第22話 フェアリーだって?保護しなきゃ!
次の日の昼過ぎ。自室でアキトはげっそりとした様子でかつ、自己嫌悪で落ち込んでいた。昨晩、お
DT卒業してまだ間もないアキトにとって、複数人プレイはハードルが高すぎた。かつ、ガイアはその容姿もあって、アキトは勝手にガイアを妹認定していた所もあり、アキトはガイアとそういった行為に及ぶことにかなりの抵抗を示した。
結果、ガイアは泣き出してしまい、アキトはアーシェの説教を食らう羽目になる。その間アウラはずっとアキトの背中に「当ててんのよ」攻撃でアキトの理性を削っていた。
「良いですか?アキト様。日中、下っ端の神様の役割について説明しましたよね?そして神様は人間より上下関係が厳しいんです」
「う、うん」
「下っ端の神様は実力でも能力でも絶対に上位の神様には敵いません。更に神様の仕事は多岐に渡りハードで、役に立たなかったり、主神様の気分しだいで使い捨てられることも多いんです。既にアキト様は実例をご覧になっていますよね?」
「あ・・」
「ならば、下っ端の神はこう考えるんです。主神様の覚えがめでたくなれば、捨てられることはなくなるだろうと」
「で、でも俺はそんなことは・・」
「えぇ、アキト様はお優しいです。恐らくそんな事はしないでしょう。でも、もしかしたらエリミナーデ様に捨てられるかも知れない。そしてアキト様はエリミナーデ様のそんな行為を許すでしょうね」
「・・・・・・」
「彼女達は不安なんです。従属神は主神に仕える為に生まれてくるんですから、捨てられるということは自分自身という存在への否定になるんです。だから今後何千年、何億年もの間、いつ捨てられるか分からないという恐怖に怯えてるんです。なのでアキト様からの【お
「・・・・・・」
「アキト様が彼女達の事を思い、大事にする・・情けをかけるのなら、アキト様のそのお気持ちを行動で示して上げて下さい。そして、アキト様が守ってくれるんだという確かな証拠・・愛を感じさせてあげて下さい」
「・・・・・・」
元々アーシェに口論で敵う訳もなく、一方的に言いくるめられたアキトは、アーシェとアウラの左右からの「当ててんのよ」攻撃で理性を更に削られ、むくむくと起き出してきたアキトの本能をガイアがその小さな舌でチロチロっと舐めた時、アキトの最後の理性の砦が破壊された。本能が三人の体を蹂躙し、激しく愛し合った4人は夜が明ける頃にやっと眠りにつき・・そして現在、アキトはまさか自分がそんな人間だったとはと落ち込んでいたのだ。
そんな中、ドアがノックされる。
「ん?どうぞ」
入ってきたのはフレアだった。
「どうしたにゃあ?アキト様。やり疲れちゃったかにゃあ?」
「ん?いや・・俺って駄目だなって。我慢が効かないなって反省してたところ」
「男ってそういうもんにゃあ。種を蒔いて子孫を増やそうとするのは正しい本能にゃん。アキト様が正常だという証拠にゃあ」
「・・・・・・」
「理性で全部我慢できるにゃら、争いにゃんて起きないにゃん。むしろアキト様が頑張ったお陰であたい達は安心していけるにゃん」
「そ、そう?」
「だから明日はあたいとディーヴァも可愛がってくれると嬉しいにゃん」
「・・・・・・」
「あのね、アキト様よく考えて欲しいにゃん」
「うん?」
「アキト様のえっちに耐えられるのはこの世界ではあたい達だけにゃん。そしてあたい達も同じ。あたい達のえっちに耐えられるのはアキト様だけにゃん」
「あ・・」
「あたい達がアキト様以外になびく事はにゃいけど、アキト様に愛されなければあたい達ずっと淋しいままだにゃあ。だから【お
「・・うん」
「にゃから、元気出して欲しいにゃん」
そう言うと、フレアは不意打ちでアキトにキスをする。
「!?」
「お昼ご飯は出来てるにゃん。お腹空いたら何時でも食べていいにゃん」
フレアの思わぬ行動にアキトが固まる。フレアは顔を真っ赤にしながらそう言い残してアキトの自室から出ていった。すると入れ替わりで
