第2話:君誰?。

健太は、雛子を放ったらかして勝手にベッドの部屋に行ってさっさと

寝てしまった。


リビングに取り残されそうになった雛子は健太の後を追ってベッドの

部屋についていった。


そして次の朝だった。

健太は目覚ましが鳴ってるのになかなか起きられない。

昨夜の酒がまだ残っていた。


「う〜頭がガンガンする・・・二日酔いだよ」


で、起きようとして自分の横で寝てる女を見た。


「・・・・・わっ!!」

「なに?、誰?・・・なにこれ?・・・なんで?」

「なんで俺のベッドで、俺の横で女が寝てるんだよ?」


「まじか〜酒の憩いでネエちゃんをナンパしてお持ち帰りしちゃったんだ」

「で、そのままの流れでやっちゃったのか?俺」

「参ったな〜」

「ちゃんとコンドームつけてやったのかな?」


そしたら横で寝てた女が目を覚ました。


「ふわ〜〜〜〜〜あ〜よく寝た」


「お、起きた?」

「ごめん・・・俺、酔った勢いで君をお持ち帰りしちゃったみたいだね」


「まあ、お持ち帰りされたってことになるんですかね」

「おはようございます、健太さん」


「わ〜ちゃんと自己紹介してるじゃん、俺」

「って言うかさ・・・君誰?」


「誰って?・・・忘れたんですか?」

「あ、私のこと覚えてないんだ・・・酔っ払ってて」


「昨夜、なにかあったのかな、俺と君の間で」


そこで雛子は昨夜あったことを健太に話して聞かせた。


「で、私の名前は三月 雛子みつき ひなこ」です・・・忘れないで

くださいね」


「ちょっと待て・・・なんだって、幽霊・・・君が?」

「で、現世に戻ってきた?」

「で、俺が君を、雛子さん?をアパートに連れて帰ったと?」

「で、なんで俺の横に寝てたの?」


「私だってベッドでゆっくり寝たいですし・・・」


「知り合ったばかりの男と女が同じベッドって・・・よくないだろそれ?」


「なんでですか・・・来いって言ったのは健太さんですよ」


「それにしたって、俺が酔った勢いで、その・・・どくさに紛れて

やっちゃたらどうするつもりだったの?」


「エッチってことですか?」


「まあね」


「あんなに酔ってたらできないでしょ?」


「まあ、たしかにね」

「って言うかさ・・・幽霊なのに触れることができるってやっぱ、おかしく

ない?」


「健太さん、牡丹灯籠って怪談話知ってます?」


「うん、一応知ってるけど・・・四谷怪談とか番町皿屋敷とか」


「あの牡丹灯籠のお話って、若い女の幽霊が男性とエッチするうち幽霊だって

ことがバレて幽霊封じをした男を恨んで殺しちゃったってお話ですよね」


「そうだっけ?」


「それって昔から幽霊でもエッチできるってことでしょ?」

「牡丹灯籠の女の幽霊がエッチできたってことがなによりの証拠です」


「つうか、あの話って作り話だろ?」

「信ぴょう性ないし・・・」

「まあ、エッチできないよりはできたほうがいいけどな」

「それはよく分かったとして・・・俺にも望みはあるってことだよな」


「でさ、雛子ちゃん・・・俺が君のプライバシーに介入すると、いろいろ

支障きたすかもしれないけど・・・なんで亡くなったの?」

「で、なんで幽霊なんかやってるのかな?」


「亡くなった原因は、失恋」

「で、幽霊になって現世に戻って来た理由は私をフッた彼にまだ未練があったから」


「あ〜そうなんだ・・・気の毒にね」

「失恋は可哀想だけど、楽しかった時期もあったんだろ?」


「それだけでも羨ましいよ」

「俺なんか、女性の匂いすらしないよ・・・心が乾き切ってるんだよな」

「で、フッた彼氏のもとに帰るの?雛子ちゃん」


「どうしようか迷ってる最中です」


「そう、決心がつくまで俺んちにいてくれていいけど、俺には関係ないし、

彼のもとに行けば、とも辞めたらとも言えないかな?」


「冷たいんですね、健太さん」


「だって、雛子ちゃんは俺の彼女でもなんでもないんだもん」

「ただ、ゴミ箱で偶然知り合っただけでしょ?」

「しかも幽霊だし・・・そもそも幽霊の彼女なんてありえないし・・・」


「健太さん、いい人だと思ったのに・・・」


「俺は小心者だから、もしシラフだったら君をアパートに連れて帰ったり

してないよ・・・すべては酒の力」


「お酒って人格変えるって言いますからね・・・」


つづく。

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