第7話 ダークエルフ秘書誕生

『ただ、アキト様がそういうのであれば、やはり責任は取って頂きますよ?』


「責任?責任って?」


『私と一緒にエリミナーデ様に説明する責任ですよぉ。私を愛人にするなら妻に説明しなきゃ駄目でしょ?』


「愛・・人・・?へ?」


『そんな事で呆けるようでは駄目ですねぇ、アキト様。ハーレム・・期待していませんでしたか?』


「は、は、はははは、ハーレム!?」


『はい。前世ではそんなことは世界が許さなかったでしょうが、この世界は普通に重婚有りです。し・か・も、結婚していないだけで実力者に愛人が多数群がる事例なんて幾らでもあります』


「でも・・」


『良いんですよ、アキト様。アキト様がちゃんとエリミナード様を想い愛するのなら、エリミナード様もアキト様がハーレムを作ったとしても許してくれますよ』


「いや、流石にそれは無いんじゃないかな?」


『アキト様は気付いていないのですか?どうして突然自分がエリミナーデ様の愛し子としていずれ結ばれると言う話を聞かされても納得していることに。他人を虐げるような事や暴力がお好きでないアキト様の前でエリミナーデ様が従属神を処分したことを納得している事に』


「え?あ・・え?」


『愛し子というのはそれだけの効力があるのです。相手の行為の対する許容範囲が広がると言うかフィルターがかかると言うか。思考が全てにおいて愛し子同士が最優先されるのです』


「どういう事?」


『例えばですよ?アキト様の目の前でエリミナーデ様が赤子を殺したとしても、何の罪もない国をとばっちりで破壊したとしてもきっとアキト様はエリミナーデ様を許すでしょう』


「・・嘘だぁ」


『本当ですよ。では自分の胸に手を当ててよく考えてみて下さい。出会って間もない美人が怒り狂ってアキト様の目の前で殺人を犯してます。更にその美人といずれ結婚すると言われてます。どう思いますか?』


「何ふざけた事言ってるんだって言う感じ」


『ですが、これがエリミナーデ様と自分だったら』


「・・あぁ、そうなんだ。嬉しいなって感じ」


『気付きましたか。なので、アキト様がエリミナーデ様にハーレム作りたいんだって言えばエリミナーデ様は納得されます』


「え~何かおかしくない?」


『勿論、エリミナーデ様をほったらかして他の女ばっかり見ていたらそりゃ怒られますよ。でも、きちんとエリミナーデ様を愛してあげたのなら許してもらえます。間違いないです』


