第4話 真田が分からない件


 昔から姉ちゃんと俺は真逆の存在だった。

 姉ちゃんは俺と違って社交性があって誰に対しても気さくで、常に笑顔の陽キャで……。

 そんな姉のことが、俺は少し苦手に思っていたりもする。


「桃のフラペチーノ3つお願いしまーす」


 姉ちゃんに連れられてやって来た高校近くのスノートップス。

 同じ高校の生徒ばかりの店内に入ると、姉ちゃんはすぐにフラペチーノを注文した。


「私と真田ちゃんはそこのテラス席を確保しておくから、やっくんはフラペチーノよろしくー」

「は、はぁ……」


 姉ちゃんに命令された俺はフラペチーノが出来上がるまで待つ。

 ほんと、姉ちゃんは勝手な人だ。


「お待たせしました。桃のフラペチーノ3つです」


 俺はフラペチーノが乗ったトレーを持つと、二人が待っているはずのテラスに出たのだが……。


(あれ……姉ちゃんがいない)


 テラス席には足を組んで座りながらスマホをいじる真田が一人で座っていた。

 トイレか何かかと思って、limeで姉ちゃんに聞こうとスマホを取り出すと、スマホにはlimeの通知が来ていた。


『姉ちゃん:お姉ちゃんはクールに去るぜ。真田ちゃんとお幸せに〜』


 あのバカ姉、何か勘違いしている。


 姉が消えたことで俺と真田は必然的に二人きりになってしまったのだが、とりあえずトレーを席に置くと、俺は真田と差し向かいで座る。


「…………」

「…………」


 もちろん、そこに会話はない。

 真田はトレーの上にあるフラペチーノを一つ手に取って飲み始める。


(さ、真田と二人きり……)


 普段は隣の席で真横から見ている真田をこうして正面から見ると、スタイルの良さや顔の小ささがよく分かる。

 その整った容姿と抜群のスタイルは彼女が人気の理由を物語っている。


 真田は校内にファンクラブなるものが存在するくらいに人気だ。

 そんな彼女と二人きりでスノートップスにいるこの状況は色々とまずい気もするが……。


 俺が真田の方をじっと見ながら考え込んでいると、真田の方も俺を見つめ返して来る。


「……っ」


 その視線は鋭く冷ややかで、彼女から警戒心のようなものを感じた。

 み、見過ぎたからか……?

 それとも会話がないから真田も気まずいとか?


「あのさ、真田……」

「………」


 間を持たせるために必死に話題を探すが見つからない。

 その時、ふとトレーを見て思いつく。


「よ、良かったら、2杯目……どう?」


 俺は余った姉の分のフラペチーノを指差して言う。

 話題がなさすぎてつい言ってしまったが、さすがに2杯も飲んだら腹がタプタプになるし、断られるんじゃ……。

 真田の青いネイルの綺麗な指先が伸びて来て、余っていたフラペチーノを手に取る。


「え?」


 真田は何も言わずにフラペチーノの2杯目を飲み始めた。


 わ、分からん……真田が分からなすぎる。

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