第12話 転移ってやっぱり便利だよね
アキトがこの世界の測量士となった次の日。リビングではアキトがソファに寝転がり、ギルド会員証を掲げ、満足そうに眺めていた。
「アキト様、嬉しそうですねぇ」
「そう?まだ何にも仕事はしてないんだけどさ、この世界の一員として認められたんだなって。俺は異物じゃなくて皆と一緒に生きていってもいいんだという証なんだなって思うとね。やっぱりちょっと嬉しいよね」
「まぁ。確かにその証があれば同士に会いに行けますからね」
「今、いい話してたよねぇ!?」
「でも、大事ですよ?同好の士と言うのは。新しい発見に気付かせてくれるかもしれません」
「いや、無理やり会話を掘り下げないでよ」
「アキト様が知らない刺激的な下着とか?色々、元気になっちゃうこの世界ならではの食事とか?飲料とか?も彼は知っているかも知れませんねぇ」
「し、刺激的な?」
「えぇ。エリミナーデ様はアキト様が喜ぶのなら嬉々として着て下さると思いますよ?もちろん私も秘書なので?主人が着ろと言うのであれば、やぶさかでは有りませんが」
「・・・・・・」
「ねぇ貴方?私にどんな下着をつけて欲しいの?」
「・・いや、あの、その」
「アキト様照れながらニヤニヤしてるの。ガイア知ってるよ?むっつりって奴なの」
「これガイア。そう思っても言わないのが淑女ですよ」
「にゃはは。アキト様はスケベだにゃあ~。子供がいっぱい出来そうだにゃあ」
「あらあら~、そうなったらもっと家を大きくせねばなりませんねぇ~」
「貴方?私はまだ自分の子供というものが良く分かりませんが、貴方が欲しがるのなら幾らでも生みますわ」
「皆ごめん。もう許して・・」
「と、まぁ前置きはこのくらいにして」
「あーちゃんが変な方向に持っていったんでしょ!」
「アキト様が仕事を始めるに当たり、いろいろ考慮するとやはり転移は習得しておくべきだとの認識に至りました。なので、さぁ特訓です」
「・・・・・・」
「どうしました?」
「いや、それはそうなんだけど。何かもう疲れちゃったなって」
「一家の大黒柱がそれではいけませんねぇ。あ!もしかしてマッサージを所望ですか?仕方ありませんねぇ。どんなマッサージが希望ですか?どんなマッサージでもどんとこいですよ?」
「・・特訓してくるね」
「はい。お付き合い致します」
リビングを出るアキトとアーシェを見送る5人の女神達。
「アーシェは構い過ぎな気もするけど、丁度良い発散相手になってるにゃあ」
「そうですね。言いたい事が言えるというのは大事なことですから」
「そうなの。どんどん吐き出すといいの。今まで溜め込んでた分、全部」
「そうですねぇ~私もあんな風に会話出来たらアキト様も、もっと早く楽になれるんでしょうが~」
「あの人の魂は少し綺麗になってきてたし、魂のしぼみも少しだけど減ってきている。アーシェがあんな態度なのも計算付くなんだろうし、このままいけばきっと・・」
「でも、あの時きっとアキト様はエリミナーデ様の下着姿を想像してたにゃん。エリミナーデ様は愛されてるにゃん」
「ふふっ、そんな下着位で・・可愛いわね」
アキトはアーシェと共に山脈の上に浮いていた。
「良いですか?アキト様。この風景をよ~く覚えて下さい。ここが貴方の帰って来る場所です。どこに行っても何をしてても貴方の帰って来る場所はここですよ」
「うん」
「マップにも「自宅」でマーキングすることもお忘れなく」
「え?マップ経由でも転移が使えるってこと?」
「当たり前じゃないですか」
「・・マップ経由で帰ってこれるんなら風景を覚える必要あった?」
「いざって時に大事なのはイメージによる転移です。いちいちマップ確認してからじゃ間に合わない場合もありますからね」
「確かにそうかもだけど。何か腑に落ちない」
「それはともかく、イメージして下さい。自分が一瞬で遠くに行くイメージです」
「うん、やってみるね・・むむむ」
次の瞬間、アキトは転移を成功していた。しかしその距離は1m程だった。
「っ!?出来た?」
「おぉ、成功ですね。あとは距離を伸ばしていけば大丈夫です!」
「でも、イメージでやってると思い入れのある場所がまだここしか無いから難しいな」
「じゃあ、出かける時はマップ転移を試してみましょう」
「ふむ」
「じゃあ、私を抱きしめて下さい」
「何でそんな唐突に!?こんな所で!?」
「一人でマップ転移を試して失敗したらどうするんです?」
「・・・・・・」
「いや、分かりますよ?アキト様の気持ちは。でも今は特訓中ですからね?我慢して下さいね?」
