第16話 新システム構築にはお金がかかるよね

 中央サークル王国では、再度重鎮達による会議が行われていた。


「えっと?要は今のシステムじゃ効率が悪いから、新しいシステムを作るよ?システムが変わるから今までのデータはパーだよ?しかも入れ替えの際に国民の生活にも支障が出ますよ?もし測量中に何かあれば国庫空にしてでも援助しろよ?でも言うこと聞かないならそのうち私達はいなくなりますよ?ってことか?」


「まぁ、ぶっちゃけるとそんな感じだな」


「急に無茶言い出した・・のか?でも測量に関することだしな」


「ねぇ、神様達がいなくなるってのはこの世界から?それともこの国から?」


「この世界って言ってたな」


「なら!」


「世界を壊して去ることだって考えられるだろう?」


「っ!?そ、そうよね・・」


「いいか?皆よく聞け。女神様達は一日で金山を見つけてきた。世界儀を詳しく調べたが、ほぼ真っすぐに向かってる。つまりそこに金山があることを知っていた訳だ。そして、この王国から見て8万㎞先にエンシェントドラゴンが居ることも知っていた。と、言うことは恐らく世界を見通せるんだろう。つまり、俺達の会話も知られていると見たほうが良い」


「下手なことは言うなってか?」


「あぁ、そうだ。アーミラ、怖いのは分かるが発言には気をつけろ」


 表情を強張らせながらコクコクと頷くアーミラ。


「要は一択ってことか?ビスタ。天啓は?」


「神の試練だってさ」


「神の試練かぁ、そのまんまだな。世界儀を作るのは一週間らしいが、設置から起動までどれくらいかかるかだな。あとは転移システムの再構築にどれくらいかかるか?かぁ」


「だから試練なんだろう?各市町村に食物、資材の備蓄とシステム休止の間だけでも転移による流通網に関わらない、通常の流通網の準備と徹底した周知、後は何だ?」


「突発的なモンスターの襲撃に迅速に対応出来ないから、兵士、冒険者の配備だな。だがこれは全市町村に配置するには数が足りない。予測出来る場所だけに振り分けるしか無い」


「だが、それで突発的な大事故や災害が兵士や冒険者達が居ない所で起きたらどうする?」


「いっそ、国民を少しまとめるか?」


「いや、それは無理だろう。工業は数日止められたとしても、農地や養殖関係はダメージでかくなるぞ?」


「「「「う~ん・・」」」」


「更に問題がある。新しい世界儀の値段は俺達が決めろって事だ。つまり、神の仕事に俺達が値段をつけなきゃいけない」


「まじかよぉ~。そんなん、この国全部明け渡しても足りないって言われたらさぁ」


「それに関しては本当すまん。ミリアがつい聞いてしまったんだ。それを止められなかった俺が悪い。」


「いや、どっちにしろ神の仕事に対してどうせ何か捧げなきゃいけないんだからさ。聞いた方が分かりやすくて良いんじゃね?まぁ、んじゃ何贈るんだって言われたら困るけどさ」


「そうだな。シリウス、ミリアを責めるなよ?その事は仕方がない」


「あぁ、分かった。ありがとうカリム、ビスタ」


「しかし、まいったなぁ。確かに半径100㎞まで測量範囲が広がるのなら、未開拓地の手前まで行ければごそっと情報が手に入るようになる。更に安全地帯だけ選んで進めるようになれば確かに一気に測量出来るんだよな。国も広げられるかも知れないし、国民の安全地帯も増やせるかも知れない。でも入れ替えの間に何かデカいイベントが起きたら非難轟々だしなぁ。女神様達の事は国民には公表する訳にもいかねぇしな」


「そうだな。一種の賭けだな」


「国政を担う者にとっては万事が賭け事さ。負けないように散々手を使うだけで」


「ところでシリウス。お前が一番、女神様達とは会っているだろう?こう、何か良い情報はねぇか?」


「どんな情報だよ?」


「女神様達の関係性とか、人間性・・じゃねぇな神性?とかよ」


「う~ん、そう言われてもなぁ。分かることと言えば、以前お前達も見たから分かるだろうが、ギルド員になったアキト様を守るようにドワーフが居ただろう?そしてダークエルフやその他がアキト様と呼んでいることからアキト様は彼女達の中では上位なんだろうな。で、おそらくあの時アキト様の隣に座っていた女性が例の女神だろう」


「んむ。それは分かる」


「そしてアキト様は俺達に対して礼を尽くしてくれる。外見は現地人の様だが、あの感じは日本人っぽいし、もしかしたら女神経由の転生者かもしれんな。今のところ悪性は無さそうだが」


「そっかぁ、そのパターンなら女神様はアキト様の妻ってところか?」


「そうかもしれん。それなら、もし口説き落とすならアキト様からだが、ダークエルフがいつも付き添っていて、何かあれば口出ししてくる。恐らくスポークスマン・・いや秘書か?」


「ふむふむ。ガードは硬い・・か?でも、もし元日本人ならテンプレに乗ってくれないかね?カレーとか出汁とか?もしくはリバーシとかそんな感じで」


「あぁ、確かに初めて会った時に調味料を要求された。そう言えば、その中に出汁やカレー粉が入ってなかったな!」


「おしおし、貢物は決まったか?」


「いや、既にアキト様は多額の現金収入がある。それに王都で結構買い物をしているようだ。あまり希望を持ちすぎるな」


「そっか~。あとは、テンプレだと女神が妻ならハーレム作ってそうだよな。あの時アキト様以外全員女性だったしな。そっちの方は?」


「それは分からん。特別いちゃいちゃしている様子は見られなかったが・・」


「ふ~む、元日本人ならば同士だと良いんだが。それなら一気に分かり合えたりするよな?」


「ミナデの同士は少ないと思うよ」


「何でだよ!?ドワーフ可愛いじゃねぇかよ!YesロリータNoタッチの紳士原則をぶっちぎる尊い存在だぞ!?」


「尊くねぇよ、大声で何恥ずかしい言ってんだよ。このロリコン」


「ちょっと落ち着けミナデ。話が変な方向に行ってるぞ。ビスタも煽るな」


「・・すまん」「ごめん」


「だが、ぶっちゃけた話ミナデの言うように同士ならば一気に心の距離は詰められるかもしれんな。問題は何の同士かだが。ロボットとか戦闘狂とか強烈な性癖だったらどうしようもないけどな」


