第14話 乙女の秘密?

 次の日の朝。リビングに7人が集まり、本日分の仕事の予定について相談が始まった。


「昨日の金山発見と大海蛇の魔石のお陰でだいぶ儲かったけど、だからっていきなりのんびりモードっては行かないんだよね・・気持ち的に。実働だって買い物含めて8時間ぐらいだったし」


「う~ん、前世でのデスマーチの影響でしょうか?エリミナーデ様も居るのですから少し位のんびりしても良いとは思うんですが」


「まぁまぁ、アーシェ。夫がやる気を見せているんです。私は応援しますよ?ね、貴方♪」


「うん、ありがとうエリ。昨日ギルドマスターも褒めてくれたからさ、俺ちょっと嬉しくて。今日も頑張ろうかなって」


「じゃあ、今日はガイアがお供するのです。張り切って援護しますなの!」


「うん、そうだね。ありがとうガイア」


「ですが、昨日の仕事は確かに測量もしましたし、地図も広がりましたがほぼ線状です。その近辺の範囲を広げる必要があるのではないでしょうか?」


「それもそうだねぇ」


「ふむ。新しい成果を上げて更にお金を稼ぐか、マップを広げることに専念するか?ですが、恐らく金山近辺のマップはすぐに国が動かなくても、いずれ勝手に広げてくれると思うんです。なのでアキト様がマップを広げるとしたら海域位になりますが、金策は何をどうしたいかにも寄りますね」


「昨日、ガイアに一緒に行くって約束しちゃったからね。ガイアが活躍できそうな所ある?」


「やったの!」


「そういうことであれば、ここから北西方向に3万km行くと火山があり、そこに生息するサラマンドールからは高品質な火の魔石が取れます。また火山の麓に生息するギガアルマジロからは中品質の土の魔石が取れますね。先日お話したマグダルへの足がかりを作る意味でも丁度良いのではないでしょうか?」


「じゃあ、そうしようか」


「あぁ、火山に行くならあたいが役に立つはずにゃん」


「フレアも行く?」


「いいかにゃあ?あたいもアキト様のお役に立ちたいにゃあ」


「フレアはいつも美味しい料理作ってくれてるじゃん。すごく助かってるよ」


「にゃはは、そんな事言われると嬉しいにゃあ」


「では、今回は、アキト様、ガイア様、フレア様、私の4名で魔石を確保しつつ測量すると言うことでよろしいですか?」


「はい~行ってらっしゃいませ~」


「行ってらっしゃいませ」


「気をつけてね?貴方」


「うん、ありがとう」


「では、皆さんアキト様にくっついて下さい。北西側は元々少しマップが広がっていますので、マップ転移で1万km程短縮できます」


「はいなの~」


「アキト様、失礼しますにゃあ」


「アキト様、開拓マップの最北西端にマーキングしました。そこまでお願いします」


「うん、分かった。行くよ?」






「で、ここからはどうする?またマッハで飛ぶ?」


「そうですね。現地でモンスターを探すにしてもマップがあるから、そんなに時間は掛からないでしょうし、測量メインで行きましょうか?それならマッハ10で4時間も行って戻ってを繰り返せばそれなりの範囲を測量出来るでしょうし」


「4時間いったりきたりかぁ。仕事だから仕方ないけど、測量範囲が広がればもうちょっと効率良く出来るのにね」


「その通りですね、ちょっと待って下さいね・・ふむふむ」


「ん?あーちゃんどうしたの?」


「測量範囲について調べました。現在、ギルド会員証の測量範囲がギルド会員証を中心とした半径約250mなんです。これも人が作った技術だとしたら大したものなのですが、ちょっと弄れば半径5000mに広げられますね」