「ぐぅ・・」
「はい」
アーシェが両腕を広げて、しかも頬を染めて上目遣いで俺が抱きしめるのを待っている。そんなんされたら俺はもう・・と、アキトはドキドキしながらもアーシェを抱きしめる。
「アキト様。嬉しいって言えば嬉しいんですが、これでは動きづらいです」
「あっ、ごめん」
「いいですか?転移後に何があるか分かりませんから、すぐに対応できる姿勢で飛んだ方が良いかと思いますよ」
「・・だって、あーちゃんが両手広げて抱っこしてみたいなポーズ取るから」
「あらぁ?私の所為ですかぁ?」
「・・・・・・」
「アキト様が私の事を大好きなのは私だって知ってますよぉ。私だってアキト様のことが大好きですからね」
「え?」
「だから私と思いっきりイチャイチャしたかったら、まずはエリミナーデ様にハーレム宣言するところから始めないと」
「いや、流石にそれは・・」
「隠れてイチャイチャしたらそれはただの浮気ですよね?」
「・・そうなんだけど、でもなぁ」
「うぅ、生まれたての私をあんなにめちゃくちゃにしておいて・・」
「いや、それは本当ごめんなさい」
「ちなみにその事はエリミナーデ様どころか皆さん知ってます」
「はぁっ!?」
「あれほどエリミナーデ様がアキト様を心配しているって言ったじゃないですか・・いいですか?アキト様にアカシック・レコードの事を教えてあげたのは誰ですか?」
「あっ!」
「そうです。『神格』を持つものなら誰でもアカシック・レコードにアクセス出来るんです。皆さん全員がアキト様の過去から今、この時まで全て把握されてますよ?」
「えええええ!?」
アキトはアーシェの言葉を聞いて空中で見事なorzを決めていた。
「そんなぁ、俺のプライバシーは無いってこと?」
「ありませんねぇ」
「じゃあ、俺の性癖もバレてる?」
「だから言ったじゃないですか。その程度の性癖ばれたって恥ずかしくないって」
「俺が恥ずかしいんだよぉおおおおお!」
アキトは空中に浮かびながらも胎児の様に丸くなり両手で顔を隠す。
「あぁ駄目だ、もう恥ずかしくてどうしようもない。もうこのまま消えたい・・」
「仕方ないですねぇ」
そう言いながらアーシェはアキトの頭側に立ち、アキトの頭を撫ではじめる。
「良いですか?アキト様。アキト様のプライバシーが無いと言うことは、逆に皆さんもプライバシーが無いということです。ならどうするか?ですよ」
「・・どうするの?」
「真摯に。ひたすらまっすぐに。相手を思って、相手を受け止めて皆と付き合えばよろしいのです」
「・・・・・・」
「アカシック・レコードには様々な情報がありますが、ただ行動の記録があるだけです。今、アキト様が何を考えているか?それはアキト様以外には分かりません」
「でも、行動の記録が残るのなら?それなら、誰にもとやかく言わせない位に、ただひたすら真っ直ぐに自分の道を歩いていけば良いのですよ。そしてアキト様はそれが出来ます」
「・・うん、ありがとう」
「ちなみにですよ?アキト様はハーレムを作っている小説を読んでどう思いました?」
「・・羨ましいなって」
「でしょう?羨ましくてふざけるなよっては思うでしょうが、世界の倫理から外れてるから駄目だ。とかは考えなかったですよね?」
「・・うん」
「男性とはそういうものなのです。アキト様の記録はこれからもアカシック・レコードに残ります。なら、こそこそ浮気してたって言うより堂々とハーレムを作った方が良いと思いませんか?」
「そうかな?・・そうかも」
「ならば、特訓が終わったらエリミナーデ様に告白しにいきましょうね。どうせバレてるんですから」
「うぅ・・」
「はいはい、特訓の続きいきますよ!立って立って」
「はい・・」
「じゃあ、私と手を繋いで・・そう。そうしたらマップを見て下さい。昨日行った王都の入口にマーキングを置きました。そこにめがけて私と二人で一緒に一瞬で飛ぶイメージを持って力を振るって下さい」
「うん、行くね」
「どうぞ」
次の瞬間、アキトとアーシェは王都前に転移していた。
「出来ましたね~」
「おぉ~何かすごい。本当にこんな事が出来るなんて」
「あとは練習を重ねて瞬間的に出来るようになるだけですね。では、せっかくですから何か買い物していきますか?」
「え?食材なら昨日いっぱい買ったじゃない?服もいっぱい買ったよね?」
「違いますよ。帰ったら告白するんでしょう?」
「う、うん」
「だったら、エリミナーデ様に似合うアクセサリーなどを買ってあげて、御機嫌取ったほうがいいんじゃないですかねぇ?」