「良いですねぇ。ハーレムっぷりが板についてきましたねぇ」
ニヤニヤしながらアーシェがアウラとガイアを引き連れて現れた。
「御寵愛頂き、真にありがとうございました」
「アキト様、ありがとうなの。ガイア嬉しかったの」
「さぁ。アキト様、ご飯食べて元気を出したら、ちょっと相談事がありますので聞いて下さい」
「え?何の?」
「それは食後に説明しますね。ほら、さっさとシャワー浴びてリビングに来て下さい。待ってますから」
「う、うん」
食後、アキトが落ち着いたのを確認してアーシェが話し始める。
「実はですね、先日もお話した希少生物についての相談なんですが」
「うん」
「この世界にはフェアリーや精霊、神獣や聖獣なんかもいる訳なんですよ」
「ほぉ!」
「それでですね、実はアキト様がこの世界に来るちょっと前、ある山の奥に住むフェアリーが人間に見つかり、襲撃を受けました」
「え!?襲撃!?」
「えぇ。フェアリーの羽は貴重な回復薬になりますので、その伝承を知っている人達がたまたま見つけたフェアリーの里を襲い、沢山のフェアリーが捕まりました」
「その子達を助けるってこと?」
「捕まったフェアリーはもう助けられません。羽を毟られてしまいましたから」
「・・・・・・」
「ですが、フェアリーの里にはあと2匹、難を逃れたフェアリーが隠れ住んでいます。そして、味をしめた襲撃犯が隠れたフェアリーがいないか明日再度調査を行うことになっています。しかし、それを抜け駆けしようと二人ほど現在フェアリーの里に向かっています」
「その子達の保護ってことか」
「この世界は基本、弱肉強食です。フェアリーも弱かったから羽を取られ殺されただけです。私達だって魔石を取るだけのために散々ドラゴンを殺してきましたからね。襲った人間を悪く言うつもりはありません」
「!・・そう、だね」
「でも、フェアリーはその2匹の他は、あと一箇所あるフェアリーの里に住む326匹だけになってしまいました。このままでは絶滅の危険性があることだけお伝えします」
「助けろってことじゃなくて?」
「ですから、この世界は弱肉強食が基本的なルールなのです。戦う力がなければ逃げればいいんです。相手に見つからなきゃ良いんです。ですがフェアリー達はそれが出来ませんでした。なので絶滅するかも知れないというのはフェアリー達が招いた結果なのです」
「・・じゃあ、何でそんな話を?」
「絶滅したあとでアキト様が知ったら、なんでもっと早く教えなかった?と言われると思ったからです」
「そんなの助けに行くに決まってるでしょ。場所を教えて!」
「はい。マーキングしましたのでマップの確認お願いします」
と、アーシェが抱きついてきた。
「ごめん、エリちょっと行ってくる」
「は~い、いってらっしゃい」
「うん、んじゃ行くよ!」
転移した場所は沢山の花が咲いていたであろう花畑だったが、大部分が踏み潰され、周囲にあった木は伐採され根本から切られ無くなっていた。
「これは・・」
「えぇ、本来ここは人が踏み入れられない程の深い山の奥です。ですが、見つかったということは、フェアリーがどこかに遊びに行った時に見つかって後をつけられたんでしょうね」
アキトが見るも無惨な状態の花畑の中からフェアリー達を探そうとキョロキョロと周囲を見回す。すると花の間から飛び出した2つの影があった。それは凡そ15cmほどの小さな羽の生えたフェアリーで、アキトの周りを飛びまわる。
「かみさまきた。かみさまきた」
「たすけて。たすけてかみさま」
「こわいの。こわいのくる」
「かくれた。かくれた」
「良かった、出てきてくれて。うん。怖かったね。でも今、なんとかするから待っててね」
「ありがと。ありがとかみさま」
「やさしい。やさしいかみさま」
「この子達って何を食べるの?あーちゃん」
「フェアリーは主食が花の蜜です。贅沢品として蜂蜜も食べます。なので花畑がないと生きていけません。ですから、花畑がこの状態では今日、明日捕まらなかったとしても・・」
