第三便✉(往信) 探偵の妻より愛を込めて(1)
✉️
LINEで悪いねんけど、1つ頼まれてくれるか!?
あんな!? うち《我妻興信所》のガリツマちゃんにな、女の子紹介したげたいねん!
ガリツマちゃんはアタシのことファン過ぎて、彼女いない歴
アタシが、元
ほんでな、ガリツマちゃんは、見た目『ひょっこりはん』にクリソツねんな! 分かるやろ!?
そのうえ、服もヨレヨレの着てはるしな!
いくら世界に、女が40億人おるっちゅうても、さすがに、もうちょっとオシャレに目覚めさせんと、難しいやろ!?
せやから、『ひょっこりはん』みたいな男がタイプ
ほんでな、頼みごとはな、ガリツマちゃんのデートを、
耀ちゃんにはな、洋服選びを
強にはな、2つお願いしたいことがあってん!
1つはな、職場の上司として、人生の先輩として、ビシッと、女子とのトークスキルを伝授してやってほしいんや! ガリツマちゃんは、仕事のときはビシッとしてんねんけど、それ以外ではシャイボーイなんや! ガリツマちゃんにとって、無敵の最強美人の我妻優を口説き落とした、我妻強はレジェンドなんや!
そして、もう1つのお願いはな、デートを尾行してもらいたいねん!
日にちはな、明日の土曜日の夜7時から、場所は、
きっとガリツマちゃんのことやから、デートがうまくいかんでも、アタシには見栄を張ってうまく行ったと言うはずやねん!
せやから、第三者的に、悪かったところをフィードバックせなあかんねや! ほんで、2人に気付かれへんようチェックして、アタシが帰ってくる明後日の夜までに、調査報告書をまとめとくことや!
土曜日は予定が詰まっとるかもしれんけど、よろしく頼むわ!
あ、子どもたちは、母ちゃんが日曜まで預かっとるから、安心してや!
ちゃんと、調査報告書をまとめたときには、ご褒美の¢£%#&□△◆■が待ってんで!
でも、できひんかった場合には、必殺のコークスクリュー・ブローをお見舞いすんねん、覚悟せえや!
とゆーことやから、よろしく頼むわ!
あ、こっからは、余談ねんけど! 今な、アタシ、映画の撮影で大阪に来とんねん! 千葉もええけど、やっぱ、生まれ育った街は落ち着くな!
天空アカネっていう『カケヤヨメヤ』発の人気恋愛作家が書いた『探偵が
『カケヤヨメヤ』発のアニメはあるけど、実写は珍しいな! アタシのゴリゴリの関西弁が、めっちゃハマリ役なんだそうや! ありがたい話や!
それにしても、この作品に出てくるヤクザがごっつぅリアルで、天空アカネは、実は元・構成員やないかという噂まで出てんけど、あくまで噂レベルや!
ちょくちょく撮影で、千葉と大阪の往復になるけどな、アタシが映画で恋人役やるからって、ヤキモチ焼いてアタシいない間に女作ったら、どーなるか分かっとるな!!!?
ま、強に限ってそんなことないと思うねんけどな!
ってことで、ガリつまちゃんのことよろしく!
今日中でも調査中でも調査後でも構わへんからLINE返事よこしてくれや! ええな!?
✉️
「
今回の、俺の第一声はこれだった。
「こんな長文LINE、一回で送ってくるやつ初めて見たわ!!」
そう。今回の往信は、便箋に書かれた手紙ではなく、LINEメッセージなのだ。
LINEって普通、みんな一文ずつ何度もポコポコ送ってくるもんだよな? あんま意味のないスタンプとか混ぜてさ。
長文すぎて、いくらスクロールしてもなっかなか終わんねーわ。
「これを打った方は、勢いが強すぎて自分が長文打ってる自覚がなかったのかもしれませんねー」
話し出したら止まらなくなる人種だな。まさにコテコテの大阪人。要件のみ伝えるつもりが、気がつくとどんどん長くなって話終わらないやつ。
「で。なんで俺が、これを届けなきゃあかんの?」
関西弁が
例によって、不思議な色のランプ(セーブポイントの証)が点いてる薄暗い小屋で、俺は羽根をぱたぱたさせて空中に浮かんでいる白い封筒を見上げている。
「
この超長文LINEは、なぜか相手の
って、あ、あれ……?
