022 彷徨②/少女と老薬師
「あん時はたまたまだ。それにあの魔物たちを倒して街を救ったのはオレじゃない。エヴァルトっていう執事の爺さんだ。お礼ならその人に言ってくれ」
くぅ、とレオンの腹が情けない悲鳴を上げた。
「もしかして、お腹空いてるの?」
「うるせえ」
ラウラの気遣いにレオンはぶっきらぼうに答える。
「わたし、まだあなたの名前聞いてないんだけど」
「レオンだ。もういいだろ」
レオンはラウラに背をむけ、早歩きでその場を離れようとした。
そこにラウラが走って追いかけて来る。彼女は逃げようとするレオンの手を掴んで静止させた。
「んだよ、まだなんか用があんのか?」
「わたし、あの日きみに助けられた。だから、お礼をさせてほしいの! エヴァルトさんじゃなくて、きみに!!」
ぐっとラウラはレオンに顔を近付ける。大きな瞳が目の前に迫り、レオンは後退りした。
「……わかったよ、どうすりゃいいんだ」
「近くにわたしの家があるから。とりあえず来て」
ラウラに半ば強引に連れて来られたのは商店街の一角にある二階建ての店であった。
レオンは僅かに鼻をひくつかせる。鼻梁を駆け抜けるのは薬草の匂い。傷に効きそうな少し刺激のあるものから、心まで癒せるほどの安心する匂い。
ラウラは店の扉を開け、奥の方へと声をかける。
「ミアおばあちゃん、ただいま」
奥から初老の女性が出てきた。腰は僅かに曲がり、歩き方も心もとない。木製の杖をついて、ゆっくりと歩いてくる。
年相応のシワを刻んでいるが、目元は優しい印象を受ける。柔らかい笑みを浮かべる様子から若い頃は異性から好かれていたに違いない。
「あらラウラ、おかえりなさい。えっと……お友達かい?」
ミアと呼ばれた女性がラウラを見て、その次に隣に立つレオンに視線を向ける。
「この人がこの前、魔物からわたしを助けてくれた人だよ」
「あらまあ! ラウラを助けてくださり、ありがとうございます! なんとお礼を言ったらいいのやら、えっと」
「レオンだ。別に助けたわけじゃない。たまたま手を引いただけだ」
「でも結果的に助けたことに違いはないわ。それより自己紹介しなくちゃね。私はミア。この店で薬師をしているわ」
[後書き]
更新滞ってしまい、申し訳ございません。
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