第3話 鳥人の長トウキの決断
時は、ガルーバンが母娘に出会うひと月前に遡る。
遥か北東にあった人族の大都市がふたつ、ある日忽然とその姿を消したというものだ。
まだ
近頃の報告では、ふたつの都市は争いを始めたらしく、ともに火の手が上がっていると聞いていたのだ。
鳥人たちが息を潜めるように人族の争いを見守っていたそんなある日、困惑しきった様子で、北東の村の長が自らトウキの元にやって来た。そうして聞いたのが、ふたつの大都市が、ある朝に跡形もなく消滅していたという報告だ。
あまりのことに何が起こったのかとトウキや長たちは大いに震えたが、結局何も分からなかった。
そしてその5日後、トウキの住む村の近くで尋常ならざる美貌を持つ母娘が行き倒れているところが発見されたのだ。
――塵も残さぬ破壊、か。さてこの子が儂らにもたらすものは、大いなる豊穣か、それとも……。
トウキはラキの両親が行ったのであろう粛清について、あえてガルーバンに伝えなかった。村々の長たちにもだ。それがトウキの鳥人の長としての決断だった。
もちろん長の中の賢しいものは気が付いただろうが、あえてトウキが口にしないことに追求するものはいなかった。
ガルーバンが知るのは、これからラキが伸びやかに素直に、そして食いしん坊で逞しく成長していくということだけだ。
幼くして母、そしておそらくは父をも喪ったかわいそうな子供に対するガルーバンの同情が、唯一無二の嫁への思いに変わるのは、その出会いからわずか3年後のことだった。
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