酔った勢いで幽霊をお持ち帰りしちゃったみたい。

猫野 尻尾

第1話:ゴミ箱の中の女の子。

酒のせいで気が大きくなって、いつのならやらないようなことをやってしまう

って酒の力って怖い。


坂下 健太さかした けんたは友人に誘われて久々に居酒屋で酒を飲んだ。


「完璧で〜嘘つきな〜ヒック・・・君は〜ゲブッ・・・う〜天才的な〜っと・・・」


いい感じで歌なんか歌いながら気持ちよく帰っていた。

で、自分のアパートの手前まで帰って来て地区の共同の大きめのゴミ箱の横まで

来た時、ゴミ箱からゴトゴト音がしたので立ち止まった。


「ふん・・・こんな夜に・・・猫が餌でもあさってるのか?」


そしたら、いきなりゴミ箱の蓋を持ち上げてゴミ箱から誰かが顔を出した。

夢でも幻でもなくましてや猫でもなく・・・人だ・・・。


「あ〜ん・・・なに?・・・女?」

「あ〜はは、飲み過ぎたかな」


ゴミ箱の蓋を開けて顔を出した人物が、少し薄明るく浮かび上がった。


「なに?・・・まさかの幽霊?」

「な訳ないよな・・・俺、霊感ないし・・ああ悪酔いしてるか・・・」

「・・・・・・・」

「ん〜でも、たしかに見えるよな・・・ぼわ〜って」


キミが悪いって言うより、酒が入ってるから気持ちが大きくなってる健太、

好奇心のほうが勝っていた。

だから恐る恐る、その子に近ずいて声をかけてみた。


「あの・・・そこの人・・・人だよね・・・ゴミ箱の中でなにしてるんですか?

こんな夜に・・・」


シラフなら、声なんかかけずにさっさとアパートに帰るところなんだけどね。


健太はその人に顔を近ずけてよく確かめてみた。


「おお〜・・・すげえべっぴん、ってかどっちかって言うと可愛い系?」

「彼女のいない俺のために神様がゴミ箱から女の子を贈ってくれたのかな?」

「じゃ〜連れて帰っていいってことかな?」


健太に図々しく品定めされた女の子がしゃべった。


「あの、ここ、どこでしょう?」


「俺に聞いてる?」


「あなた以外、他に誰もいないようですけど・・・」

「ところであなた誰?」


「あ〜はじめまして」

「俺は坂下 健太さかした けんたって人、日本人、男性、血液型はO型、卯年・・・で、

現在25歳・・・彼女いない歴三年・・・現在彼女募集中」

「そんなとこ・・・」

「で?君こそ、誰?」


「私「雛子ひなこ・・・三月 雛子みつき ひなこ」って言います・・・幽霊です・・・」


「え?ひなこ?・・・お雛様のひな?」


「そうです」


「雛子さんね・・・え?今、幽霊って言った?」

「幽霊って?・・・亡くなった人って魂になってるんだから普通見えないで

しょうが?」


「実体化してるから見えるんです、今なら触ることもできますよ」


「じ、実体化?・・・ああ・・・そうなんだ」

「あのさ、雛子さん、なんでゴミ箱なんかに入ってるの?」


「このあたりが一番霊力が強いからです、磁場がゼロなんです」

「私も自分の家に帰りたかったんですけど、黄泉の国からだとここしか

出られなくて・・・」


「ほう〜・・・そのゴミ箱、心霊スポットなんだ・・・」

「で?その黄泉の国とかってとこから追い出されたの?・・・生きてる時

不倫したとか?」


「そんなんじゃありません、なんでそう言うことになるんですか・・・不倫なんか

したことありません」


「あらら・・・じゃ〜現世に観光とか?」


「・・・・・あのね、私をからかってます?」


「とんでもない」

「つうかさ・・・いつまでそうやってゴミ箱に入ってるつもり?」

「そのうち回収車がやって来てゴミと一緒にぷい〜って持って行かれちゃうよ」

「夜風も冷えることだし、なんならさ、よかったらだけど俺んちへ来てみる?」


「いいんですか?」


「見ず知らずの男のところに来る勇気があるならどうぞ」

「ただし泣いて帰ることになるかもよ」


ゴミ箱から出てきた雛子は、さっさと帰って行く健太の後をヘコヘコついて行った。

って訳で健太は謎の女の子の幽霊をアパートに連れて帰ることになった。

 

「あのさ、その辺に適当に座ってて・・・」


「すいません・・・図々しくお邪魔して」


「いいの、いいの・・・僕の他にいるのはゴキブリくらいだから」

「あのさ・・・悪いんだけど、話は明日聞くからとりあえず寝かせて・・・」


そう言うと健太は、雛子を放ったらかして勝手にベッドの部屋に行って

さっさと寝てしまった。


リビングに取り残されそうになった雛子は健太の後を追ってベッドの

部屋についていった。


つづく。


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