第4章 魔剣戦争
第1話 悪意の叛逆
ユウリとの戦闘が終わってからゆったりとした日々が続いていた。
魚釣りしてみたり、みんなでハイキングに出かけてみたり、色々遊びに出かけたりした。
ユウリためにクレアが教会の修繕命令を発令したため、今日は運動がてら様子を見に行っていた。
寂れ朽ちていた教会は修繕が進んでおり、天井の穴は塞がり備品の数々も新しいものに変わっていた。
神への信仰が強いユーリの感動によるきらきらした瞳はしばらく忘れられそうにない。
また信仰も少しずつ戻っていくことだろう。
そういえば信者が消えていた事件については死人がいた訳ではなく、教会の近くの小屋で過ごさせていたとのことだった。
日に日に神への信仰を繰り返させていたとのことで、弄った意識を修復しそれぞれの戻る場所へ帰っていった。
夜になりお風呂に入った後に寝巻きで自室のベッドに転がり込んだ私は、明日は何をしようか悩んでいた。
「どうしようかなー、釣りはこないだ行ったしなー。」
「また遊ぶことばっかり考えて……」
私の自堕落な生活を目の当たりにしているレヴィが呆れたように呟いた。
レヴィが少女の姿になって私の隣で横になる。
「どうしたの?一緒に寝る?」
「……そうね、今日はそうしようかしら。」
レヴィがベッドで寝るなんてここに転生してから初めての出来事だ。
何かあったのだろうか?
「どしたの?何かあった?」
「特に何も無いわよ。ベッドで寝てみたかっただけよ。」
ちょっと顔が赤くなった気がするが見なかったことにしよう。
ベッド横のローテーブルにあるライトの紐を引っ張って電気を消した。部屋の中は暗闇になりレヴィの姿も見えなくなった。
天蓋を見つめながらボーッとしていると、シュルとシーツの擦れる音がする。
「ねぇ、ミツキ。」
「どうしたの?」
「ずっと一緒って言ったじゃない?」
「うん。言ったよ。」
「私が……いなくなったらどうする?」
「探すよ。どこに行っても。」
布団の中でレヴィの手を探し、ぎゅっと手を繋ぐ。
何か不安に感じているのだろうか?
どこに行っても、何があっても、必ず見つけ出す。
「じゃあさ、決め事しておこうよ。」
「決め事?」
「うん、決め事。それじゃあさ……」
レヴィにコソコソと耳打ちする。
「……わかったわ。」
「そしたら寝よっか。」
「えぇ、そうね。」
暗闇の中で目が慣れてきてレヴィの顔がうっすらと見えてくる。
「おやすみなさい、レヴィ。」
「おやすみなさい、ミツキ。」
夜が深けていく。
この時間をずっと続けていけるようにと祈りながら、ゆっくりと目を閉じた。
小鳥の声が聞こえ、朝日が射し込んできて目を覚ますと目の前にレヴィの顔があった。
整った顔に長いまつ毛、こう見ると可愛い少女にしか見えないが最強の魔剣なのだ。
身体を起こすと物音に反応してレヴィも目を覚ました。
「あ、おはよう。」
「ん……おはよう。」
「よく寝たねぇ。何か安心して寝れたかも。」
「またそんな恥ずかしいことを……」
「えー、いいじゃん。ホントにそうだったんだから。」
はいはいと言いながらチェーンのアクセサリーに戻るレヴィ。多分照れているのだろう。
さて、今日も日課のジョギングでもしよう。
いつの間にか準備されていた服に着替えて、屋敷から出かけた。
その時、ルミナリア公国の王宮には来客が訪れていた。
「聞き間違えだろうか?もう一度聞こう、エルメリア卿。我が国が何だと?」
来客はレイン・エルメリアであった。クレアはレインの放った言葉に耳を疑う。
「ルミナリアが魔剣使いを利用し、我が国に宣戦布告を行おうとしているとの話があってね。」
「そんな訳がなかろう。確かに魔剣使いがいることは事実だが、宣戦布告など……どこで聞いたのかは知らんが事実無根だ。」
「君が知らないだけじゃないのか?」
「ふざけるな。」
クレアとレインの間に緊張が走る。
「ふざけてなどいないさ。魔剣レーヴィアテイン、あの力は強大だ。いつ、その力が我がエルメリアに仇をなすか怯え続けているのさ。」
「魔剣使いがいる限り、そんなことは起こり得ない。」
「そんな保証がどこにあるんだい?」
レインは大袈裟に手を上に挙げる。
演技じみていてその態度がクレアの逆鱗に触れそうになっている。
「その危険性を危惧しているのには理解を示しても構わん。だが、それがどうしたと言うのだ?」
「どうしたなんてレベルの話じゃない。これは国家間の信頼関係に傷をつけるには充分すぎる事案だ。」
レインが腰に帯刀していた刀に手をかけゆっくりと抜く。そして切っ先をクレアの方に向けた。そして告げる。
「今、この瞬間!国家間反逆が適用された!これより魔剣レーヴィアテインはエルメリアにて管理する!」
「貴様……横暴甚だしい……!」
あまりもの物言いにクレアの怒りが最高に達した。天まで突き抜けてしまいそうだ。
レインはクレアに向けていた刀を回転させ逆手に持ち、地面へと突き刺す。
「魔剣の回収は僕の家臣達に任せてある。すぐにでも持ち帰るさ。」
「貴様……自分が何をしているのかわかっているのか?」
「あぁ、それだけの価値が魔剣にはある。」
「堕ちたな、エルメリア卿。あれは貴様には荷が重い……考え直せ。」
「ふふっ……君こそ考え直した方がいい。魔剣の存在はルミナリアには重い。」
地面に刺した刀が白く輝き王宮の床が凍結していく。氷はやがて結晶化して蕾へと変貌しレインを包み込んだ。
蕾から花開いた時にはそこにレインの姿はなくなっていた。
「……ミツキが危ない……出るぞ!」
レインの話が真実であれば複数の刺客がミツキの魔剣を狙って現れているはずだ。
冗談で済むような話では無い。
数人の兵士を引き連れクレアは王宮から飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます