囲に魔力が広がり、周辺の魔物を焼き尽くした。
「よし」
だが息つく暇も無く、次々と魔物が押し寄せてくる。
《背後より接近する魔物多数確認》
「了解、迎撃する」
前腕部の装甲を展開し、脚部に流れていた魔力を前腕部に流れるように変更する。
振り向きざまに腕を薙ぎ払うことにより、吹き出た青い魔力が魔物へ向けて放たれる。
「灰となれッ!」
それに触れた瞬間、魔物は消滅した。
しかし、さらに多くの魔物が迫ってくるのが見える。俺は状況を冷静に分析し、次の手を考え始める。
「キリが無いな」
《おそらくボスを討伐しない限り、無限に続く可能性が……》
「ボスか……場所は分かるか?」
《魔力反応が多すぎて判別ができません。もう少し近づければ可能かと》
「分かった」
俺はアイテムボックスを発動、二振りの剣を取り出す。
蒼光剣そうこうけん、
俺は両手に剣を握り、迫り来る魔物の軍団に向かって突進した。
蒼光剣が青い光を放ちながら魔物を斬り裂き、宵闇剣が黒い霧を纏いながら敵を吸い込むように消し去っていく。
そのまま薙ぎ倒しつつ、進み続ける。
「どうだ、分かりそうか?」
《検知しました。前方、およそ10メートル先、ビル残骸の裏手だと思われます》
「よし! ナイス」
俺はマークの探知結果を考慮し、ビル残骸の裏手めがけて進む。
しかし多数の魔物が立ち塞がる。
ここまで多いとなると少し鬱陶しいな……。
「一纏めに殲滅するか」
俺は二振りの剣を交差させ、コアから魔力を最大限に引き出した。
一瞬にして青い光と闇が融合し、前方に巨大な魔力の砲撃が発生。周囲の魔物を一掃する。
「ふぅ…」
これは少し疲れるな。
俺は息を整えながら、次の敵に備えつつ進む。だが、その瞬間、地響きが起こり、巨大な影が複数現れた。
「ジャイアント……厄介だな」
俺の三倍はあろう身長に筋骨隆々な体躯。浅黒い肌をしている。
「グオォォォ」
ジャイアントが吠える。
様子見にと蒼光剣で魔力の斬撃を発生させ、放つ。しかし、これは余裕の様子で防がれた。
俺は新たな手段として、アイテムボックスから遠隔操作ビットを複数取り出し、展開する。
《遠隔操作ビットと魔力回路を接続します—————完了。続いて左右に展開します》
マークが遠隔操作ビットを操作し、俺の左右に展開する。その数合計八機。
ジャイアントらが警戒するようにこちらを見てくる。s
「左右のジャイアントに攻撃を仕掛けて、邪魔に入らないようにしてくれ。各個撃破する」
《かしこまりました》
左右に四機ずつ展開した遠隔操作ビットをマークが操作し、それぞれのジャイアントへ攻撃を仕掛ける。
俺は正面のジャイアントを倒すべく、突撃する。
背部スラスターを噴かし、勢いよく迫る。そしてジャイアントが追いつけないよう、回転しながら切りつける。
上下左右に素早く動き、徐々に傷を増やしてゆく。
トドメにと、両手に携えた剣にコアから魔力を流し、ブレードをさらに拡張する。
そしてさらに加速し、首を一閃。
「グォ……ォ?」
一瞬の出来事により、困惑した声色の鳴き声が聞こえる。が、それも一瞬。
物言わぬ屍へと変わった。
「まずは一体」
他のジャイアントに視線を向ける。
マークが上手い具合に足止めをしていたようで、体中あちこちに傷が見られる。
「そのまま攻撃を続けてくれ。俺も参加する」
《かしこまりました》
その時、一体のジャイアントがビットの猛攻を掻い潜り、俺へと接近してきた。
「おっと」
ビットを三機手元に戻し、バリアを展開。攻撃を防ぐ。
そのまま、攻撃に転換。
ビットから魔力ビームを発射し、両足を切断した。ジャイアントは膝から崩れ落ち、両腕で体を支えている。
俺はそのジャイアントに向けて、宵闇剣から魔力を凝縮した斬撃を発生させ、真っ二つにした。
二体目っと。
そして最後のジャイアントが「グオォォォォォッ!!」と雄叫びを上げながら、突進してきた。
背部スラスターを噴かすことで、難なくジャイアントの攻撃を回避し、ビットから攻撃を仕掛ける。
「なっ!?」
ビットからの攻撃を物ともせず、ジャイアントが攻撃を仕掛けようと迫ってくる。
《……特殊個体でしょうか》
「今は分析はいい。討伐せねば」
《かしこまりました。では、ビットによる攻撃を……》
マークがビットの照準をジャイアントへ向けた瞬間、奴が飛び上がりビットを破壊してきた。
《なんと。誤差修正、距離を取り遠隔射撃に切り替えます》
想定外の行動にマークが驚きの反応を見せる。
ジャイアントが再び突進してきた。
スラスターを全開にして回避しながら、マークのビットが放つ青い魔力のビームがジャイアントを撃つ。しかし、奴はまるでそのビームを無視するかのように進み続ける。
《おそらく何らかの耐性を持っていると思われます》
「耐性……か。なら、それを超える圧倒的な力で捻じ伏せるのみッ!」
両手に持った二振りの剣をアイテムボックスへ仕舞い、コアからの供給を遮断する。
続いて両の掌にコアから魔力を供給し、放出。手で囲うことでその場に止まらせる。
球体状に放出した魔力を形成。
「グロオォォォォッ!」
迫るジャイアント。
「シャァァイニングゥゥ……スパーァクッ!!!」
球体状に形成した魔力玉、それを弾丸のようにジャイアントへ向けて投げつける。
ジャイアントは回避行動に移ろうとするも間に合わず、直撃した。
激しい光と共に大爆発が起こる。
最後のジャイアントは跡形も無く消し飛んだ。
「殲滅完了」
腕を振り、魔力の残滓を消す。
《まだボスがいます。気をつけてください》
「了解」
「ガァァァァァッ!」
重低音の鳴き声が辺りに響く。
「向こうからお出ましだ。これだけ戦闘音鳴らせば来るか」
来たのはまごう事なきドラゴンだった。
赤黒い鱗で全身が覆われ、鋭い牙が口から覗く。金色の眼は突き刺すように鋭い。また、体格が大きく、大型トラックくらいはあるだろうか。
「あいつがボスか……」
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