第15話 システム改造?
アキト達は火山と火山の麓で10個ずつ火の魔石と土の魔石を確保した後、冒険者ギルドに赴いた。魔石を販売する為、測量範囲を善意とは言え勝手に拡大したことを謝罪する為。かなり遠くに居るエンシェントドラゴンの魔石を確保出来れば更に測量範囲を広げることが出来ることを相談する為だ。
「あぁ、アキト様。先日は本当にありがとうございました。アキト様達からの情報を元にアーカイヴで確認し、どれだけの人数、資材が必要か把握出来ましたので、早速南東の大陸の測量及び調査・採掘を行うためのチームを作るため候補者に連絡を入れている最中でございます」
冒険者ギルドのギルドマスター・シリウスを中心にエルフの女性が二人並んでアキト達に対応しており、三人並んでアキト達に頭を下げていた。二人共、副ギルドマスターであるとのこと。
「そうでしたか。流石に仕事が早いですねぇ」
「いえいえ。と言うか、それはアキト様達の事ですよ。まさか測量士となってすぐに未開拓地の測量を成功させ金山まで見つけてしまうんですから。私共としては内心、かなり驚いてますよ。更には今回お売り頂いた火の魔石と土の魔石。丁度依頼があったもので本当助かりました」
「それなら良かったです。まぁ、私の場合は優秀な秘書と仲間達がいるお陰ですけどね」
「それは羨ましい限りです。ところでお話があるとの事でしたが、どうされました?」
「えぇ、実は測量の効率を上げたくてギルド会員証の端末を少しいじって測量範囲を勝手に広げてしまったんです。相談してからにすれば良かったのですが、出先で思いついてしまった為、つい・・」
「へ?えっ?・・え?」
「「・・・・・・」」
「いや、勝手なことをして本当に申し訳ありませんでした」
「・・えっと、どうしてそんな事を?って効率を上げる為でしたよね?すみません。っていうか、そんな事が出来るんですか?いや出来たんですよね。すみません」
「ちょっと貴方、落ち着いて」
「あ?あぁ、そうだな。えっと、ちなみに測量範囲はどの位広くなったんですか?」
「半径5000mです。以前の凡そ20倍です」
「「「はぁぁ!?」」」
ギルドマスターと二人の副ギルドマスターが驚愕の表情のまま固まってしまった。アキトは3人の俺を見る目が信じられないものを見るかのような怯えが混じったような目であることに気付いて、やっぱり失敗したかなと落ち込んでしまう。
「不味かったかなぁ?効率が上がるなら良いことだと思ったんだけど・・」
と小声で隣に座るアーシェに告げると、アーシェは笑顔を見せながら
『私に任せて下さい。何があっても黙って見ていて下さいね』
と久しぶりに頭の中に声を響かせてくれた。そしておもむろに両手を叩き、
「はいはい、こっちに注目!」
と3人の視線を集めた。
「良いですか?貴方達。自分の物差しで神を測ってはいけませんよ?」
「っ!すみません!」
「「すみません」」
「今回はアキト様の冒険者ギルドの会員証の端末を弄り、測量範囲を広げましたが、これ以上範囲を広げると受信側の世界儀の負担が大きくなり壊れる可能性があったので、仕方なく20倍で留めました」
「世界儀が壊れる?」
「なので、現状では他の測量士の端末を弄る訳にも行きませんし、これ以上アキト様の測量効率を上げる事も出来ず、ただいたずらにアキト様の時間を浪費することとなります」
「「「・・・・・・」」」
「なので提案です。それはここから約8万km先にいるエンシェントドラゴンの魔石を新しい世界儀に改造することです。そうすればアキト様の端末の測量範囲を更に20倍つまり既存の400倍に拡大することが出来、かつ他の測量士の端末を同じ程度の性能まで引き上げることが出来ます」
「それは本当ですか!?」
「だから人の物差しで神を測るなと何度言えば」
「す、すみませんでした」
