この恋のはじまりと新婚生活について

第1話 親を喪った多種族のこども

 母親を喪ったかわいそうな子供に対する同情。

 最初にガルーバンがラキに対して抱いていたのは、ただそれだけだった。

 もうひとつあるとすれば、「この地に身体を馴染ませることができなければ、10までも生き残ることはできない」というラキの母親の言葉に、ガルーバン自身がおびえていたからだろう。

 無邪気なラキの命が十歳を待たずして途絶えるなど、ガルーバンにはどうしても信じられなかったのだ。

 鳥人とりびとの一員としてラキを育ててほしい。ラキの母親が残したその願いに沿うべく、ガルーバンの父――鳥人の長であるトウキは、幼いラキに50日代わりで世話係を付けた。

 ラキを決して甘やかすことなく、生きる術を教える世話係だ。

 各村々の長の妻をその役割に充てたのは、ラキの複雑な立ち位置を、一族のみんなに受け入れさせる狙いがあった。

 ラキは特別な存在で、決して粗末に扱うことはあってはならないということ。

 その一方で、鳥人とりびとの子供と同じように、自分で食料を狩り、ひとりでも生活していけるように育てること。

 これが、鳥人の長と村々の長による総意だと、みんなに知らしめたのだ。

 世話係たちは、見た目からまるで他の鳥人とは異なるラキを、敬うものや恐れるものに分かれた。

 いずれにしても、ラキの身体に触れることはみんなが最大限避けたのだ。

 それはトウキが命じたわけではなく、たまたまそうなったというだけのことだったが、そのせいでラキは極端に人肌を知らずに育ってしまうことになった。

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