第19話 魔石回収
次の日の朝、アキトは全員をリビングに集め、今後の予定について相談した。
「昨日、ギルドマスターにはあーちゃんから教えて貰ったことは伝えたし、魔石が大きいことも伝えました。一応ね、新しい世界儀に変える方向で話は進めているって言ってたから、恐らく今日あたりまた国で相談するんだろうけど、俺達は俺達でその準備の方進めたいなって思うんだ」
「良いんじゃないですか?魔石確保しておけばいつでも作業出来ますし」
「で、さっくり2個魔石を取ってきて、後はまったりしようかなと考えてます」
「前向きなのは良いことですが・・アキト様。同士Lv10の猛者からいろいろ御教授頂いていたみたいですが、期待して良いんですかね?」
「うぇ!?あ、いやあの、まだまだ修行中の身でして・・」
「そうですか。それならアキト様の成長を私達全員期待していますね」
「うぅっ」
「では先ずはブラックキラードラゴンの方に行きますか」
「どんな場所?」
「地下の洞窟ですね。かなり大きく深い洞窟なのですが、ジメジメとしており節足動物やそれをエサとするコウモリなどが沢山います。その最奥にブラックキラードラゴンがいます」
「虫かぁ、ねぇ、あーちゃん。他に大きい魔石持ってるモンスターいないの?」
「20mクラスの魔石だと先日お話したブラックキラードラゴンとエンペラーストームドラゴン。あとは水棲系の巨大生物は魔石が大きくなりやすいんですが、20mってのはなかなか。20m以上なら幾らでもいるんですが・・それにシステム上ドラゴンの魔石とリンクさせるならやっぱりドラゴンの魔石の方が相性いいですね」
「そうか、仕方ないのか」
「アキト様、虫嫌いですか?」
「いや、一匹とかだったら全然平気なんだけど、ほら洞窟の中ってわんさかいるイメージがあってさ。それが嫌かな」
「ふ~む。とは言え魔晶石が取れる場所なんで潰したくはないんですよね」
「魔晶石?」
「その名の通り魔素を多く含んだ晶石です。紫に光り、アクセサリーや装飾にけっこう使われますね。それなりに高価なので確保出来るのならしておきたいですね」
「んじゃ殺虫剤っていうかそういう魔法?もしくは火?で何とかする方法ある?」
「洞窟の中で殺虫剤とか火はあまり宜しくないので、普通に消せば良いんじゃないですか?もしくは飛ばすかですね」
「消す?」
「えぇ、次元の彼方へぽいっと」
「ふむ、飛ばすって?」
「転移魔法で遠くにぽいっと」
「なるほど。自分を飛ばすんじゃなくて相手だけ飛ばすのか」
「まぁ、転移魔法で海に捨てるのがこの世界でサイクルするので良いかも知れないですね。問題は動いている相手にアキト様が転移魔法を掛けられるかですね。まぁ練習には丁度良いでしょう」
「ふむ、もしかして失敗すると虫に集られる?」
「そうですね。ですが、アキト様が虫に噛みつかれたり毒を食らうってのはないので、我慢できれば良い練習になりますね」
「うぅ・・仕方ない。行くか」
「洞窟の入口をマーキングしましたので頑張ってきて下さいね」
「え?あーちゃん来てくれないの?」
「えぇ、これから皆さんと女子会なんです」
6人が並んでニコニコとした笑顔を見せてくれる。こんなタイミングでなければきっと俺の心は癒やされていただろうに。
「・・行ってきます」
「「「「「「いってらっしゃ~い」」」」」」
アキトの姿が消えるとエリ達6人は丸く座り膝をつきあわせる。
「アーシェ、本当なの?その夫が御教授頂いているって話は」
「えぇ。ただ、まだ実践的なイロハのイの第一歩って所ですがね。あの調子ならちょくちょく顔を出して良い友人関係を築いて行くと思いますよ」
「アーシェの狙い通りってことなの?」
「そうですよ。こっちが脅せば困った彼らは付け入る隙を何とか見つけようとします。それが彼らと同じ世界から転生したアキト様です。となれば必死にアキト様に気に入られようと手を尽くす訳です。そこでアキト様が彼らに対し真摯に対応すれば、彼らも真摯に対応するでしょう。アキト様を裏切ったら終わるんですから。まぁでも彼らは同士ですからね。きっと仲良くなれますよ。なんだかんだ言って、同じ趣味の同性の友達って大事ですからね」
「そう。全て良い方向に向かっているのね」
「えぇ、間違いなく。ただ彼らが調子に乗ったら私が釘を刺してきますので」
「そう、ならそっちは任せたわ」
「はい。ところで今日はアキト様大分落ち込んで帰って来ると思うので、エリミナーデ様よろしくお願いしますね」
「だって、それが妻の役目ですもの」
中央サークル王国ではシリウスが緊急招集を行い、重鎮による会議が開かれていた。
「何だ?やっぱ「俺はエルフスキーです!」が効いたか?シリウス」
「そんな訳あるか、バカ。ミリアに助言貰ってな、アキト様の歓迎会をしたんだよ」
「ほぉ。懐かしいなその響き」
「そうね」
「で?どうなったの?」
「結論から言うと、仲良くなれた」
「そうか、良くやったシリウス」
「で?いろいろ聞き出したんだろう?」
「あぁ、先ずは新しい世界儀は設置から1時間掛けて座標登録設定を行った後、現在使用しているギルド会員証をシステム更新すればそのまま使えるそうだ。なので、そこから国内の測量を行い転移システムを開放していけば問題ないらしい」
「じゃあ、上手く行けば1日~2日で何とかなるの?」