「エンシェントドラゴンの魔石を確保するのは問題有りませんが、世界儀に改造するのは貴方達では困難でしょう。なのでそれは私達でやります。ですが、エンシェントドラゴンの魔石は一つしかありませんし、システムが別物になるので、国王の世界儀と冒険者ギルドの世界儀、そして商人ギルドの世界儀がリンクも切れてしまいます。更には世界儀のシステムを流用した転移システムも使えなくなりますし、新しい世界儀は真っ黒からの再スタートになります」
「「「・・・・・・」」」
「だから、国王と相談しなさい。今まで通りの測量で良ければ、私達はのんびりとそのまま測量の仕事を続ける。そうすれば貴方達の懐もそんなに傷まないでしょうし、特別今までと変わらない生活が送れる。だけどそのペースだと測量の完成はあと500年以上は掛かるし、恐らくその途中で私達はこの世界を去る」
「新しい世界儀を作るのなら、地図の完成までの時間を大幅に短縮する事ができる。その為に国はそれを全力で応援することが絶対に必要になります。これは私達の道中で何かあった際、国庫を空にしてでも応援するという意味です。リスクとして世界儀を交換する際、現在の世界儀とリンクしているアーカイヴは新しい世界儀とリンクするまで使えなくなること。世界儀が一つしか無くなることや転移システムの再構築、測量の再スタートですね」
「・・そ、そうですか。分かりました」
「ちなみにですが、新しい世界儀を作るのにどの位かかりますか?」
「時間ですか?お金ですか?」
「っ!まっt」
「あ、そうですね。両方です」
「っ!?」
「魔石が確保してあるなら作成時間自体は一週間もあれば作れるでしょう。お金はそうですね、貴方達で判断しなさい」
「!?」
「あの、転移システムは国内の測量が完成すれば、また使えるようになりますか?」
「なりますよ」
「国政の運営や流通の都合上、どうしても世界儀は複数必要になります。そこはどうにかならないでしょうか?」
「エンシェントドラゴン並みの魔石があれば出来ないことも無いですが、それに相当するとなると・・ブラックキラードラゴンとエンペラーストームドラゴンですかね。それぞれかなり離れた場所に存在するので魔石の確保はそれなりに時間がかかりますね」
「・・確保して頂くことは・・」
「それは新しい世界儀を作り、システムを一新することをお願いしていると受け取って良いのですか?」
「っ!いえ、国王と相談しますので、すみませんお時間を頂けますでしょうか」
「ふむ、なら私達の話は以上です。結論が出るまで私達はのんびりと待ちます。いいですね?」
「わ、分かりました」
「では、アキト様帰りましょう」
「う、うん」
その後、リビングにて
「ねぇ、あーちゃん。あんな脅しつけるようなマネをして大丈夫なの?」
「えぇ、大丈夫ですよ。これはアキト様の仕事の効率をあげ、エリミナート様や私達との時間を増やす為にわざとやったことですから」
「え?」
「国からすればですよ?今までもそうだったから、アキト様がいきなり金山を見つけたけど、それはアキト様だからで済ませ、システムがおかしい事に気付こうともしない。まぁ気付いても彼らではどうしようもないんですが」
「・・・・・・」
「アキト様は褒められて嬉しいからと効率の悪い仕事を無理して熟そうとしています」
「え?いや、だって」
「良いんです。アキト様が就職なされて評価される。そしてそれがアキト様の自信とやる気に繋がる。それは私達にとっても喜ばしいことです」
「じゃあ・・」
「ですが、その効率が悪すぎるんです。散々働いた後で、効率を上げたいからシステムを変えますってなったら仕事がやり直しになります。なら、早めにシステムを変えたほうが後々のことを考えると楽です」
「まぁ、それは分かるけど」
「先日は先ず評価を高める事を優先しましたが、本日は元々その事を提案するつもりでした。アキト様が気付いてくれたので楽でしたが。それにあそこまで言えば国は気付くでしょう。私達に付くか付かないかを問われていることに。まぁ、ほぼ間違いなく付くんですけどね」
「うん。あーちゃんの言うことも分かるんだけど、でもそれなら俺達の方も効率をあげる測量のやり方を模索するとか何か方法はなかったのかな?って」