「20倍!?」


「えぇ。ですがシステムをいじるのに少しお時間を頂きたいです」


「どの位?」


「そうですね~30分から1時間ってところでしょうか?」


「効率20倍になるならそのくらい待つよ。でもどうする?一回家に戻る?」


「私が動けなくなるだけなのでアキト様が私をおんぶか抱っこしてくれるなら後は自由にしていいですよ」


「ふむ・・」


「それならガイア、アキト様とデートしたいの」


「デート?」


「そうなの」


「にゃはは、アキト様。ガイアはアキト様が大好きだからにゃあ。せっかくだから一緒にそのへん散歩するだけでもしてあげて欲しいにゃあ」


「ふむ。じゃあ、アーシェおんぶ」


「はい!じゃあ後はお任せしますね」


「うん、お願いね」


 アキトに飛びつくようにおぶさったアーシェだが、すぐに目を閉じ何か集中し始める。振り回して邪魔しないように注意しよう。


「じゃあ悪いんだけど、何かあればガイア守ってくれる?」


「勿論なの」


「フレアもモンスターが来たらよろしくね」


「任せるにゃあ」


「ゆっくり行こうか、ガイア、フレア」


「はいなの」


「にゃあ」


 未踏破区域の側だけあって、鬱蒼とした森が見え、倒木も多く足場は悪い。だが、ガイアが何かしているのだろう、土が盛り上がったかと思うと倒木を巻き込んでそのまま平坦な道が出来上がる。ガイアはニコニコしながら、すごい御機嫌な様子で俺の隣を歩いている。


「ガイアが道を均してくれてるのかな?ありがとう、助かるよ」


「この位ならお安い御用なの」


 少し進むとマップにはそれなりに小さい赤い点が映り込み始めた。周囲を見ると木の上や物陰からこっちの様子を伺っている豹のようなモンスターが何匹も見える。でもフレアが何かしているのだろう。豹のモンスターは次々とその場で倒れ、その姿を消していく。


「ねぇ、フレアが何かしてるんでしょ?どうやってるの?」


「豹のモンスターは毛皮が取れるにゃあ。だから心臓だけ燃やして回収してるにゃあ」


「あぁ、成る程ね。流石だねフレア」


「にゃはは、ありがとうにゃあって、ちょっとごめんにゃあ」


 そう言うとフレアがどこかに消えしばらく経つと戻ってきた。


「ん?どうしたのフレア」


「土の中にきのこが生えてたのを見つけたにゃあ。これは香りが凄く良くて料理がもっと美味しくなるやつにゃあ」


「へ~、トリュフみたいなものかな?よくそんなの見つけられたね?」


「そう言えばアキト様のマップは敵・味方・それ以外でしか区別していなかったと思うにゃあ」


「うん。あ、そうか!」


「希少、高級な食材や資材なんかも条件で表示させると便利にゃあ」


「成る程ね。でも勝手にいじらないって約束したから、あーちゃんが戻ってきたらお願いしてみるね」


「それが良いの。皆で美味しいもの食べて、皆で笑顔になると幸せになれるの」


「うん、そうだよねガイア」


 それからもガイアが行く先の道を均し、フレアがモンスターの処分と食材の確保を行っていると、背中のアーシェがもぞもぞと動き出した。


「お待たせしました。測量範囲の拡大終わりました」


「あ、おかえりあ~ちゃん。ありがとう、お疲れ様ね」


「いえいえ。それでですね、アキト様。今回、実は応急的な処置でして。本当はもっと測量範囲を広げられるのですが、これ以上は受信側の世界儀がその情報量に耐えられないのです」