「・・なるほど」
「問題は何を贈るかです。ただでさえエリミナーデ様はお美しいので、それに似合うアクセサリーとなると、なかなか難しいですよ?」
「そうだよねぇ、う~ん・・でも俺さ、実は女性にそういった贈り物なんかしたことなくてさ。正直何を選べば良いのか、全然分かんないんだよね」
「そうですねぇ、好みの問題もあるでしょうが、やはり大事なのは気持ちだと思いますよ?」
「そう?」
「いきなり100点狙わなくてもいいんです。今後、ずっと添い遂げていくならプレゼントを送る機会なんて幾らでもあるでしょうから。まずはアキト様がこれならエリミナーデ様に似合うかなって思ったものを贈って反応を見れば良いんです。それがもし30点だったら、次はもっと点数が高くなるよう頑張れば良いんですから」
「そうだね。うん、そうしよう」
「じゃあアクセサリーショップやジュエリーショップを梯子しましょう。ご案内しますね」
「うん、よろしくね」
そして夜。リビングで、あーちゃんが従属神4人を連れ出しプレイルームに向かう。リビングにはアキトとエリミナーデの二人っきりとなり、アキトは緊張した面持ちでエリミナーデに話しかける。
「あ、あのねエリ。話があるんだけど・・」
「なぁに?貴方♪」
「あのね、その、えっとね」
「うん」
「俺ね、エリに会えてすごく嬉しかったんだ。エリは俺の事を想ってくれるし、優しいし、綺麗だし、本当にエリが俺の奥さんになってくれて嬉しいんだ」
「うん♪」
「でもね俺、エリの他にも好きな人が出来ちゃって。でも、エリとも別れたくないし、その人を誰かに取られるのも嫌なんだ。すごい自分勝手で我儘な事言ってる自覚はあるんだけど、皆にずっと俺と一緒に居て欲しくて・・」
「良いわよ」
「え?」
「好きな子ってアーシェでしょ?」
「え?あ、うん」
「それに色々アーシェから聞いてるんでしょ?」
「うん」
「神様はね、宇宙を管理する仕事があるとは言え、機械ではないの。ちゃんと心があって、疲れることだって、嫌なことだってある。だからね、我が儘くらい言ってもいいのよ」
「でも、エリに申し訳ないなって」
「そんな事無いわよ。貴方は今はまだ神としてまだまだ半人前だけど、いずれ主神となり一部とは言え宇宙を管理する存在になるのよ?妻が私一人じゃなくたって全然おかしくないわ。むしろ隠れてあちこちに種をばらまかれる方が嫌。それで大変なことになった宇宙もあるしね」
「・・・・・・」
「だから、貴方が愛するのなら幾ら家族を増やしても構わないわ。それに・・」
「?」
「私の事、愛してるんでしょう?」
「それは勿論!」
「ならそれでいいの。ふふっ」
「あ、そうだ。実はね、今日転移の練習してた時に王都に行ってきて・・これ、受け取って欲しいんだ」
「なぁに?これはネックレス?」
「うん。そんなに高いやつじゃないんだけど、この宝石がエリの瞳の色と同じですごく綺麗だったから・・」
「ふふっ。私の為に?」
「うん。エリの為に」
「・・寝室でつけてくれる?」
「うん」
「上手く行ったみたいですね」
「上手く行くに決まってるにゃん。アーシェは随分回りくどかったにゃあ」
「アキト様にはまだ人間として成熟して頂かないといけませんからね。アキト様がいろんな葛藤を自分なりに理由をつけて飲み込んで、納得して動かなければ意味がありません」
「でも、アーシェのお陰でガイアもおねだり出来るようになったの」
「まぁ、それはあたいも嬉しいにゃん」
「あらあら、まぁまぁ~アキト様からお情けが頂けるようになったんですか~。喜ばしいことですわね~」
「そうですね。御主人様からお情けを頂けるとは、今後もしっかりとお仕えせねばなりません」
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基本的に神様は性的にオープンです。4人の従属神がアキトのハーレム入りを望むのは、上位の神からの保護を望むからです。火・水・風・土などの自然属性の神は宇宙中にかなりの数がいるので、下手をすると使い捨てられます。なので、それが分かっている従属神は強い上位の神に取り入ろうとします。エリミナーデは勝利の女神としてかなり戦闘力が高く、御機嫌を取れれば安心なのですが女性なので、愛し子であるアキトに取り入ろうとするのです。勿論、自然属性の主神もいます。
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