「アキト様、転移するのに何秒かかります?」
「え?あ・・3秒位?」
「そうですね。それはマップ転移でマーカーを見た場合ですね。イメージによる転移が5秒。視点による転移は4秒ですね」
「え?なんでそんなk」
「秘書ですから」
「・・はい」
「視点による転移だと、到達点を見て決めて転移すると言う動作が必要になります。ここまではいいですか?」
「はい。それを瞬間的にやれってこと?」
「それは当然のことです」
「うぅ・・」
「ですが、それを連続で行うといくら神でも疲れますし飽きてきます」
「・・・・・・」
「アキト様がどれだけ早く、ほぼ瞬間的に視点転移を行えたとしても、測量範囲が決まっている以上は最大でも500mの転移を繰り返すことになります。まぁ本日その部分は弄りましたので10kmの転移を繰り返す訳ですね」
「うん」
「じゃあアキト様。その状態で何回、転移を繰り返せばこの世界の地図を埋められると思いますか?」
「え?あ・・」
「まぁ、この世界の表面積は分かりやすく20億km²としましょう。半径5kmの円の面積は計算しやすいように80km²としましょうか。勿論、円で埋めていくので円がぴったりくっつくように綺麗に転移しても必ず隙間は出来ます。さぁ、何回転移すれば埋められますか?」
「え~と・・」
「2500万回以上です」
「・・・・・・」
「ちなみに、1秒に一回転移出来るとしても一日に8万6千4百回が限度です」
「・・・・・・」
「分かりましたか?アキト様。どんなにアキト様の方で効率を上げようとしてもシステムが足を引っ張るのです。それでもアキト様は責任感が強いので、きっと仕事だからと頑張るでしょうね。そしてボロボロになるんでしょうね・・前世のように」
「それは・・」
「ですが、今回の話が通って新しいシステムを作り上げれば、転移回数は6万回ちょっと・・まぁ、隙間も埋めなきゃいけないので、もうちょっと増えますが、現実的な数字になります。しかもそれが出来る端末は増えます。そうなるとどうですか?私達も手伝えば私達だけでも1人1万回ちょっとで済むのです。なので、今回の提案を無理にでも通す必要があるため脅したのです」
「うん、そっか。僕のためなんだね?ありがとう」
「いいですか?アキト様。今、アキト様は一人ではありません。エリミナーデ様を始め、私達がついています。そしてアキト様が仕事の成果を挙げられ、喜んでいるのを私達も同じ様に嬉しく感じています。ですが、無理をして良い訳ではありません。たまには測量の仕事から離れて、エリミナーデ様とデートするとか、家でのんびりまったりするとか。家庭も大事にして下さいね?」
そこでエリが俺の肩に頭を預けながら寄りかかってくる。
「エリ・・」
「アーシェがここまで言うんだから、明日は私とデートしませんか?」
「・・うん、そうだね。どこに行こうか?」
「そのエンシェントドラゴンの首でも獲りに」
「ふぇ?」
「あぁ、良いかもですね。ドラゴン系は魔素たっぷりですからね。かなり肉が美味しいかと。ついでに素材も回収出来たらお金には困らなくなりますね~。中央サークル王国限定ですが」
「いや、エリそれデートじゃなくて狩り。そしてアーシェも乗っからないで」
「アキト様。前世の国では確か偉い人が鷹狩りとか鹿狩りとかってイベントやってましたよね?それと同じです。なので、エリミナーデ様。私達、鹿追いならぬドラゴン追いしますね」
「うん、よろしくね」
「やったにゃあ。皆でお出かけにゃあ、バーベキューにゃあ」
「ガイア、バーベキューセットとその他もろもろキャンプ用品の作成お願いしても?私はちょっと薪を作ってきますので」
「分かったの!」
「あらあら~ガイア、ついでにハープも作って貰えるかしら~」
「勿論なの!」
(めっちゃ皆やる気出してる。既にデートの雰囲気ではないけどまぁ、いいか。)
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