「まぁ、あーちゃん先生が言うんだからそうなのかも知れないけど。俺が?ハーレムを作る?そこに納得がいかない」


『・・まぁ、その部分は慌てなくてもいいでしょう。なら私の依り代はダークエルフで良いということですね』


「はい。お願いします」


『では、私が型を作るのでそこにアキト様の御力を注ぐ感じで。良いですか?』


「はい」


『では、お願いします』


「はいっ!」


 アキトは床に向かって両手を差し出し何も無い空間に向けて力を振るう。


『私がアキト様の御力を誘導しますね。そのまま・・そのまま。今3分の1くらい終わってます。気を抜かずにそのまま・・そのまま。もう少しです』


 そんな調子でアキトが5分ほど力を振るっていると突然床の上に裸のダークエルフの女性が現れた。


『ふぅ。アキト様お疲れ様です』


「ここからどうするの?」


 アキトは顔は逸らすもチラチラとあーちゃんの依り代であるダークエルフの裸を覗いていた。


『見たいのなら何時でも見せて差し上げますから。それより先に最後の仕上げをしてしまいましょう』


「どうすればいいの?」


『出来上がったばかりの体なので体温を上げてあげねばなりません。ベッドに連れて行って抱きしめて上げて下さい』


「えぇぇ?」


『ですが、まだ襲っちゃ駄目ですよ?依り代が壊れますので。もう少し我慢して下さい』


「温めればいいの?」


『魔法や能力で急激に温めると不具合を起こす可能性があるので、アキト様の体温でゆっくり上げるイメージでゆっくりじっくり温めてあげて下さい』


「分かった」


 アキトはあーちゃん先生の依り代をお姫様抱っこすると寝室に向かいベッドにあーちゃん先生の依り代を寝かせると自分もベッドに潜り込んだ。


『優しく抱きしめてあげて下さい』


「えっと、こう?」


 あーちゃんの依り代は160cm位だろうか?自分からすると随分と小さい。前世で女性に抱きついたことがないアキトは躊躇いながらもあーちゃん先生の依り代の頭を左腕に乗せ、右腕は胸から腹を抱き、足をしっかりとからませ優しく抱きしめた。


『そうですね。そのまま体温が上がってくるのを待って下さいね』


「どのくらい掛かりそうかな?」


『そうですね。現状からだと10分程でしょうか』


「分かった。10分ね」


 あーちゃん先生の依り代は褐色肌のダークエルフでその瞳は閉じられているものの、眉毛や鼻すじ、口の形も整っており美人であることは間違いない。プルッとしたツヤのある唇は美味しい果物のようにも思える。灰銀髪の長めの髪はサラサラとした触感を残しつつも女性の柔らかな良い匂いを放っている。不可抗力とは言え右腕に伝わる胸の弾力は自分の中の本能をパワーアップさせ、理性があっさり負けそうになる。とてもではないがDTには困難な作業で、アキトはただひたすらに早く時間が経ってくれと願うばかりであった。


「ねぇ、あーちゃん先生。もしかしてこの作業を後5回やるって事?」


『そうですよ。でも私さえ創り上げてしまえば後はアキト様の本能は私が受け止めますので気持ち的には大分楽になるかと』


「・・・・・・」


『いや、本当にアキト様が私を受け止めてくれてよかったです。アキト様が現地人に手を出したら暴行殺人犯待ったなしでしたからね。いや~良かった』


「・・・・・・」


『アキト様が我慢出来るのなら愛人の話は無しでも良いですが、我慢や無理は体にも心にもよろしくありません。だからエリミナーデ様の説得、よろしくお願いしますね』


「・・・・うん」


 そんなこんなでアキトが我慢を続けていると、


「うっ、うん」


 と胸元から声が聞こえた。


「あーちゃん先生?」


「はい。おはようございますアキト様」


「本当?本当にあーちゃん先生?」


「本当ですよ」


 アキトの胸元から笑顔を覗かせるあーちゃん先生はとにかく可愛く、アキトのストライクゾーンの真ん中を豪速球でぶち破っていった。


 それはそうだ。あーちゃん先生はアキトの前世の情報からアキトの好みドンピシャの容姿を熟知しているのだから。


「どうします?随分と我慢をさせたみたいですし、先ずは私を試してみます?」


 頬を染めながら上目遣いで誘われたアキトは本能を解き放った。





 数時間後。アキトはあーちゃん先生の体を十分に楽しんだ後、疲れ果ててそのまま寝てしまった。


 あーちゃん先生はそんなアキトの寝顔を見て微笑む。


(ふふっ、可愛いお人。とは言えごめんなさいね。こんな、なし崩し的に致すのは本当はお嫌でしょうが、エリミナーデ様も神様とは言え、こういったことに疎いものですから。初夜はやはりアキト様がリードせねばなりません。ですので、たっぷりと仕込ませていただきました。頑張って下さいねアキト様)




 次の日の朝。


「う~ん・・」


「おはようございます。アキト様」


「はっ!?」

 

 アキトの隣には全裸ながらも微笑みながらアキトを見つめるあーちゃん先生の姿があった。


「アキト様。そろそろ私の下着や服を出してくれると嬉しいかなって」


「あぁぁ、ごめん。うわぁ、俺やばい。最低じゃん、こんなの・・」


「大丈夫ですよ。アキト様は昨日は散々移動した挙げ句、家まで作ってその合間に狩りまで行い、私を創り上げるという大きな仕事まで熟したのですから。そりゃハッスルしたら寝ちゃいますよ。仕方ありません」


