017 巡廻⑦/薄黄金色の髪留め
エヴァルトはバンに引き続き事件の犯人の手がかりを探すように依頼し、レオンとエリザベートがいる雑貨屋の元へと戻ってきた。
「お嬢様、何かお気に召すものはございましたか?」
「いいえ、ないわ」
エリザベートは素気なく答えるが、ちらりとその赤い瞳が品物を捉えているのをエヴァルトは見逃さなかった。
エリザベートの視線の先にあったのは薄黄金色の髪留めであった。
「せっかくお店に来たのですから、何か買わなければ失礼です。お嬢様が品物を決めかねているのであれば、僭越ながら私が決めさせて頂きます。これとかお嬢様に似合うと思いますが」
そう言って、エヴァルトは先程エリザベートが見ていた薄黄金色の髪留めを手に取る。
「それ……結構よ。私、お洒落に興味ないし、それを買うならもっと実用的な筆とかインクとか買うわよ」
「何を仰いますか、お嬢様。十代という時間はあっという間に過ぎ去ります。大人になってからあの時もっとお洒落に気を遣っていれば、あの時もっと遊んでいればと後悔してももう遅いのです」
「それを私に言うの?」
「ええ。あえて言わせて下さい。お嬢様は華の十代乙女なのですから、人並みにお洒落に気を遣うべきです」
エヴァルトに説得されエリザベートは髪留めを購入し、その場で身につけた。
艶のある濡れ羽色の髪に、薄黄金色の髪留めはとてもよく映えていた。
「どう、エヴァルト……変じゃない?」
少し照れながらエリザベートは訊いてきた。
エヴァルトはそんなエリザベートの様子に、彼女の今は亡き母親の姿を重ねる。
「はい、とてもお似合いですよ」
どこか懐かしむように、エヴァルトはそう答えた。
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