第6話
※今回差別用語を記載いたします。不愉快な思いをされる方は読み飛ばして構いません。
私は「解離性同一性障害」いわゆる「多重人格障害」という障害を持っている。
その為現在の職場に至るまであらゆる仕事を転々とした。
自分から辞めた場合もあるし障害を理由にクビになった場合もある。
私が障害を抱えてすぐの頃、私はとある介護施設で資格を取り介護職員として働くことになった。
その介護施設を運営している理事長は精神疾患を抱える方々を支援する活動をされている方だった。
だからこそ私はそこで介護の資格を取り、介護施設で働く事にしたのだ。
その頃の私は世の中は優しいと思っていた。ましてそのような活動をされている理事長が運営している介護施設なのだから安心だろうと本気で思っていた。
その頃の私は障害について隠していなかった。なので私はその職場で障害の事を話した。その上で
「至らない点もあるかと思いますがよろしくお願いします」と挨拶し、私なりに一生懸命に働いた。他の職員達よりも至らない所は多々あったと思うが、それでも私なりに一生懸命に仕事した。
でも世の中は優しくなかった。職員達からは無視され、ほとんど仕事をさせてもらえなかった。
理由は「精神疾患を患っている人なんかに仕事は任せられない。何をされるか分からないから怖くて一緒に働けない」というものだった。
そして私は職員の間の呼び名は『気狂い』だった。
その呼び名で呼ばれていたのを知ったのはたまたまだ。休憩時間中隣の給湯室で職員達が話しているのを聞いてしまったからだ。
最初、誰の事を言っているのか分からなかった。
『気狂い』って誰の事?
よくよく聞いてみてその『気狂い』とは私の事だった。そこで私は決心した。
ここでは働けない辞めよう。
それから私はすぐに辞表を出し、理事長に説明した。今まで職員達からどんな態度を取られていたのか、『気狂い』と呼ばれていた事を。
泣いて説明した。ここではこんな事は無いだろうと信じていたから、安心したから働いたのに職員達は違ったと。
理事長は誠心誠意謝ってくれた。職員への教育を徹底すると約束してくれた。
でもそれは私が辞めた後だ。
私は初めて障害を抱える人間が世の中ではどういう目で見られるのか、態度を取られるのか知った。
その後その介護施設の職員達がどうなったのか分からない。改善されたのか、そうでないのか…。
ちなみに私の主治医とその理事長は知り合いらしい。そしてその話を主治医にしたら主治医は
「分かった。その理事長と話すから」と答えた。
私は障害を持っている人間が世の中でどういう扱いを受けるのか、どういう目で見られるのか
転々とした職場で学んだ。
世の中には様々な障害を抱えている方々がいる。世の中は事あるごとに[多様性]と謳っている。
私は思う。世の中が謳っているほど世の中は[多様性]どころか障害を持っている人間には《人権》すら無いんだなと…。
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