「ちょっとカリム言い方!特別な趣味って言いなさいよ!」


「あぁ、すまん」


「シリウス。お前、ギルド会員証でアキト様と連絡つけられるんだろう?ちょっと雑談振ってみろよ」


「・・それで怒らせたら世界が終わるんだが?」


「そこは、ほら。上手く、こう、何とか?」


「微妙な丸投げするな」


「とは言え、お前しかこっちから連絡つけられるのいないんだからさ、「俺はエルフスキーです!」って先ずは告白して反応見てくれよ!」


「ふざけんなよ!何でそんな小っ恥ずかしい事しなきゃなんねぇんだよ!そしてただの自爆だったらどうしてくれるんだよ!俺もう相手して貰えなくなっちまうかもしれねぇじゃねぇか!」


「ぷっ・・だ、だから、ぷぷっ。ちょっと落ち着けって。ぷぷぷっ。話がずれてるぞ」


「カリムも笑ってんじゃねぇか」


「ちょっとあんた達!真面目に会議しなさいよ!」


「そ、そうだな。少し落ち着こう・・でも「俺はエルフスキーです!」ってぷっ」


「カリム何そんなツボに入ってる訳?」


「ぷぷっ、だ、だってシリウスがぷっ、ま、真顔でそんな事言ってるぷっ、所を想像したら・・あははは」


「「ぎゃはははは」」


「お前らぁ・・」


 ビシッ!バシッ!スパーン!


「もう!あんまり巫山戯てるともう一発行くわよ!」


「「「すんませんでした」」」


「女神様達の事どうのこうのは一旦離れて真面目に考えて!要はどの位システムが停止するか分からないから問題なのでしょう?シリウス!あんたアキト様に連絡してどの位止まる見込みなのか確認して!あと飛行能力持ちは紙の地図でも持たせて当日全員王都に集まれるように予定組んで!」


「お、おう」


「カリム!ビスタ!あんた達は協力して王都と国の外周に近いところに備蓄増やすように言って!王都に近いところはすぐ助けに行けるんだから備蓄は少なめでいいわ。王都以外は内少なめ外多めで備蓄を配置するようにね!」


「「はい!」」


「ミナデ!あんたは飛空艇の計画早く進めて!」


「イエス・マム!」





 そんなこんなで会議を終えた冒険者ギルドマスター・シリウスはギルドマスター室で連絡用のカードの前で1時間以上悩んでいた。コールボタンを押せばアキトに連絡できるのだが、なかなかそのボタンが押せない。そんなシリウスの様子を副ギルドマスターである二人のエルフ、ミリアとマリンが見つめていた。実はこの二人、シリウスの妻達である。


「ねぇ、シリウスどうするの?あんまり夜遅くなると迷惑になるんじゃないの?」


「分かってる。分かってるんだが、今、どう会話を引っ張るかをシミュレーションしているとこなんだ。頼むから静かにしてくれ」


「コミュ障みたいなこと言っちゃって。普通に話せばいいだけじゃない」


「ミスったら全員死ぬかも知れない雑談なのにか?」


「考えすぎだってば。だったら何でわざわざ金山の情報くれたのよ?しかもアーカイヴによるとバダラ病?とかの特効薬の材料までわざわざ手に入れてくれたんでしょ?助けるつもりで集めてるのに何で雑談程度で殺すのよ?」


「それはそうなんだが・・」


「って言うか、シリウスに繋ぎを依頼しといて会議の中で話題提供無かったの?」


「・・無かったな」


 シリウスの返答を聞いてミリアとマリンは顔を見合わす。


(あれはあった顔だわ)


(ほんっと嘘が下手よね)


「いいから集中したいんだ。先に家に帰っててくれ」


「分かったわよ」


「早く帰ってきてね」


(落ち着け。俺の役目は新しい世界儀が設置されてから稼働し機能するまでの時間がどの位掛かるのかを確認するだけだ。そこにちょっと明るい感じのトークでアキト様の趣味、嗜好が確認できれば良いだけだ)


(って言うか、なんで俺だけこんな思いしなきゃいけないんだ?・・そうだ!アキト様を食事か飲み会とかに誘ってあいつらも呼んで巻き込んじまえば良いんじゃねぇか?ってことは?)


(まず転生者かどうかを確認して・・か?でも女神様と一緒にいるところを見ると特別な転生をしてきたということでほぼ間違いないと思う。なら元が何歳だったかだな。それで食事会か飲み会かで・・ってどうやって元の年齢確認すんだよ!?ってことはやっぱり先ずは転生者かどうかを確認してそこから会話を広げて・・)


 結局その後シリウスは1時間も考えたあげく、夜も更けたことから迷惑になると思い電話するのを次の日に回したのであった。





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今更ですが、実はアキトのアイテムボックスは女神様と従属神達とアーシェと共有しています。なので、こっそりサプライズでプレゼントなんて隠し事は出来ませんが、遠く離れた地で取った素材を受け取る、遠い地にいる相手にお弁当を渡すなんてことも出来るようになります。ちなみにそのアイテムボックスの大きさは地球と同じくらいの容量があります。












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