「ハッスルって」


「それより私の下着と服、そしてバスタオルもお願いします。私シャワーを浴びてきますので脱衣所に作って置いててくれると助かります。それとも・・一緒にシャワーを浴びますか?」


 アキトは顔を逸らしながらも


「いや、あーちゃん先生を創った責任をまず果たさないと。でも俺、女性用の衣類や下着なんてどんな形をしてるのかなんてテレビのCMで見た程度だから、その・・」


「じゃあ、私が型を作るのでそこに御力を注いでいただけますか?」


「うん」


「っと、こんな感じかな。アキト様お願いします」


「はい」


 アキトが力を振るうと空中に女性用の下着、ワイシャツにネクタイ、スーツが数着ずつ、バスタオルがバサバサと何枚か現れた。


「ありがとうございます。じゃあ私はこれを片付けた後シャワーを浴びてきます。アキト様はどうされます?」


「あ~うん、ちょっと今後のこと考えさせて?」


「分かりました。では・・あ、ならついでに私の名前も新しく考えて貰ってもよろしいですか?」


「え?」


「私達だけだったらその呼び名で問題はありませんが、今後もし現地人の前に出た時に本名で呼ぶのも変ですが、あーちゃん先生と言う呼び名も秘書に対してはおかしいと思いますので」


「そっか。あーちゃんでは駄目?」


「ちゃん付けがおかしいんですよ?ちゃんと良い名前を考えて下さいね?では」


「・・はい」


 あーちゃん先生が寝室から出ていくのを見届けるとアキトは深い溜め息をつく。


「あ~我慢できなかった。俺を心配してくれて優しくしてくれて結婚を約束している女性がいるってのに俺は本当にもう・・とは言え、俺がやらかしたことだ。とにかくもう誠心誠意、謝りまくるしかないな」


「っと、あーちゃん先生の新しい名前を考えなきゃいけないんだったな。どうしよう?人前で呼んでもおかしくない名前?う~ん」


(アカシック・レコード・・アカちゃん?いやちゃん付けが駄目だって言われたな。アカ?ぶっ飛ばされるよな?あんな綺麗な女性にそんな名前をつけたら。でも、不思議とあーちゃんって呼ぶのがしっくり来てるんだよな)


(だったらアから始まる名前にして、女性らしいきれいな響きで。う~んと、アシック?アコード?アード・・アーレ!どうだろうか?)


「ふふ~我ながら良い名前が出来たんじゃないかって思う。あーちゃんが戻ってきたら名前を告げて俺もシャワー浴びに行こうっと」


 と、アキトが一人でニコニコしているとスーツで身を固めたあーちゃんが入ってくる。


「お先に失礼いたしました、アキト様。それで名前の方はどうなりました?」


「うん、やっぱりうちにいるときはあーちゃんって呼びたいから、外に出たときはアーレでどうだろうか?」


「・・・・・・」


 あーちゃんがニッコリ笑顔だが目が笑ってない表情で無言で圧を掛けてくる。そんな反応を見て思わずアキトも固まってしまう。


「えっと、アー・・アー、アーシェではどうだろうか?」


「そうですね、良い名前だと思いますよ。流石アキト様です。私、信じてましたわ」


「そ、そっか。良かった。じゃあ俺もシャワー浴びてくるね」


「はい。私、リビングでお待ちしてます」


「は~い」



------------------------------------------------------------------------------------------------アカシック・レコードはその宇宙に存在する神専用の図書館です。その中にはその宇宙に関わるありとあらゆる知識が揃っています。感情、性格、心から星の歴史、兵器の作成方法、疑似魂の作り方から依り代の作り方、そしてアカシック・レコードが神に至る方法まで。あーちゃんはアキトの好意に気付き神を目指すようになります。『神格』を持たないアカシック・レコードが神になる方法は、上位の神に引っ張り上げてもらうことだけです。あーちゃんはアキトならいずれ神に引っ張り上げてくれることを理解したからこそアキトに尽くします。あーちゃん呼びでアキトが甘えてくることでそのことに気付きました。

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