「その、もう一箇所のフェアリーの里につれていくのでは駄目かな?」
「おそらく追い出されるでしょうね」
「じゃあ、とりあえず今は家につれて帰るしか無いか」
「ですが、花畑はどうします?魔法で出しても魔素が足りないかもしれません」
「とりあえず、蜂蜜で様子を見て・・この子達が安心して暮らせる環境を探そう」
「一番安全なのは家ですよ?エリミナーデ様の庇護がありますから」
「・・そうか、でも部屋を創るとして、新しい部屋に土をまいて種を植えてでどの位で花が咲くんだろう?」
「どこか荒らされていない花畑を見つけて土ごとごそっと持っていったら良いんじゃないですか?」
「あっ、そっか」
「ただ、なるべく自然に近い環境にしないといけないので、家のなるべく上の方か壁際で風や光が入りつつ、外敵が来ないような部屋にしてあげなくてはなりませんね」
「ふむ・・まぁ、んじゃk」
「おいっ!何だお前ぇ。そのフェアリーは俺達の物だぞ!?」
「お、いい女・・エルフか!たまんねぇなこりゃ」
アキトが声のした方を見るとまるで山賊のような格好をした男が二人居て、こっちに剣を向けていた。
「あ~、あいつらですね。この里を荒らした奴らは」
「こわいの。こわいのかみさま」
「たすけて。たすけてかみさま」
「おいっ!痛い目見たくなかったらフェアリーと女を置いていけや!」
「そうだ!一人で逃げるんなら助けてやるよ」
山賊風の男達は、身なりが良くエルフを連れており、体格は良いものの武器も防具も装備していないアキト達を見てどこかの貴族のぼんぼんだと勘違いした。
だからちょっと脅せば逃げるだろうと思いこんでいた。勿論、貴族の息子に喧嘩を売ってその後揉めるのはやばいと分かっていたため、後ろから切りつけて殺し、死体を山に隠し証拠隠滅を図るつもりであった。
その思い込みの所為で、この深い山の中にある秘密の花畑に身なりが良く、武器も防具もつけていない姿でアキト達が存在していると言う違和感に気付かなかった。
「ほら、貴方達。危ないからこっち来なさい」
「うん。かみさま」
「わかった。かみさま」
素早くアーシェがフェアリー達を保護する。アキトが対応しようと身構えたのを見て、二人の男は武器を振りかぶって襲いかかってきた。
アキトは身構えたまま、しばらく動かなかった。この二人をどうするか悩んでいたからだ。
きっと殺すのは簡単だ。圧倒的なステータス差でただ手を振れば相手は勝手に死んでいくのだから。
だけど人を殺す忌避感がある。自分は簡単に殺戮マシーンになりえるステータスを持っているのだから、一度殺してしまうと、その時、その場面にどんな理由があるにしても、いずれ人を殺すことに慣れてしまうかもしれない。他人の痛みに鈍感になってしまうことへの怖さもある。
更に、アーシェは言っていた。俺達も自分の都合で魔石を集めるためにドラゴンを散々殺してきた。こいつらとやっていることは何も変わりないと。
今回、自分がフェアリーを助けたいという気持ちを優先するためにこいつらを殺すのは、単に強ければ何をしても良いと言う悪習に自分が染まってしまうことになる。それは驕りなんじゃないかと。
だけど、フェアリー達やアーシェを物扱いしたこいつらを許せない気持ちもある。しかも俺を殺そうとしている明確な敵だ。
様々な感情や思いがアキトの中で渦巻く。男二人が動こうとしないアキトの頭に剣を振り下ろそうとして・・消えた。
アキトは散々悩んだあげく、二人を遠い海の上に転移させた。勿論二人がそのまま死んでいくことは確定であろう。アキトは両膝を付き、涙を流す。
「あれ?えっと、なんで?」
「アキト様!大丈夫ですか?」
「かみさま。いたいの?」
「いたいの?いたいの?」
アキトは何故、自分が涙を流しているのか理解できず困惑した。
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