第18話 同士Lv10の猛者
夕方、アキトが冒険者ギルドを訪れると受付嬢の前にギルドマスターがいました。ありゃ、まさかギルドのトップを待たせてしまうとは。ついつい頭が下がります。
「すみません、お待たせしてしまいました」
「いえ、こちらこそお呼びだてしてすみません。今日はお一人ですか?」
「えぇ、まぁ。」
「そうですか、どうぞこちらに」
案内されたギルドマスター室に入ると、沢山の料理、そして飲み物が見受けられ、副ギルドマスターの二人もいました。
「これは?」
「まぁ、相談事があるというのは本当の事なんですが、そういえばアキト様にうちに就職して頂いたのに歓迎会をしていなかったなと思いまして。ささやかながら準備させて頂きました。どうぞおかけになって下さい」
「あ、あぁ何か気を使って頂いてしまってすみません」
「いえいえ、こちらが勝手に準備しただけですので。夕飯まだ?ですよね?」
「はい、まだです」
「良かった。どうぞ先ずは軽く喉を潤して下さい。ジュースとお酒どちらがいいですか?」
「あぁ、お酒あるんですね?ん~どうしようかな?でも、とりあえずジュースで」
「はい、どうぞ」
副ギルドマスターでシリウスさんの妻のマリアさんが俺にジュースを注いでくれる。うん、美味しい。こっちのオレンジジュースは味が濃いのに飲み口スッキリって。これの銘柄聞いて買って帰ろっと。
「それでアキト様も私に報告があるとのことでしたが・・どうしましょうか?先に私の相談事を聞いて貰っても宜しいでしょうか?」
「えぇ、構いませんよ」
「実は、アキト様達が提案された新しい世界儀の設置について国としては賛成の方向で話が進んでいます」
「ふむふむ」
「その為、それに伴う国内で起こり得る問題等に対処するため、現在様々な対応に取り組んでいる最中なのですが、どうしても確認したいことがあって、その為今回アキト様にお出で願いました」
「ふむふむ」
「新しい世界儀の設置から機能するまでの期間はどの位かかるものでしょうか?」
「ふむ、それは1時間って言ってましたよ」
「1・・時間?」
「えぇ」
「そんな簡単に?」
「設置してから世界儀の座標登録の設定を行うのにその位かかるって言ってました。それさえ終わっちゃえば、ギルド員が各自、魔石にギルド会員証の情報を読み取りして貰って新しいシステムに移行させれば、今まで通りの使い方が出来ますよって言ってましたね」
「・・そうですか、ありがとうございます」
「なので、飛行能力や高速移動能力持ちは当日王都に集めておいたほうが良いよっても言ってましたね。すぐに転移システムを使えるようにするためにって」
「そうですね。手配させて頂きますが、設置はいつ頃になりそうですか?」
「まぁ、正式に国からの返答を受けた訳じゃないので。ですがオフレコなんですけど、すでにエンシェントドラゴンの魔石は取ってきました」
「えっ!?」
「あと2つ集めたら作成開始するけど3週間掛かるって言ってましたね」
「・・あ、あぁ、そうですか」
「そこでこちらからの報告なんですが、エンシェントドラゴンの魔石って20m位の大きさの球形なんですよ。」
「にじゅっ!?」
「で、世界儀に改造したとしてもさほど大きさは変わらないそうなので、設置場所の確保が必要なんじゃないかなと思いまして」
「ず、随分大きいんですね?」
「そうですね、本体の大きさがちょっとした山より大きかったですからね。でももっと大きい魔石もあるみたいでして」
「20mよりも大きいのが!?」
「リヴァイアサンってモンスターがいるみたいで、全長30kmの体で魔石が100m超えるらしいんですよ。まだ見た事は無いんですけどね」
「リヴァイアサン、いたんですかこの世界に。しかも全長30kmですか。本当にこの世界は広すぎますよね・・」
「そうですね」
「ま、まぁ、ではそれが設置できる場所の確保も必要だと言うことで情報共有行っておきますね」
「お願いします」
「となると、かなり重いんでしょうね。設置するとしたら地下、もしくは1階・・?」
