第24話 5人目のお客様(中編)

 

 週が明けて、また学校がはじまった。

 相変わらず校門では足が止まるが、エマが一緒なので、なんとか通えている。


 1時間目は魔法の授業。

 今回も講師はエトスさんだ。

 

 宿題の発表の時間になった。

 次々に発表がされていく。


 馴染みのないテーマなのに、皆それぞれ頑張っていて、中には、種族による魔力量の違いについてなんてものもった。

 

 それによれば、猫耳族は上位1割に入っており、人間族は真ん中より少し下らしい。魔術が発展してきた経緯を考えれば、納得だ。


 そして、わたしたちの順番になった。


 エマに説明してもらう。


 「ほとんど村人は、魔法なんて一生、縁がないものだと思っています。だけれど実際……」


 実際には、必要な魔力量に達していないだけで、ハードルを下げれば使える人は少なくないのだ。


 教室にざわめにが起きる。

 そこかしこから、本当?、まさかぁ、という声が聞こえる。


 すると、エマは事前に図形を描いた背丈の半分ほどの紙を床に敷いた。

 

 そして、その前で両手の平を広げ、肩の高さまで上げると、ハッキリとした発音で唱えた。


 

 「「一つ星の春風(シングルスター•スプリングブリーズ)」」


 

 紙に描いた図形が一瞬光り。


 フワッと暖かい風が、教室の中を吹き抜ける。


 教室の窓は開いていない。

 風が外から入ることはあり得ない。


 すると、教室のざわめきは、歓声まじりのどよめきに変わった。


 数名の生徒がエマに駆け寄る。

 その全員が、キラキラした目をエマに向けて、エマを質問責めにしている。



 わたしはその光景を見て安心した。

 昨日の夜、お母さんに聞かれたのだ。


 「最近、エマちゃんが良く来るけれど、あなた達そんなに仲良かったっけ?」


 「いや、実は……」


 わたしは、エマが学校でイジメにあっていること。そして、わたしはその解決を手伝っていることを話した。


 「どうりでねぇ。いきなりあなたが学校に行くとか言い出したから、何かあるなとは思ってたのよね」


 「でもね、わたしも、どうしたらエマが皆んなと仲良くなれるか分からないんだ……。それは、自分の時も解決できなかったことだから」


 お母さんは、わたしが子供の頃にどんなことがあったのか、大体は知っているんだと思う。


 お母さんは、少し考えると、わたしの前で膝を曲げた。


 そして、わたしが小さな子供だった時の視線の高さまで腰をかがめると、わたしの手を握って話し始めた。


 「これは、わたしの経験だけどね。勉強でも、運動でも。ムードメーカーになることでもいい。これはこの子には勝てない、と思われるものを作ることだよ」


 「そんなものなの?」


 「それで、必ず解決出来るわけではないけれどね。だけれど、目に見えない精神論に頼るよりは、試す価値はあると思うよ。現に、エマちゃんがあなたを見る目。最近のアナタを見て変わったんじゃないのかな?」


 その時のわたしは半信半疑だったけれど。

 今の目の前の光景をみたら、納得せざるを得ない。


 あとは、エマの良さが皆に伝われば大丈夫だろう。また何かあっても、これからはクラスの皆が彼女を守ってくれると思う。


 ところが。


 「そんなそよ風、大したことないっしょ!」

 スージーは、大声をあげて不満を露わにする。



 さて、今度はあっちか。

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