第25話 スージー

 

 スージーのあの態度。

 エマが受け入れられる程、反感が強くなりそうだよ。


 スージーは取り巻きがいるときにしか嫌がらせをしてこない。ああ見えて、周りの目が気になるタイプなのだろうか。


 エマが嫌がらせを受けることは減るとは思うけれど、ここを解決しないと本当の解決とは言えない気がする。


 あれから何日か経ち、クラスに変化が起きた。

 エマの周りに人が絶えなくなったのだ。


 エマのもともとの明るい人柄もあり、皆、楽しそうに歓談している。気づけば、エマのグループは一大グループとなっていた。


 そのうち、スージーの取り巻き達も、その輪の中に入るようになっていた。


 そして……。


 その代わりにスージーは独りになった。


 スージーの取り巻き達は、今度は、スージーに後ろ指をさしている。もともと不満があったのだろう。ここぞとばかりに、悪口で盛り上がっている。


 やはりだ。

 やはりそうなった。


 誰かが助かれば、その外れクジが他の誰かに行くだけ。こんな調子ではイジメが無くなるはずがない。人って本当にダメだと思う。


 イジメてる本人も周りで見ているだけの人も同じようなもんだ。


 わたしが、スージーに声をかけようとしていると、エマが話しかけてきた。


 「ソフィアちゃん。スージーあのままじゃ良くないと思う」


 「そうだよね」


 「ソフィアちゃんとの約束にも、仲間外れを作らないっていうのあったし。約束を守りたい」


 エマが気にかけてくれて良かった。


 「スージーって、なんであんな感じなんだろう」


 「取り巻きの子に聞いたんだけれどね。スージーには優秀なお兄さんが居たんだけれど、戦争で亡くなってしまって……」


 それによれば、スージーの兄は学業優秀で将来を嘱望されていた。そして、亡き後、その期待がそのままスージーに向けられることになったという。しかし、スージーは勉強が苦手で、両親は彼女に厳しく当たったらしい。


 そのうち、彼女は両親に反発するようになり、学校でも今みたいな態度をとるようになったという。


 エマは続ける。

 「きっと、ご両親の期待に応えられない自分に負い目を感じて、イライラしたんだと思う」


 なるほど。

 そんなものなのか。


 わたしが学校に行かなくなった時、お母さんはどんな気持ちで見守ってくれていたのだろう。


 やはり、わたしは人の気持ちの機微に疎い。



 スージーに声をかけてみる。

 すると案の定。


 「ん? ああ? うっせーよ」


 次の日も次の日も声をかけた。


 そして、その次の日。


 「ほんとうぜーな。お前ら。 それで何の用なんだよ?」


 やった。

 話を聞いてくれた。


 「次の魔法の授業の発表。わたしたち2人だけじゃできないから、手伝ってくれない?」


 そう。次の魔法の授業も発表なのだ。

 エトス先生は、教えるというよりも考えさせたいらしい。


 「ああ? なんでアタシなんだよ。あっちで群れてるあいつらでいいじゃねーか」


 なんだろ。

 この子は、建物の陰で尻尾を膨らませて「シャーー!!」っていってる野良猫みたいだな。


 「魔法の適性ある子じゃないとダメなんだ」


 「アタシが適性? ……お前ら毎日うぜーし。仕方ねーな。分かったよ」

 

 本当はスージーに適性があるかなんて分からない。だけれど、人手が足りないのは本当だ。


 その日から、放課後の集まりは3人になった。

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