「と言うか、一度に全てが見渡せないから周辺にテレビカメラ設置しなきゃいけないんじゃないの?」
「おいっ、お前ら。それは後にしろ!」
「まぁまぁ、シリウスさん。そうですね、ちょっとしたビル1個分の高さはありますからね。台座を含めるともっと高くなるでしょうし」
「そう言えば台座もかなり硬度の高いものを使わないと支えきれないんじゃ・・」
「えぇ、エンシェントドラゴンの骨を使います」
「え?でも良いんですか・・?」
「えぇ、勿論」
「ありがとうございます」
「いえいえ、こっちは明日にはまた大きな魔石を取りに行くので余裕持っても1ヶ月あれば準備出来ると思います。でも国の方が場所の確保が大変じゃないかなって思うんですが?」
「まぁ、場所さえあれば土魔法で割と早くは作れますので・・でも、そうですね。流石に1ヶ月では厳しいかも知れません」
「まぁ、国としての方針が決まったらまた連絡下さい」
「いや、本当にありがとうございます。助かります」
「いえいえ」
「じゃあ、お食事、冷めない内にいかがですか?」
「じゃあ、折角ですのでご馳走になりますね」
「はい」
「こうやって見ると、基本的に日本料理が多いんですね」
「あ~、やはりアキト様は元日本人でしたか」
「えぇ。やっぱり分かっちゃいます?」
「えぇ、仕草や態度などで」
「もしかしてシリウスさんも?」
「はい。私だけではないです。この間、面接の時に会った国王、王妃、鍛冶ギルドマスター、商人ギルドマスターもですね」
「ほほぉ、そうなんですか?」
「その他にもこの国には結構いますよ」
「え?そうなんですか?そんなに転生者多くて大丈夫なんですか?」
「そうですね、まぁやんちゃする奴は多いですよ?特別な力を持った事で勘違いするやつもいます。元が若い子に多いですね。そう言えばアキト様は元はお幾つで?」
「30歳です」
「あぁ、なるほど。通りで落ち着いていらっしゃると」
「いやぁまだまだですよ。ところでシリウスさんは?」
「私は20歳です」
「ありゃ随分若く・・」
「えぇ、実は私と国王カリム、王妃アーミラ、鍛冶ギルドマスターミナデと商人ギルドマスタービスタの5人は大学のサークルの仲間でしてね。旅行中に事故に・・ってパターンです」
「なるほど、そうでしたか。それでこちらに転生を?」
「はい。私達は最初はバラバラだったんですが、割と近くの村に住んでいたみたいで、10代の頃にはまた5人揃うことが出来ました」
「そうだったんですね」
「はい。ですが、その頃はまだこんな立派な国じゃなくて、本当に小説みたいな感じでしたよ。山賊は現れる、人攫いも現れる、モンスターも暴れまくるで秩序も道徳もない。弱いものはただただ虐げられ、強ければ何をしても良いみたいなね、そんな感じでした」
「・・・・・・」
「たまたまね、私達はそれなりに戦える力を持ち、5人で協力出来たのでここまでこれましたが、その道中助けられなかった人や殺した人の数はかなりのものです」
「・・・・・・」
「そんな殺伐とした世界で生きていると、やっぱり日本って平和で良かったよなって郷愁の思いに囚われるんです。だから、日本に似たこの国を作ったのです。子供達が飢えなくても済むような、モンスターに襲われなくても済むようなそんな場所が作りたかったのです」
「そうですか・・ただただ、その思いには感服するばかりですね」
「そうですか?ありがとうございます」
「私はね、実はまだこの世界に来て日が浅いんですよ。だからこの世界のことをまだ理解しきれてないんです」
「浅いとは?ちなみにこの世界に来て何年位になるんですか?」
「えっと・・10日位?」
「あぁ、もしかして神様経由の特別な転生パターンですか?」
「まぁ、そうなるのですかね?確かに神様のところに行ったし、肉体も創ってもらっいましたし」
「そうでしたか。と、なると女神様達もアキト様を追いかけて来たってパターンですね」
「まぁ、そんな感じですね。この間の面接の時に私の隣りに座ってた女性が妻なんですが、実は女神様でして。後の人達はその女神の従属神達なんです」