「何だこのスマホ!! 中身グチャグチャになってんぞ!?」
ガワは見慣れた俺のスマホのままなのに、中身が完全に別人のに入れ変わっていた。
知らねー待ち受け。誰この子供。
初めて見るアプリがズラリ。LINEの背景までキラキラだ。なんかのステージ写真か?
「諸事情により、このメッセージ発信者のスマホをジャックしちゃいました。えっへん」
「え、そんなことできんの? っていうか、これじゃ俺のスマホがこの人にジャックされちゃったみたいなんだけど? ちゃんと元に戻るんだろうな?」
「元ING48メンバーだからって、秘蔵写真とか、プライベート満載な色んなアプリを勝手に覗き見してはダメですよ?」
「しねーよ! ING48なんて知らねーし、興味もねーし」
「え、男子大学生なのにING48知らないの?」
「男子大学生が全員ドルオタだと思うなよ?」
「そうでした、
「込むな。双子をユニットみたくすんな。で、なんでわざわざ俺のスマホを乗っ取ったんだよ」
「実は……」
羽根のぱたぱたがやんだ。
羽ばたかなくても浮いてられるんじゃねーか、とツッコめる雰囲気ではない。
「お亡くなりに、なってしまわれたのです……」
「……え」
マジか。
ブルーナに続いて、またも差出人死亡案件なのか。
「ちょうどメッセージを打ち終わった瞬間に、送信完了する間もなく……」
最期に届けられなかったメッセージ。
だから、代わりに俺に送ってほしい、ってことなのか。
……ん? ちょっと待て。
だったらこんな、お花が咲きまくってるメッセージなんて送ってる場合じゃないんじゃないか?
「相手の強って人は、亡くなったことを知ってるのか?」
「知らないでしょうねー。なんせ優さん本人も知りませんから。スマホがお亡くなりになったことにも気づかず、送信を終えたつもりのまま、今も絶好調で映画の撮影中です!」
「スマホが壊れただけなら最初っからそう言えーッ!!」
🔷 🔷 🔷
今日一番の叫びをあげたところで、例によって唐突にゲーム世界から放り出された。
自分の部屋に帰還して目覚めると、頭がパジャマのズボンの中に、両手が靴下の中に突っ込まれてた。俺の扱いがどんどん雑になってるぞ!
一瞬シリアスな話かと思ったのに、たかだかお笑い芸人(もどき)のデートの話じゃねえか。俺がわざわざ「配達」する意味はあるのか?
『あります! 大アリです!』
どこからか、幻聴みたいにイラつく甲高い声が聞こえてくる。
『正直、私もひょっこりはんもどきのデートが成功しようが失敗しようがどーでもいいんですが! 異空間をもねじ伏せる、強大な彼女の念が! 無意識でありながら、「届けないとあんたにもコークスクリュー・ブローをお見舞いするでー!」って圧をかけてくるんですぅ! 私はまだバラバラ紙片になりたくありませーん!』
「奇遇だな。俺も、デートがどうなろうがビンがバラバラになろうがどーでもえーわ」
『配達してくれないと、彼女に実紘さんがスマホを覗いたってチクりますよ! 実紘さんにもコークスクリュー・ブローが飛んできますよ! スマホデータも戻らなくなっちゃいますよーッ!』
最後のはマジで困る。
結局、俺はまたも理不尽なメッセンジャー業務を引き受けるしかないのだった。
(※お題✉提供:🥎銀鏡怜尚様)
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