いざ学院へ
ソヴァール家屋敷を出発してから大体30分。御者が私達に声をかける。
「王都学院到着となります。降りる用の階段を用意するためもう少々お待ちください」
そう言うと御者は御者台を降りて私達が降りる用の階段を用意してくれる。
実際私とシエラさんであれば馬車から降りるくらい階段無しでいけるのだが、それだと貴族令嬢としてどうなのかと思われてしまうので階段を使って降りろと父からきつく言い聞かせられているため、私達は御者が階段を用意してくれるのを待つ。
父って貴族会にあまり手を出していないみたいだけど、こう言った作法とか他の貴族からの風評に関してはかなり気にしているらしく、昔から貴族からの見られ方には常に意識を向けなさいと言われている。
私としてはそこまで気にしなくても良いような気もするのだが、今まで貴族社会を生き抜いてきた父が言うのだから守っていた方が良いのかもしれない。
とそんなことを考えていると馬車の扉が開く。
「ノア様、シエラ様。ご準備が整いました。どうぞこちらに」
御者は扉を開けると階段の横へと履け、深くお辞儀をしたまま私達が馬車から出るのを待つ。
私とシエラさんは馬車から階段を使って降り、地面に足をつける。なんだかまだ数十分程しか経っていないけど久しぶりに地面を足をつけた気がする。
私は地面に足をつけた時、ついつい体を伸ばしたくなってしまったが立場上我慢する。しかし、私と同じことを思っていたシエラさんは公然の前で堂々と背を伸ばしており、そこには微塵も迷いのない伸びが広がっていた。
「シエラさん、一応他貴族の目線もあるので形だけはしっかりと」
私はシエラさんにだけ聞こえるような声量で指摘するが
「私は別に大丈夫よ。周りの視線なんて気にしてないし私に刃向かってくる人もそうそう居ないわ」
と当たり前かのように返されてしまった。
私だって体を伸ばしたいのにシエラさんだけずるい…
そう思ってしまった私は悪くないと思う。私のは堂々と伸びているシエラさんだ。
その事につい、ため息をついてしまう私だったが、そろそろ周りからの視線も感じ始めるようになってきたのでシエラさんを置いて学院の門へと向かう。
「ノアちゃん、せっかちだなぁ」
「シエラさんがずっと止まってそうだったので」
「そんなことは無いよ?」
「シエラさんなら私だったらすぐ学院まで行けるしのんびりしてるの。とか言いそうですけどね」
私がそう言うと「ノアちゃん辛辣〜」と言いながら少しむくれた表情をするシエラさん。やれやれ、どっちが子供と大人なのだか…
「それにしてもさっきから私達に向けられた視線が多いよね?もしかして私達って人気者なのかな?」
「多分馬車のせいだと思いますよ。馬車を使って学院に来るのは上級貴族以上ですし私達が乗ってきた馬車にはソヴァール家の紋章も入っていますからね」
「なるほど。それなら納得だね。という事はこの後ノアちゃんは1人になったらお近付きになりたい生徒達の挨拶回りの対象となってしまう訳だね」
そうなんだよなぁ…
私としては挨拶回りとか来なくていいのになるべく上級貴族の庇護下に入りたいからって無理やり挨拶しに来る人が多く居そうなんだよねぇ
「分かっているならシエルさん、私の傍を離れないでくださいね」
「残念ながらノアちゃん、それは出来ないんだよね。ノアちゃんはこの後学院の入学式に参加、私は学院教師として入学式に参加ことになっているから」
な、なんだと。てことはもう後少しで私とシエラさんは別れて私は生徒達の挨拶回りに捕まってしまうでは無いか。
そんなのは嫌だ。私面倒ごとは嫌いなんだ
私はどうにかしてといった視線をシエラさんに向けるが、
「ノアちゃん、そんな目で私を見ても現実は変わらないんだ。諦めて貴族の洗礼を受けてきな」
「シエラさん、私はあなたのことしばらく恨むと思います」
それからシエラさんは「怖い怖い」と言いながらどこかへ行ってしまった。
あれ?そう言えば私、入学式がどこでやるのかとか全く知らないんだけど?
周りにいる人達に聞くってのは…あ、ダメだ。全員庇護下に入ることで頭いっぱいになってる感じがする。
私がどうしようと思っていると私の視界に特にこちらに興味を持っていない1人の少女を見つける。
これはチャンス!だと思った私はその少女の元に近付き話しかける。
「あのすみません、入学式の場所ってどこか知ってませんか?」
私がそう話しかけると少女は私の質問に答えてくれる。
「それなら校舎に入って真っ直ぐ向かえば辿り着くと思いますわ」
「ありがとうございます!」
私は少女にお礼を伝えると少女に教えられた道を真っ直ぐ進んで入学式会場を目指した。
そう言えばさっきの少女、物凄く美人な人だったなぁ…もしかして私と同じ新入生になるのかな?それだったらまた話せるといいなぁ
「リーリエ嬢、先程の少女は一体?」
ノアが道を聞きその場を立ち去ったあと、ノアが道を聞いた少女リーリエに話しかける少年がいた。
「入学式の場所が知りたいらしくて私に話しかけたみたいです。私が入学式の場所を教えたらすぐにそちらの方に向かったので恐らくお近付きになりたい訳では無かったのかと?」
「それはまた不思議な少女だね。社交界では見た事が無いから知らなかっただけなのかもしれないけど侯爵家のリーリエ嬢に道を聞いただけどは。これはまた面白そうな子が学院に入って来たのかもね」
少年は先程の少女に興味を持ったのか少女が通ったであろう道を見つめている。
そんな少年を見たリーリエは周りに聞こえないよう小さく溜息をつく。
「はあ。お戯れも程々にしてくださいね。入学式会場の方で彼も待っていますので向かいましょう、アドルフ殿下」
アドルフ殿下と呼ばれた少年はリーリエに「そうだね」と言うと入学式会場の方へと向かっていった。
一方その頃のノアはと言うと
「あれ?真っ直ぐって言われたから真っ直ぐ向かったけどもしかして私、騙された?」
ノアはどうやら言われた道を言われた通りに進むことが出来ず、道に迷ってしまったようであった。
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