第5話 あったかかったけど?

 鳥人の髪の毛はサラサラしていて真っ直ぐで、ちゃんと飛ぶのに邪魔にならないようになっているのに、ラキの髪の毛はふわふわもふもふだ。色も鳥人は黒やこげ茶なのに、ラキの髪は金色で光を反射して光ってしまうため、獲物にも気付かれやすい。

 瞳の青色も、どれだけ陽に当たっても白いままの肌も、筋肉の付かない身体も、何もかもが鳥人達とは違う。だからラキは、きっとどれほど練習したところで、上空を自由に飛びまわれるようにはなれないのだろう。


 ――きっとムーアも、そんなこと分かってるのに……。


 無駄なことだと知りながらも、ラキのために特訓をしてくれるムーアは、本当に優しい。

 ガルーバンも本当は優しいはずなのに、ムーアを「あの女」呼ばわりしていたのが、ラキは気に掛かった。将来長となるガルーバンがそんなことで良いのかと、少々心配になってしまったのだ。

 手や膝の土を払いながら立ち上がったラキが、そんな微妙な表情をしているというのに、ガルーバンはまったく空気を読まずに嬉しそうな声を発した。


「で?」


 ――で?


 たった一音だ。それだけを言って、ガルーバンはラキを見つめている。当然のようにラキは首を傾げた。ガルーバンが何を伝えたいのか、ラキにはさっぱり分からない。


「俺に抱きしめられた感想はどうだった?」

「……あったかかったけど?」

「それだけか?」


 続きを促すガルーバンの声はとても優しい。目つきは悪いが、穏やかで賢くて優しいガルーバンは、きっと良い長になるだろう。そして長となるガルーバンの隣に立つのは、鳥人の女でなければとラキは思う。


「……分からないよ」


 言葉を求めるガルーバンに、ラキは背中を向けた。本当はもう、ラキには自分の想いが分かっている。ガルーバンの側にいる時だけ感じる、むずむずする感じ。初めてガルーバンに抱きしめられてラキが動揺した理由は、つい4日前にムーアに言い当てられたものだ。

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