「そうでしたか。随分と綺麗な女神様と結ばれたんですね」
「ありがとうございます。そうですね、不思議な縁もあったものです」
「ところで話を変えて申し訳ないのですが、こちらの世界に来て何かお困りのことや欲しいものとかはありませんか?この王都であれば日本由来というか、馴染のものを揃えてますので同郷の士として融通させて頂きますよ」
「そうですか、それは助かります。やはり食事関係は妥協出来ないんですよね」
「分かります。やっぱり食事って大事ですよね。名も知らぬ偉大な先達が創り上げた料理、そして調味料の数々。この世界に来て本当、彼らの偉大さを理解しました。その努力に頭が下がる思いです」
「いやぁ、同感ですね」
「そう言えば既にカレーは試しましたか?」
「あっ!そういや、まだでしたね」
「では、カレー粉を準備させて頂くので帰りにお持ち下さい」
「いえいえ、そう言う訳には・・」
「いえいえ、今日は沢山の情報を頂いて本当助かってるんです。私共の気持ちとして受け取って下さい」
「そうですか。なら、すみません。ご馳走になりますね」
「いえいえ、食事関係以外でお困りの事は何かありますか?」
「う~ん、そうですねぇ・・ぱっとは思いつかないですね」
「ふむ・・こちらの世界に来てまだ10日であるのにも関わらず、食事以外がないとすれば、衣食住の他、三大欲求も満たされているという事ですね。分かりました。もし、娯楽とか趣味あたりで何かお悩みとかお困りの事があれば出来うる限りの対応をさせて頂きますね」
「え?三・・あ、ありがとうございます」
「あぁ、そう言えば奥様達は化粧品とかアクセサリーとかには興味はないですかね?」
「あ、あぁ、どうでしょう?先日アクセサリーを贈った時は喜んで貰えましたが」
「そうですか・・いや、あまり大きな声では言えないんですけどね、アキト様ちょっとこちらへ」
「ふむふむ」
アキトとシリウスが部屋の端っこに移動する。ミリアとマリンはまた野郎共が何かバカやってんなという感じで呆れつつも気付かないフリをする。
「実は、女性の美に対する欲求ってものすごいんですよ。小説あたりではテンプレらしいんですけどね。気付いてましたか?」
「ほぅほぅ、いや、お恥ずかしながら。そのアクセサリーも女性からアドバイスを貰って買ったものでして」
「なるほど。なので、心の奥にその事を留めて行動しないと痛い目を見ることになります」
「まさか、シリウスさん?」
「えぇ。昔、痛い目を見ました。恐らくこれに関しては個人による好みとかはあるかもしれませんが、種族は関係無いのだと思います。なので特別な異性でなくても有効的な手段であることは覚えておいたほうが良いです。王都の流行りくらいでしたら、私もアキト様に情報は流せますので」
「なるほど。良いことを聞きました。頼りにさせてもらっても?」
「勿論です。ちなみにその美の欲求にはせっけん、シャンプー、リンスなどの他、保水液や乳液、化粧品、スキンクリームといった自身を綺麗にする物の他、香水やアクセサリーや、下着、服など身に付ける物も多岐に渡ります」
「・・下着もですか?」
「見せて褒めて貰いたいという女心です。そして、下着姿を見せて興奮させる挑発的な使い方もしますね。魅惑的な悪女を演じているようなものです。だから、やりたいからってさっさと脱がすマネなんかしたら・・痛い目を見ます」
「シリウスさん、あんたって人は・・俺は今、肝に命じましたよ」
「お役に立てて何よりです。本当であればエルフに関することなら色々アドバイス出来るのですが、ちょっと妻達の目も冷たくなってきていますし、また機会があれば」
「分かりました。興味があるので、また後日」
席に戻ったアキトとシリウスは満面の笑みで握手した。それをミリアとマリンは、やっぱ男はバカなんだなと呆れながら見ていた。
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