5 グッチーに三度救われて


 家に帰るとボーとしてテレビを見て過ごし、楽しみにしていた箱根駅伝を鑑賞したが、母校が期待通りの活躍ができず、実力出し切れずに終わったため若干へこんでしまった。

 実家にもどり、一人寂しく過ごした六歳下の弟が、東京へ帰る日がきた。それまで詳しく言う暇がなかったこともあり、十一月から続いた入退院を繰り返した、詳しい話をしながら駅で分かられた。弟はすごく心配してくれて、涙目になりながら「死ぬなよ兄貴、死ぬなよ、死ぬなよ」と三度ほどいって新幹線に乗った。

一月八日抜糸の日を迎えた外来へいくと、まずはC Tを撮って、マエストロ梅沢先生ではなく、初老の田舎の駐在さんのような脳外科の先生に診せた。抜糸をしてくれた。そして4月までの通院の予定や、暮らしの注意事項を話してくれた。今日が終わると次は4月だ。中村さんは間が長くて少し心配になった。

家に戻ると、薬の数が増え、どの病院からもらったらいいかなど、いくつか聞きそびれたことがあることに気づいた。中村さんはとりあえずグッチー先生の所へ、2・3日中に行くことにした。

 グッチー先生の診察室に行くと、中村さんはまずお礼をした。

「グッチー先生、先生は命の恩人です。この2度ほど命の危険にさらされましたが先生の診断で回避することができました。本当にありがとうございます」

 とお礼を言いながら、今の心配事を愚痴ると、四月までそんなに長くて心配ならば、二月の中頃にここに診察に来てM R Iでも取ったら。と提案してくれた。注意事項を再度聞きながら反芻した。特にも再発の自覚症状は、まずは頭痛だろうと言うことを強くインプットした。

中村さんはよく眠るようになった。硬膜下血腫の病気をやったからだろうか。はたと疑問を感じながらも、今日も夜の八時半となったら、床に入り、はやい眠りについた、脳が疲れているような気がする。

 最近よく眠れるが、頭が重くなり午後になると脳が疲れているように感じる。術後の後遺症なのだろうと思い込んでいた。

 朝、目覚めると脳がすっきりしていて、一日の時間がたって午後になると、脳がボォーとして疲れてきたように感じるようになった。

 抜糸から1週間、読書など以前からの読みかけの文庫本をめくるが、集中して読もうとしても長続きしない現象が現れてきた、また昼や夕方にじっとしていると意識が飛んで深い睡眠に入り込んでしまうようになった。・・これではいけないと思って立ち上がって軽い体操をしたりするが、ちょっとじっとしていると椅子の上でうたた寝が始まってしまう状態である。中村さんは、自分の今の状況を冷静に判断し分析した。集中力の無さや頻繁にやってくる睡魔、ちょっと静かに迫ってきている頭痛、何でもなければそれで良しとして、もし再発していたら処置は早いほうが良いと言うことになる、グッチー先生のところへ明日にでも行ってみよう。

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