第11話
「他の輩に利用なんざされてみろ、区域拡張の際に武力決戦になっちまったら、アイツが居ると居ないじゃ全然話が変わって来るんだ」
中ツ籠の国は、小国の中心に領土があり、外側から魑魅魍魎の土地を略奪して中ツ籠の国として拡張する。
その際に、その区域の管理者が必要となって来る。
土地の管理者は、猛能之武の中から功績を得た者に与えたり、國皇観覧の下で行われる天覧武力試合の優勝賞品として区域の担当が任される。
「之迄、アイツの様な特異体質が居たと言う事実は聞いた事がねぇ、アイツが初めてなのか、それか、アイツより前に特異体質者は存在したが、その存在を他の武家が隠匿したか、だ」
少なくとも、射累々天呼は、影明の稀血以上の特異体質は見た事も聞いた事も無かった。
「幸いな事に、アイツは自分の特異体質を十年以上も隠し通して来たみてェだ、とすれば、他の人間がその事実を知っている事は少ねぇだろう」
「つまり…影明は特異体質と言う理由以外で射累々家に引き取られたと?」
邪継舘散の質問に、彼女は肯定した。
「そうだ、そしてその内容だが、アイツは魑魅魍魎を鏡刃に宿している階級の低い猛能之武で、その実力を私が買ったと言う事にする」
「それは…」
かなり、強引なやり方だと思った。
当然、他の武家の目にも注意が引かれるだろう。
「当然、不審に思う武家は居るだろうな、特に
影明は、故郷が滅ぼされた後に、第九八区へ移った。
そして、猛能之武としての登録を首仏支部にて行っている為に、その事実が記録されている。
捏造や偽造が難しい為に、影明が自分の屋敷の区域に居た人物であると言う事は誤魔化す事が出来なかった。
「他の武家の区域から引き抜く程に、優秀な人材だとすれば、当然、他の武家からも探りがある、だから、影明の特異体質は、アイツが本格的に射累々家の所属になるまで、その存在は隠しておく、つまりは…この一件が終わるまで、奴の特異体質の調査はしない」
「…では、事件が片付くまで、どうすると?」
「出来れば、虚実を真実にしておきてェ所だ、アイツを射累々家に引き入れる理由は、魑魅魍魎の異能を扱えるからだ、…私はこれから、細工とかしなくちゃならねぇから…今回は、散、テメェに任せた」
「…分かりました」
「…んだよ、あの時の事を、まだ根に持ってんのかよ」
あの事とは、影明の生命力によって酔ってしまった事だ。
「いえ、別に、お嬢様が仰るのでしたら…今回の奴の育成、私にお任せ下さい」
今回の件で、何とかあの時の失態を取り戻せるのならば、邪継舘散は喜んでその決定を受け入れた。
「ねえねえ、あの時って何をしたのかしら?もしかして夜伽?」
思わず聞いてしまう射累々冥冥。
興味津々な彼女に、射累々天呼と邪継舘散は口を閉ざしていた。
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