「ふむふむ」


「まぁ、のんびり仕事を熟すのならそれでも良いんですが、この世界は広いですからね。根本的なシステム開発を先にしたほうが良いでしょうね」


「システムをいじるとなるとギルドマスターや国王に相談してからのほうが良いかな?」


「それもありますが、システムを作るのに必要な素材が割と遠くにありまして。自宅から8万km程の位置にいるエンシェントドラゴンの魔石が必要なのです」


「ふむ~8万kmって距離もすごいけど、エンシェントドラゴンってかなり強そうだよね?」


「まぁ、アキト様が来るまでは世界最強だった程度の強さですけどね。従属神様達の依り代に準ずる位の力を持っているので油断は出来ませんが」


「そうなんだ?それは注意しないとね」


「まぁ、エリミナーデ様においで頂ければ、そんなの関係ないんですけどね」


「?エリってそんなに強いの?」


「当たり前じゃないですか!勝利の女神ですよ?特別な依り代を創らないと降ろせないって言ったでしょうよ」


「うぅ、ちなみにエリのステータスって出せる?」


「はい、どうぞ」



名前 エリミナーデ

性別 ♀

状態 安定

体力 10000000000

攻撃力 10000000000

防御力 10000000000

知力 10000000000

素早さ 10000000000

運 9999


情報 

第668798宇宙での修行を終え主神の資格を得た勝利の女神。愛し子のアキトが修業を終え主神の資格を得たら、夫婦神として第9584765宇宙の前36方位を管理する主神となる予定。勝利の女神であることから戦闘に置いては無類の強さを持ち、好戦的である。その他情報は事情により割愛。



「一、十、百・・100億!?100億ってぇ!」


「良いですか?アキト様。エリミナーデ様は勝利の女神様です。そんな神威を持つエリミナーデ様は望む、望まないに関わらず常に争いごとの中心にいなければなりませんでした。そのことをアキト様はどう思います?」


「・・可哀想だなって」


「ふむ。エリミナーデ様は勝利の女神です。例え、どんなに苦しい状況だろうと逆境だろうと勝利に導かなくてはなりません。ならエリミナーデ様はどうするか?アキト様は分かりますか?」


「エリ自身が強くなるしかない?」


「その通りです。アキト様はそんなエリミナーデ様が怖くなりましたか?」


「ううん。俺の大切な妻だもん。ステータスの高さにはちょっとびっくりしたけど怖くなんかならないよ」


「それなら良いんです。エリミナーデ様の神格が高いために一番最低条件の依り代ですらそのステータスになってしまっているのです。その事はご理解下さいね」


「一番最低条件って、そうなんだ。ところでその他情報は事情により割愛ってどういうこと?」


「アキト様、それ聞いちゃうの?」


「え?」


「もうアキト様はだめだめだにゃあ~」


「えっ!えっ?」


「はぁ、もう。そんなの乙女の秘密に決まってるじゃないですか!察して下さいよ!」


「あっ、あの、すみません。って情報を秘密にすることが出来るの!?」


「乙女限定ですけどね」


「・・男は駄目ってこと?」


「そうです」


「それってひどくないっ!?」


「いえ?何がひどいのか理解出来ないんですが?」


「だって俺の性へ・・じゃない秘密はばらされているのに、どうして?」


「はぁぁぁ、もうこれだからアキト様は・・」


「え?」


「あのですね、アキト様。まだアキト様は修行の最中だから仕方ありませんが、常識としてよく覚えておいて下さいね?」


「な、何を?」


「乙女の秘密って言ったら宇宙最大最強の秘密なんです。宇宙全てを司る最高神ですら暴けない秘密なんです。分かりました?」


「え?そうなの?」


「そうなの。だからアキト様はもうその事に触れない方が良いの」


「そうだにゃあ。乙女の秘密を知ろうとするとかなり不味いことが起きるにゃあ」


「そうなんだ?何かすごい理不尽さを感じるけど、分かったよ」


「ならいいです。じゃあ火山に向かいましょうか。ガイア様、フレア様」


「はいなの」


「分かったにゃあ」


 アーシェの言葉を受け、ガイアが俺の左側から、フレアが俺の右側から抱きついてきていた。もう高速飛行の際のお約束なんだろうか?


「じゃあ、ほんのちょっとだけ右方向です。アキト様、レッツゴー!」



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実はエリミナーデの依り代はアキトと4人の属性神がどんなに頑張っても作成することが出来ません。じゃあどうして創り上げられたのかというと天界からエリミナーデ本人が手を貸していたからです。そのため、アーシェは依り代がある程度出来上がるまで天界のエリミナーデの方に協力していました。ちなみにアキトの好みを依り代に反映させたため、わずかながらにバストアップしてます。わずかですよ?







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