「そういう事だ」
「良かったぁ、なんとか被害は最小限に出来そうね」
「ただ、新しい世界儀は大きさが20m位だそうだ。台座を含めたら下手すると30m位にはなるかもしれん」
「は?・・」
「ちょっ・・」
「そんなもんどこに置くのさ?それだけの大きさなら重さだって結構あるだろ?」
「だから、会議を開いてるんだろうが」
「いや、つってもでかすぎねぇか?」
「そっか、あれじゃね?今まで電話線だったのを光ケーブルにするからルーターとか、サーバーをそれなりの容量のやつにしないとパンクしますよってことじゃね?」
「いや、それは分かるんだ。でもなんでこんな大きさに?」
「しょうがないんじゃない?半径が100kmまで伸びるんだから、レベチでしょ?今までとは」
「「「「・・・・・・」」」」
「工事しなきゃいけないのは確定なんだからもうごねるな。それよりアキト様達はあと2個の魔石を今頃取りに行ってるはずだ。で3つ揃ったら作業を開始し、その作業も3週間で終わるんだと。だから余裕を見てあと一ヶ月でアキト様側の準備は整うとのことだ」
「「「「・・・・・・」」」」
「どう考えても一ヶ月じゃ無理・・」
「だから、そこは待って貰うしかないだろう?それより国としての返事はどうする?」
「勿論、新しい世界儀に変更する」
「分かった。そう伝える」
「だが、その前に工事の見積もり出させろ。値段はこの際仕方ない、とにかく工事期間だ。それがどの位掛かるかが知りたい」
「落ち着けカリム。どこを工事するかを決めないとそこにいけないだろう」
「ビスタ、最適な場所はあるのか?王宮は最悪どっかぶち抜くから構わないが」
「ん~、一回持ち帰らせてもらわねぇと今は返事できねぇ」
「ちなみに天啓は?」
「慌てるなだってさ」
「そうか・・とは言えあまり女神達を待たせたくはないな」
「とりあえず場所は考えるからさ、そん時は冒険者ギルドから臨時で土魔法使いだしてくんね?」
「あぁ、緊急招集出しとく」
「んじゃあシリウス、土地が決まり、工事が始まったら改めて返事することにする。いいな?」
「分かった」
「ところでよ、シリウス」
「ん?」
「アキト様と仲良くなったって言ってたがどんな話をしたんだ?」
「あぁ、やっぱり女神様経由の転生者だった。そして女神様が妻だってさ」
「そっかぁ。でもまぁ、女神様が付いていたら悪性だろうとなんだろうと関係ないな」
「まぁ、でも話してる分には悪性の感じはしなかったな。この国の起こりを軽く話したが俺達の行動に敬意を表されたよ」
「・・そうか。他には?」
「元が30歳だってさ。恐らく社会人としてのマナーは叩き込まれてるんだろうな。落ち着いた印象を受けた。だが、間違いなく同士だ」
「そっかぁ!良くやったシリウス!」
「ちなみに何の同士なんだよ?」
「普通に
「ったく、本当に男ってバカね」
「ドワーフは!ドワーフ!」
「んなもん自分で聞けよ」
「んじゃシリウス。次は俺も呼べよ」
「もうちょっと仲良くなったらな。今はまだ何とか+にしたところだ。お前がもし0どころか-にしたら終わっちまうだろうが」
「なぁシリウス。アキト様の奥様は人族の神と見た。エルフで興味があるってのはどういう事だ?」
「単に知識欲なのか、ハーレムしてるからなのかは分からん」
「ふ~む、とりあえずシリウスから見てアキト様は善性なんだな?」
「恐らくとしか言えない。ただ普通に人の良い印象を受けた。礼を尽くせば礼で返してくれると思う。ただ、もし利用したらアキト様は我慢しても女神様が吹っ飛んでくるかもしれん」
「・・だろうな」
「まぁでもよ、ここ乗り切れれば大分楽になるんじゃね?最低でも今判明しているところが100kmずつ広がるんだから。それにアキト様がいろいろ広げてくれる気するんだわ」
「だなぁ」
その頃アキトは洞窟を出口に向けて走っていた。
「こんなでっかい虫だなんて聞いてないよぉ!」
アキトの後ろからは体長5mはあるムカデやゲジゲジが走って追いかけてきていた。そしてそんな節足動物をエサにする20m程の大きさのコウモリが更に後ろからバッサバッサと追いかけてきていた。
「あ~もう、仕方ない!これでもくらえ!」
アキトが放った風魔法はムカデやゲジゲジのみならず、コウモリや洞窟の壁、鍾乳石をも壊し、洞窟の中がひどく荒れた状況となった。
「うぅ、転移は時間がかかるから接近を許しちゃうし、こんなに来たら練習どころじゃない。もうさっさとブラックキラードラゴンだけ倒して他の場所で練習しよう」
アキトは風魔法でモンスターを周囲の環境ごと破壊し、環境だけを修復することを繰り返しながら先へ進んだ。途中、紫に光る晶石を見つけたため、そこだけは丁寧に取りきった。更に暫く進むと巨大な黒い龍が居た。
「こいつか。んじゃさくっと」
アキトが風魔法でブラックキラードラゴンの首をはねると、そのまま首も胴体もアイテムボックスにいれた。
「う~何とか目的は果たせたけど疲れちゃったな。あと一個はもう明日にする」
アキトは自宅に戻るとシャワーに直行。その後エリの膝枕で上手く行かなかったことを愚痴っていた。そんなアキトをエリは頭を撫でながら優しい笑顔で見つめるのであった。
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