第31話
猛烈な接吻を前に、不快な感情を抱く魑魅魍魎。
真っ白な髪の毛が毛先から黒く変色していき、瞳は黒から赤へと変わった。
「なにしてるの」
魑魅魍魎は兎に角不愉快だった。
影明と邪継舘散が何をしているのか。
それは人が培う恋愛感情を知覚出来ない為だろうか。
「わたしのものに、なにを?」
魑魅魍魎にとっては、邪継舘散が影明を捕食していると言う様に見えた。
自分が目を付けていた影明が、別の誰かに喰われているなど、あってはならない事だ。
だから、魑魅魍魎は、自分のものを横取りされたと言う不快感を表す。
影明は、口を離す。
邪継舘散に、自らの生命力、限界を授けた。
「…今の限界、あげました」
体中の気力が抜けていき膝を突く。
呆然と立ち尽くす邪継舘散に、全てを託した。
「どうぞ、邪継舘殿…」
後は、彼女が戦闘出来るかどうか、だ。
影明の生命力に酩酊する彼女に、敢えて膨大な生命力を与えると言う暴挙。
これを受けた邪継舘散は、前のめりに倒れそうになった。
「…く、ふッ」
一つ、倒れる寸前に呼吸をした。
すると、彼女の手が、倒れる前に地面に触れる。
膝を地面につける事なく、四つん這いになった。
「く、きゅぅぅ…ッ」
喉から声を鳴らしながら、彼女の肉体から妖力が放出される。
「にゃ、にを、こんにゃっ、くちしゅ、すいっ」
顔面を真っ赤にして、眼が据わった状態になる邪継舘散。
舌足らずな声を漏らしながら、紫電が彼女の身体に纏わり付く。
「はじめ、てぇ…んみゃあッ」
紫電が形を変え、彼女の身体に纏わり付く。
それはさながら、本物の虎の如く、紫電で出来た耳や尻尾が生えていた。
彼女の姿を見て、影明は彼女の口調からネコ科を想定した。
「(…猫?酔いが回り過ぎている…)」
この状態で戦えるのか。
影明は不安を覚えた。
片手を使い、彼女は顔面が痒いのか手の甲で顔を擦っている。
「んみゅう…」
猫の様な彼女の行動に、魑魅魍魎は闇の顎に命令を下す。
「あなた、いらない」
このまま、闇の顎によって喰らい殺す事に決めたらしい。
邪継舘散の方へ向かう闇の顎が、彼女に噛み付こうとした最中。
「にゃああっ!!」
彼女は体を回転させる。
それと共に、彼女の尾骶骨から伸びる紫電の尻尾が、闇の顎を切り裂いた。
「しゃああああッ!!」
進化し、強化された彼女。
影明は強力な妖力を感じ驚きの表情を浮かべた。
「(ッ…凄まじい、妖力、これが、邪継舘殿の強化された強さッ)」
影明の腕を喰らい妖力を得た魑魅魍魎。
影明の意思によって生命力を流し込まれた邪継舘散。
彼女から流れる生命力、影明が与えたものだと悟り、怒りの表情を浮かべる魑魅魍魎。
「なに、なんで、わたしの、つまみぐいしたのッ!!」
影明の生命力を宿す彼女に嫉妬し叫ぶと共に闇の顎と多数に分裂させて攻撃する。
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